【価値反転 ⇄】豚王子は覚醒スキルで、呪われた運命を全てひっくり返す! ~謎の美少女とちびモフモフも、一緒に立ち向かいます!~

試運転中

文字の大きさ
18 / 18
Ⅰ 豚王子、覚醒す

1-18.

しおりを挟む
 書類作業をひと段落させ、僕は商業ギルドへと向かった。
 街の中では、衛兵たちがいつになく慌ただしく行き来している。昨日の闘技場の件が関係しているのかもしれない。コレストンも放置してきたし、あれからどうなったか気になるところだ。

 商業ギルドに着くと、いきなり商人たちの怒号が耳に飛び込んできた。誰もが必死の形相で職員に噛みついている。

「コレストンが殺されて、証文も帳簿も消えたんだぞ。取引はどうなる!」
「ですから、それは当事者同士の問題です。商業ギルドは関与できません」
「あんたら以外、他に誰を頼れって言うんだ!」
 
(殺された……やつが?)

 耳を疑った。あの段階では気を失っていただけで、死んだりするはずがない。いったい、何が……

「アルヴァン! ずいぶんなタイミングで来たわね」
「マーラさん。何か大変そうですね」
「大事件が起こっちゃって。あ、ポーション? ならひとまずこっちに来て」
 
 人がごった返す中から、目ざとく見つけてくれた彼女に連れられ、二階の奥へと向かった。
 貴賓室と書斎を合わせたような部屋で、ソファに腰掛ける。僕はとぼけながら問いかけた。
 
「さっき小耳にはさんだんですけど……コレストンが亡くなったとか」
「私も出勤するなりビックリよ。何でも闘技場で、頭を魔銃で撃ち抜かれていた」
 
 ということは……僕らが出ていった後か。いったい誰が、なぜ。

「犯人は見つかったんですか」
「ううん。まあこの町じゃ、誰が彼を殺したっておかしくない。だからって、本当にそうなるとは思わなかったけれど」
 
 マーラさんは応接机越し、ぐっと覗き込むように僕を見た。
 
「まさか、アルヴァンは関係ないわよね?」
「昨日、確かにいろいろ聞きましたけど……その時初めて知りましたから」
「そうよね~。でも、虫も殺さないお顔なのに、ときどきふっとおとこの顔がのぞくから。ちょっと気になっちゃった。ごめんね」

 にっと笑顔を作るも、疲れが見える。

(こちらこそ、ごめんなさいだな)

 コレストンの死だけでなく、商会事務所の書斎がまるごと消えていたという事態。僕のせいですと言えるわけもなく、ただ罪悪感に煽られる。
 
 いつもの倍以上持ち込んだポーション。所帯が増えたこと、何よりまだフキの様子も気がかりなため、ここで思い切って馬車を買うことにした。
 精算を終え、思いのほかまとまったお金が手に入った。何だかこの部屋らしい大きな商談になった気がする。

「特別扱いしてもらえたみたいで、ありがとうございます」
「こちらこそ。これだけの量の良質ポーションを納入してもらえるんだから、願ったり叶ったりよ。それに、こんな時こそ特権を使わないとね」
「特権?」
「私、ここの副所長なの。どう? 見直した?」
「そう言われると、確かに貫禄があるような」
「ちょっとやめてよ、そんな言い方だと年増みたいじゃない、もう」

 ぷうと頬を膨らませる仕草がかわいらしい。こんな姉がいたならと、ふと思った。
 今日の目的のひとつ、クオルテルについて聞こうとしたところ、マーラさんの顔が少し曇った。

「……ひょっとして、行ってみようなんて思ってる?」
「王都に用があるんです。ちょうどその途中みたいだし」
「この間も少し話したけれど……あそこは今や王国の火薬庫よ?」

 ゼアニス自由連合から輸入される魔核と魔銀の物流拠点だというのは聞いた。それに魔銃の一大生産地でもある。今やセントルや王都と並ぶ金と人が集まる町になっていると、マーラさんはさらに付け加えた。

「そうなると当然、傭兵やならず者もたくさん集まってくるわけだし。法より力がまかり通る、どこで火が点くかわからないようなところだから。できれば行って欲しくないなあ」

 眉尻を下げてため息をつく彼女。危険な場所なのは容易に想像がつく。それでも傭兵と聞いた以上、いよいよ行かないわけにはいかなくなった。

「大丈夫ですよ。あくまで商人として、少し覗くだけですから」
「もう近いうちに発つの?」
「できれば明日中には。病人のこともあるんですけど、少し急いでいるので」
「あ~あ、せっかく飲みに行こうって約束したのに」
「申し訳ないです」
 
 マーラさんは立ち上がるなり僕の手を取り、思いっきり抱き寄せた

「ちょっ……マーラさん?」
「ごめん、少しだけ」
 
 豊かな胸ごしに伝わってくる鼓動と、首元からほんのりと漂う甘い香り。大人の女性を感じて、僕は少しどきどきした。

「無事を祈ってる。次にこの町へ来た時は、今度こそ約束を守ってもらうわよ」
「……マーラさんも、お元気で」

 せっかくできた縁から、また離れなければならない。複雑に思いながらも……今だけは、彼女のあたたかさに少し癒されている自分がいた。



 ──翌朝。
 セントルの北門を出て、朝霧の中、僕たちの真新しい荷馬車はクオルテルを目指して進んでいく。
 
 御者はササメ。カミナの民は誰でもできるそうだけど、彼女が道中の警戒もしたいとのことで、買って出てくれた。
 幌付きの荷台ではヒナとフキが、客車顔負けの座席を何度も手で押して、その感触を確かめている。チラもぴょんぴょんと踊るように跳ねて、嬉しそうだ。

<<きゅう、きゅう!>>
「エル様、すごいです。こんなに座り心地のいい馬車、聞いたこともありません」
「ほんと、ぜんぜんガタガタしないっす。すっげえ高かったんじゃないんすかこれ」
「はは。元は一番安い荷車だよ。それを僕の【反転】で整えたのさ」

 ヒナはササメの方へ身を乗り出して、声をかけた。
 
「御者を代わるのはいつでも言ってね。ここでならきっと寝られるよ」
「ヒナ様、ご心配なく。こっちの御者用の席も快適ですから」
 
 みんな笑顔で、喜んでくれている。
 とても賑やかで、和やかな時間。これがいつまでも続くように、僕は仲間と共に前へと進む。
 
 これから立ちはだかるであろう、すべての困難を【反転】させる。そして奪われた運命──僕が僕である価値を、必ず取り戻してみせる。
 旅はまだ、始まったばかりだ。

 
 ~第一部 完~
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。 平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。 どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

処理中です...