どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中

文字の大きさ
2 / 39
Ⅰ 両親が英雄だなんて聞いてない

1-1b.

しおりを挟む
 人生初めての、年長者からの土下座を目の前にし、俺のドン引きは止まらない。

 しかしよく見るとこのおじいさん、ちょっと興味深い。
 このとんがり帽は確か、魔法に関わる人がかぶるやつのはず。なのに身体の革鎧は戦士の衣装だからちぐはぐ。つまりこのおじいさん、『魔武両道』ってやつなんだ。出来る人は多くないが、極めた人は数えるほどだという。

 レジクス王国中の才子才媛が集まるというこの学園の長。そんな偉いかたが床に膝を付け、眉尻を下げた顔で俺を見上げている。
 
「ケイ〝様〟でいらっしゃいますな。入学試験の不手際、大変失礼をいたしました!」
「敬称不要です。それより、弁償の件ならひとつ提案が」
「教頭もワシと一緒に土下座してくれんか」
「はっ。し、しかし学園長、この少年はいったい」
「ちょっと俺の話を聞いてくださいよ」

 眼鏡の先生も言われるがまま、ナチュラルに土下座に付き合う。何ゆえそんなに忙しそうにへりくだるんだろう。
 おじいさんが半泣きで語り始めた。
 
「あらためて、ケイよ。ワシはこの王立ブレイビオス学園の学園長をしている、ジマッツァと言うのじゃが」
「あ、おとんとおかんが『ジマさん』って言ってた人ですね」
「おお! やはり間違いない。まさかケン様とセイ様のご子息が受験されるなど、まったく聞いておらず。今さっきの騒ぎで、慌てて受験申込書を見て気が付いた次第での」

 あ~……二人とも、「黙って行ったほうがおもしろい」って、こういうことだったのか。旧知の人へのサプライズに俺を使うとは、まったく。
 
「両親から、ジマさんの話はよく聞きましたよ。三人教えた中で一番センスがあったって。自分たちの親ぐらいの歳だから、むしろ学ばせてもらうことのほうが多かったとか」
「な、何と……そのような有難いお言葉を。ううう、ワシ、今日まで頑張ってきて本当によかった」

 ジマさん、感無量で泣き始める。一緒にもらい泣きする教頭さん。とにかく嬉しそうなのは伝わった。
 両親の昔の話は、バスチァンとドメからしか聞いたことが無かったからなあ。山麓の村でもみんな普通に接してたし。あらためてこの反応を見ると、山に籠る前はそれなりの立ち位置だったってことだろうか。
 
「俺の両親って、そんなにすごかったんですか」
「ひょっとして、何も聞いておらんのか」
「おらんです」

 ジマさんは肩をすくめ、ため息をついた。
 
「お二人らしいと言えばそうじゃな。ご両親は『剣帝』と『聖姫』。魔王を倒した英雄。おぬしはその血を引継ぎし者、ということなんじゃ」
「ちょっと情報が多いんですが。それより魔王って、絵本の話じゃなかったんだ」
 
 やってくれたなあの二人。それで初対面の子供に、いい大人がこんなにへりくだっていたのか。やっと空気が読めてきたぞ。 まったく「おもしろい」じゃないって。単に失礼極まりないだけじゃないか。こっちこそ土下座だ。

 遅ればせ、俺も両膝をつき、上半身を目一杯に振りかぶった。

「ほんっと、申し訳ありませんでしたあ───っ」

 手を突いた途端、床にどかんと穴が開いた。

「あ、しまった」

 景色が上下に揺れ、下へ落ちていく。
 また、やってしまった。謝ろうとしただけなのにこの顛末。そうだ、さっきの試験から『縛りアンカー』を解いたままだった。それで力が余ってこんなことに。しかしもう遅い。
 
 バキバキのぐしゃぐしゃ。派手な音を出しながら、三階分ぐらい落ちたかな。
 やっと止まって……青いタイルの壁が見える。おそらくここは浴場。 

 舞い上がるホコリの中、誰かが立っているのが見えた。

 女の子だ。しかも、すっぽんぽん。
 ブロンドの髪。珍しいみどりの瞳が、ばっちりと俺の目と合う。

 そんでもって俺、つい目線を顔から下へとやってしまう。それに気付き、わなわなと震える女の子。

「いやああああ───っ、ヘンタイ───っ!」

 あ痛っ。
 手あたり次第その辺の瓦礫をつかんで投げつける女の子。
 
「ごっ、ごめんなさいぃ───っ」

 慌てて退散。今日は謝ってばっかりだ。
 
 試験どころじゃなくなってしまった。これは〝大変なこと〟になったぞ。
 この学園に入って、何としてもあの娘を見つけないと。誠心誠意、謝って。そして……家訓を守らねば。

 だが俺は、この時まだぜんっぜん予想だにしなかった。
 この土下座事故が、あんなに大騒ぎになるなんて───
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

追放された鍛冶師、異世界で最強の神器を作ってしまう ~国を捨てたら聖女と龍姫と精霊王に囲まれた件~

えりぽん
ファンタジー
王国唯一の鍛冶師である青年カイルは、嫉妬深い貴族により「無能」と断じられ、王都を追放される。しかし、辺境で出会った美しい聖女と契約したことで、彼の鍛冶の才が神話級であることが判明!作る武器すべてが神器となり、魔物どころか国すら震える存在に。本人はただ「役立つものを作りたい」だけなのに――いつの間にか聖女、龍姫、精霊王に慕われる無自覚最強伝説が始まる。ざまぁとスカッと展開、上昇ハーレムファンタジー!

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。

神に無能と捨てられた俺、異世界で無自覚チート無双~気づけば勇者も聖女も俺の下僕になってた件~

えりぽん
ファンタジー
神に「才能なし」と見捨てられた少年カイ。転生先の異世界でも雑に扱われ、最底辺からの生活を余儀なくされる。しかし、彼の「無能」は実は世界の理すら書き換える唯一の能力だった。知らぬ間に魔王を倒し、勇者を救い、聖女に崇拝される──無自覚にして最強、天然チートの異世界伝説が今、始まる。 裏切った者にはざまぁを。救われた者は恋をする。 無自覚系最強主人公・カイの異世界大逆転録。

『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。   剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。  しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。   それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。 「期待外れだ」 「国の恥晒しめ」   掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。  だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。 『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』  彼だけが気づいた真実。  それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。  これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。 【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

異世界では役立たずと言われたが、気づけば神々に寵愛された件〜追放された俺は無自覚のまま英雄になっていた〜

えりぽん
ファンタジー
パーティーを追放された青年レオン。 「お前のスキルは無意味だ」と笑われ、全てを失った彼は、ひとり辺境へと放り出された。 しかし、彼のスキル【因果交錯】は、世界の理そのものを操る神級の能力だった。 知らぬ間に神々の寵愛を受け、魔王を圧倒し、気づけば周囲には女神と美少女たちが……!? ざまぁ、ハーレム、最強すべてを詰め込んだ無自覚成り上がりファンタジー開幕!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...