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最終話
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それから半年後。
本来なら大がかりな儀式や神事があるのを、そのどれもを短縮・省略した形で結婚式は執り行われた。
花嫁として、本当なら歩くのもままならないほどの重く、長いドレスやヴェールもどれも私のためにどれも身軽に作られた。
披露宴も最初の挨拶に始まり、各国の国王あるいは国王代理といった重鎮以外とは省略し、早々と退散した。
その全てが身重の私のためであり、申し訳ないと思いつつ、面倒な儀式に付き合わされずに済んだかと思うと今の状態に感謝したくもある。
「……時々、本当にお前が『あいつ』だったのかと疑わしくなるな。あれだけ規則にうるさいやつだったのに」
披露宴後、一人会場に残っていたルドが戻ってきたときそんなことを言ったら呆れられた。
「本当ですよ。『妹』扱いされたときの恨みつらみをたっぷり聞かせてあげましょうか?」
「…わかった。大丈夫だ。信じる。だからやめてくれ」
「ええ、そうしてあげます」
「まったく……」
苦笑するルドに、つい笑みがこぼれる。
「兄妹どころか、親子扱いされていますからね」
ルド31歳。私16歳。決して珍しくないとはいえ、多いとは言えない歳の差だ。それだけに、一部ではルドをロリ…と呼ぶものもいるとかなんとか。
「子供を娶った覚えは無いな」
そう言って、ソファーに座る私に覆い被さってくる。そして、手を伸ばし……そっとお腹のふくらみに手を添えた。
「ええ。ルドの子は…ちゃんとここにいますよ」
ルドの手に私の手も添える。ルドと、そして私との子はその後もすくすくと大きくなっている。一時期流れていた私の子がルドの子ではない説は、初めての妊娠からの不安症によるものだったと片付けられ、今ではこの子をルドの子ではないと疑う者はいない。
隣に座り直したルドは私の肩をそっと抱き寄せる。その力に抗うことなく、私は自分の頭をルドの肩に載せた。
「シセリア」
ルドが私の名を呼ぶ。その声に顔を上げれば、目の前にはルドの顔。
「ん……」
目を閉じ、触れるだけの柔らかなキスを交わす。唇が離れたのを感じて目を開ければ、ルドの瞳が映る。その瞳にはとても柔らかな光が宿っていた。
そのまま身体の力を抜き、ルドの身体にもたれかかる。それをルドは優しく受け止めてくれる。服越しに伝わる、温かな体温。その温もりが、どうしようもなく安心させてくれる。
(やっと……)
安住の場所。ふと、そう思った。
それからさらに半年後。今、私の腕の中には新たな命がある。
無事に生まれた私とルドの子。待ち望んだ国の世継ぎの誕生は、国を挙げてのお祭り騒ぎとなった。
確かにそれは嬉しい。けれど…私の嬉しいという気持ちは別のところにあった。
転生の記憶が続いた。そのどれもが……幸せと感じることなく終えた。心残りを抱えて。
貴族家に侍女として雇われ、これからという時に亡くなった『リベッカ』。
親衛隊副隊長として殿下が陛下になることを見届けられずに終えた『グリエ』。
けれど、ようやく『シセリア』は幸せを手にした。愛する人と、愛の結晶をこの身に宿した。その結晶と、会うこともできた。
幾多の波乱が、二度も転生をした集大成が今ここにあるのだと思うと、それすらも愛おしく思えてくるから不思議だ。
(もし…)
このまま亡くなることがあっても、もう来世には私の記憶は無い。そう断言できる。
ここが私の落ち着く場所。彷徨い続けた『私』が、ようやく落ち着けられる場所が、ここにあった。
「何を考えていた?」
隣に座るルドが、私の顔をのぞき込んでくる。父親になり、国王として忙しい傍らこうして時間を見て子供に会いに来る。その姿は献身的な父親のようで、初めて会う自分の子にまだまだ不慣れで不器用な男子の面もある。
ルドの逞しい腕が、私の身体を子供ごと抱きかかえ、自分の膝に乗せる。一瞬の浮遊感に気付いた我が子は、その小さな瞳に父と母二人を映し出し、無邪気にほほ笑んだ。
「たまにはこの子を直接抱いてあげたら?」
最近ルドはこうすることが多い。子供を抱く私を抱く。そんなことを尋ねれば、ルドはニヤリと笑う。
「私は欲張りだからな。子供だが、お前も抱きたいんだ」
「もう…」
本当に欲張りだから困る。ふっと視線を子供に落とすと、頬に触れる柔らかな感触。
さらりと揺れる黒髪が視界の端に入り、それがルドからのキスだと気づく。それを見た子供が「あー」と声を上げると、ルドはすかさず子供の頬にもキスを落とした。
「…ねぇルド。さっき、何を考えていたって聞いたわよね?」
「ああ。何を考えていたんだ?」
「それはね……」
さっと手を子供の目に翳し、一時視界を遮る。その隙に、ルドの顔に自分の顔を寄せ……その唇に自分の唇を合わせる。
合わせたのは一瞬。
すぐに離れ、視界を遮る手も戻す。ちょっと子供には見せられない…二人だけの行為。
「私、幸せ」
「っ……ずるいな。相変わらずお前は」
ルドの顔がほんのり赤く染まる。きっと、私の顔も赤くなっている。
落ち着く場所が出来た。落ち着く場所がここでよかった。心からそう思う。
「ねぇ、ルド」
「…今度は何だ?」
なんだかちょっと警戒しているルド。自分からは遠慮なくしてくるくせに、私からされるのは慣れないらしい。
「私の秘密……聞いてもらっていい?」
「…『あいつ』のことならもういいぞ?」
『あいつ』とは、『グリエ』のことだ。けど、私の秘密はそれだけじゃない。そのさらに前。『リベッカ』のことも。それを知ったらルドはどんな反応をするか、楽しみ。
「いいえ。それだけじゃないわよ?」
いたずらっ子のように微笑む。私の表情に腹をくくったルドは苦笑した。
「わかった、聞こう」
「…じゃあ言うわね。実は私……」
~fin~
本来なら大がかりな儀式や神事があるのを、そのどれもを短縮・省略した形で結婚式は執り行われた。
花嫁として、本当なら歩くのもままならないほどの重く、長いドレスやヴェールもどれも私のためにどれも身軽に作られた。
披露宴も最初の挨拶に始まり、各国の国王あるいは国王代理といった重鎮以外とは省略し、早々と退散した。
その全てが身重の私のためであり、申し訳ないと思いつつ、面倒な儀式に付き合わされずに済んだかと思うと今の状態に感謝したくもある。
「……時々、本当にお前が『あいつ』だったのかと疑わしくなるな。あれだけ規則にうるさいやつだったのに」
披露宴後、一人会場に残っていたルドが戻ってきたときそんなことを言ったら呆れられた。
「本当ですよ。『妹』扱いされたときの恨みつらみをたっぷり聞かせてあげましょうか?」
「…わかった。大丈夫だ。信じる。だからやめてくれ」
「ええ、そうしてあげます」
「まったく……」
苦笑するルドに、つい笑みがこぼれる。
「兄妹どころか、親子扱いされていますからね」
ルド31歳。私16歳。決して珍しくないとはいえ、多いとは言えない歳の差だ。それだけに、一部ではルドをロリ…と呼ぶものもいるとかなんとか。
「子供を娶った覚えは無いな」
そう言って、ソファーに座る私に覆い被さってくる。そして、手を伸ばし……そっとお腹のふくらみに手を添えた。
「ええ。ルドの子は…ちゃんとここにいますよ」
ルドの手に私の手も添える。ルドと、そして私との子はその後もすくすくと大きくなっている。一時期流れていた私の子がルドの子ではない説は、初めての妊娠からの不安症によるものだったと片付けられ、今ではこの子をルドの子ではないと疑う者はいない。
隣に座り直したルドは私の肩をそっと抱き寄せる。その力に抗うことなく、私は自分の頭をルドの肩に載せた。
「シセリア」
ルドが私の名を呼ぶ。その声に顔を上げれば、目の前にはルドの顔。
「ん……」
目を閉じ、触れるだけの柔らかなキスを交わす。唇が離れたのを感じて目を開ければ、ルドの瞳が映る。その瞳にはとても柔らかな光が宿っていた。
そのまま身体の力を抜き、ルドの身体にもたれかかる。それをルドは優しく受け止めてくれる。服越しに伝わる、温かな体温。その温もりが、どうしようもなく安心させてくれる。
(やっと……)
安住の場所。ふと、そう思った。
それからさらに半年後。今、私の腕の中には新たな命がある。
無事に生まれた私とルドの子。待ち望んだ国の世継ぎの誕生は、国を挙げてのお祭り騒ぎとなった。
確かにそれは嬉しい。けれど…私の嬉しいという気持ちは別のところにあった。
転生の記憶が続いた。そのどれもが……幸せと感じることなく終えた。心残りを抱えて。
貴族家に侍女として雇われ、これからという時に亡くなった『リベッカ』。
親衛隊副隊長として殿下が陛下になることを見届けられずに終えた『グリエ』。
けれど、ようやく『シセリア』は幸せを手にした。愛する人と、愛の結晶をこの身に宿した。その結晶と、会うこともできた。
幾多の波乱が、二度も転生をした集大成が今ここにあるのだと思うと、それすらも愛おしく思えてくるから不思議だ。
(もし…)
このまま亡くなることがあっても、もう来世には私の記憶は無い。そう断言できる。
ここが私の落ち着く場所。彷徨い続けた『私』が、ようやく落ち着けられる場所が、ここにあった。
「何を考えていた?」
隣に座るルドが、私の顔をのぞき込んでくる。父親になり、国王として忙しい傍らこうして時間を見て子供に会いに来る。その姿は献身的な父親のようで、初めて会う自分の子にまだまだ不慣れで不器用な男子の面もある。
ルドの逞しい腕が、私の身体を子供ごと抱きかかえ、自分の膝に乗せる。一瞬の浮遊感に気付いた我が子は、その小さな瞳に父と母二人を映し出し、無邪気にほほ笑んだ。
「たまにはこの子を直接抱いてあげたら?」
最近ルドはこうすることが多い。子供を抱く私を抱く。そんなことを尋ねれば、ルドはニヤリと笑う。
「私は欲張りだからな。子供だが、お前も抱きたいんだ」
「もう…」
本当に欲張りだから困る。ふっと視線を子供に落とすと、頬に触れる柔らかな感触。
さらりと揺れる黒髪が視界の端に入り、それがルドからのキスだと気づく。それを見た子供が「あー」と声を上げると、ルドはすかさず子供の頬にもキスを落とした。
「…ねぇルド。さっき、何を考えていたって聞いたわよね?」
「ああ。何を考えていたんだ?」
「それはね……」
さっと手を子供の目に翳し、一時視界を遮る。その隙に、ルドの顔に自分の顔を寄せ……その唇に自分の唇を合わせる。
合わせたのは一瞬。
すぐに離れ、視界を遮る手も戻す。ちょっと子供には見せられない…二人だけの行為。
「私、幸せ」
「っ……ずるいな。相変わらずお前は」
ルドの顔がほんのり赤く染まる。きっと、私の顔も赤くなっている。
落ち着く場所が出来た。落ち着く場所がここでよかった。心からそう思う。
「ねぇ、ルド」
「…今度は何だ?」
なんだかちょっと警戒しているルド。自分からは遠慮なくしてくるくせに、私からされるのは慣れないらしい。
「私の秘密……聞いてもらっていい?」
「…『あいつ』のことならもういいぞ?」
『あいつ』とは、『グリエ』のことだ。けど、私の秘密はそれだけじゃない。そのさらに前。『リベッカ』のことも。それを知ったらルドはどんな反応をするか、楽しみ。
「いいえ。それだけじゃないわよ?」
いたずらっ子のように微笑む。私の表情に腹をくくったルドは苦笑した。
「わかった、聞こう」
「…じゃあ言うわね。実は私……」
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