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番外編
ルイズフェルド&ヘンリエッタの話し合い
「な、何だよ!何しに来たんだ!」
優雅に紅茶を楽しんでいたルイズフェルドは、部屋に通されたヘンリエッタに向かって叫んだ。
「ボクは悪くないんだから!兄上が悪いんだからね!」
「まだ何も言ってないよ」
呆れたように溜息を吐き、ヘンリエッタは勝手にソファに座った。
慣れている侍女たちは、ヘンリエッタが好きなハーブティーを淹れると、すすすと壁際まで退がる。
不貞腐れた表情でぷいっと横を向いたルイズフェルドに、ヘンリエッタは首を傾げた。
「ルイ?本当にどうした?」
「だって……!」
「ん?何?」
「兄上も!リエッタも!みんなボクの話聞いてくれないじゃないか!マリナは、ほんとに苛められてたんだ!それなのに……!」
泣きそうな顔で振り向いたルイズフェルドに、ヘンリエッタはぱちくりと瞬いた。
「えーと、ルイ?ピンク女が退学になったのは、エヴァに対する不敬だよ?苛めは関係ないけど」
「そんなの!エヴァが苛めるから、マリナが反撃しただけだろ!」
「何でエヴァが苛めるのさ」
「兄上に愛されてるから!」
「……誰が?」
「マリナに決まってるだろ」
「少なくともわたくし、マリナがクローディアス殿下と話してるとこ、見たことないんだけど」
「そりゃそうだよ。マリナと兄上は、誰もいないとこで会ってたんだから!」
何故か自慢げに胸を張ったルイズフェルドに、ヘンリエッタは頭が痛くなった。
「いつ?何処で?」
「へ?」
「クローディアス殿下が1人になるのっていつ?まさか学園じゃないよね、いつも影が付いてるもの。ねえ、いつ?何処で?」
「だって、マリナがそう言って……あれ?」
「それとも城で?寝る前なら1人に……いや、ならないな」
「……あれ?」
「そもそも、何でクローディアス殿下がピンク女と仲良くするのさ。殿下はエヴァ一筋じゃないか」
「マリナ……嘘ついてた?」
「いや、知らんけど」
ハーブティーを堪能していると、考え込んでいたルイズフェルドが顔を上げた。
「リエッタはさ」
「ん?」
「何で、ボクと居てくれなくなったの」
「んん?」
「いっつも1人で何でもやっちゃってさ。ボクが邪魔になったの」
「んんん?」
「マリナはさ」
「うん」
「いつもボクと一緒に居てくれて、いっぱいお喋りもして」
「……うん」
「だから、楽しかったのに」
「……それは、ごめん」
真面目な顔になって、ヘンリエッタは頭を下げた。
学園に入る前は、確かに何でも一緒にしていた。それこそ、勉強も、剣や馬も、マナーも。
判らない、出来ない、と言われれば、出来るようになるまで。
「ルイにも友達が必要かと……いや、言い訳か。ごめん、エヴァたちと一緒にいるのが楽しかったんだ」
「ボクより?」
「うーん、比べるもんじゃないからな。……ルイは?わたくしよりマリナと一緒に居たい?恋人なんだろう?」
「……え?」
「イチャイチャしてるって、噂になってたけど」
「イチャイチャなんかしてない!手も握ってないもん!!」
涙目で叫ぶルイズフェルドが嘘をついていないことは、付き合いの長いヘンリエッタには判った。
「あれ?」
「何でそんなこと言うの!やっぱりヘンリーは、ルイーズが嫌いなんだ!」
「……あー、ルイーズ。もしかして、ドレス着たい?」
「別にドレスじゃなくてもいいけど!ヘンリーが一緒に居てくれるなら、マリナなんて要らないもん!」
出会ったばかりの、幼い頃。
ヘンリエッタは髪を伸ばすのが嫌いで、ズボンを履き、ヘンリーと呼ばれていた。
ルイズフェルドは肩より長く髪を伸ばし、ドレスをまとい、ルイーズと呼ばれていた。
ぬいぐるみでおままごとをしている姿は、どう見ても男女が逆転していたのである。
「えーと。ドレスじゃなくてもいいなら、ぬいぐるみのドレス、一緒に作る?それとも、馬に乗ろうか」
「どっちも!」
「そうか。……うん、そうか……わたくしのせいだね、こりゃ……」
ニコニコと微笑んでいる少女めいた顔を見ながら、ヘンリエッタは、大きく溜息を吐いた。
「どっちも一緒にやるから、ちゃんと仕事もするんだぞ。もちろん、勉強も」
「ヘンリー……じゃなかった、リエッタも一緒にしてくれる?前みたいに」
「うん」
学園に入る前、いい加減淑女らしくしろ、と両親に言われ、さすがにルイズフェルドに付き合って王子教育を受けるのをやめたのだ。
そして、エヴァンジェリンたちとの時間を増やしたら、これが楽しくて。
だから、ごねられるのが面倒で、つい色々先回りした結果、ルイズフェルドと過ごす時間が激減していた。
テーブルを回って同じソファに座り、腕に抱きついてエヘヘと笑うルイズフェルドの頭を、わしゃわしゃと撫で回す。
「あー、なんか懐かしい」
「そうだよなー。わたくしが悪かったよ」
「……ボクも、ごめん。ちゃんと寂しいって、言えば良かった」
「今度からそうして。……あ、そうそう、コレだけはやっておかないとね。はい」
にっこりと差し出されたクッキーに、ルイズフェルドは瞳をキラキラと輝かせた。
「え!クッキー⁉︎作ってくれたの⁉︎」
「うん。ほら、あーん」
嬉しそうに口を開けたルイズフェルドは、次の瞬間悶絶した。
「かっ、辛いーっっ!!」
「まあ、一応、ケジメだからね。……うん、わたくしも食べるよ……」
壁際で気配を消していた侍女たちは、見慣れた光景にホッと息を吐き出した。
どう見ても歳の離れた姉と弟にしか見えないのは、ご愛嬌である。
1つしか違わない筈なんだけどなー。
優雅に紅茶を楽しんでいたルイズフェルドは、部屋に通されたヘンリエッタに向かって叫んだ。
「ボクは悪くないんだから!兄上が悪いんだからね!」
「まだ何も言ってないよ」
呆れたように溜息を吐き、ヘンリエッタは勝手にソファに座った。
慣れている侍女たちは、ヘンリエッタが好きなハーブティーを淹れると、すすすと壁際まで退がる。
不貞腐れた表情でぷいっと横を向いたルイズフェルドに、ヘンリエッタは首を傾げた。
「ルイ?本当にどうした?」
「だって……!」
「ん?何?」
「兄上も!リエッタも!みんなボクの話聞いてくれないじゃないか!マリナは、ほんとに苛められてたんだ!それなのに……!」
泣きそうな顔で振り向いたルイズフェルドに、ヘンリエッタはぱちくりと瞬いた。
「えーと、ルイ?ピンク女が退学になったのは、エヴァに対する不敬だよ?苛めは関係ないけど」
「そんなの!エヴァが苛めるから、マリナが反撃しただけだろ!」
「何でエヴァが苛めるのさ」
「兄上に愛されてるから!」
「……誰が?」
「マリナに決まってるだろ」
「少なくともわたくし、マリナがクローディアス殿下と話してるとこ、見たことないんだけど」
「そりゃそうだよ。マリナと兄上は、誰もいないとこで会ってたんだから!」
何故か自慢げに胸を張ったルイズフェルドに、ヘンリエッタは頭が痛くなった。
「いつ?何処で?」
「へ?」
「クローディアス殿下が1人になるのっていつ?まさか学園じゃないよね、いつも影が付いてるもの。ねえ、いつ?何処で?」
「だって、マリナがそう言って……あれ?」
「それとも城で?寝る前なら1人に……いや、ならないな」
「……あれ?」
「そもそも、何でクローディアス殿下がピンク女と仲良くするのさ。殿下はエヴァ一筋じゃないか」
「マリナ……嘘ついてた?」
「いや、知らんけど」
ハーブティーを堪能していると、考え込んでいたルイズフェルドが顔を上げた。
「リエッタはさ」
「ん?」
「何で、ボクと居てくれなくなったの」
「んん?」
「いっつも1人で何でもやっちゃってさ。ボクが邪魔になったの」
「んんん?」
「マリナはさ」
「うん」
「いつもボクと一緒に居てくれて、いっぱいお喋りもして」
「……うん」
「だから、楽しかったのに」
「……それは、ごめん」
真面目な顔になって、ヘンリエッタは頭を下げた。
学園に入る前は、確かに何でも一緒にしていた。それこそ、勉強も、剣や馬も、マナーも。
判らない、出来ない、と言われれば、出来るようになるまで。
「ルイにも友達が必要かと……いや、言い訳か。ごめん、エヴァたちと一緒にいるのが楽しかったんだ」
「ボクより?」
「うーん、比べるもんじゃないからな。……ルイは?わたくしよりマリナと一緒に居たい?恋人なんだろう?」
「……え?」
「イチャイチャしてるって、噂になってたけど」
「イチャイチャなんかしてない!手も握ってないもん!!」
涙目で叫ぶルイズフェルドが嘘をついていないことは、付き合いの長いヘンリエッタには判った。
「あれ?」
「何でそんなこと言うの!やっぱりヘンリーは、ルイーズが嫌いなんだ!」
「……あー、ルイーズ。もしかして、ドレス着たい?」
「別にドレスじゃなくてもいいけど!ヘンリーが一緒に居てくれるなら、マリナなんて要らないもん!」
出会ったばかりの、幼い頃。
ヘンリエッタは髪を伸ばすのが嫌いで、ズボンを履き、ヘンリーと呼ばれていた。
ルイズフェルドは肩より長く髪を伸ばし、ドレスをまとい、ルイーズと呼ばれていた。
ぬいぐるみでおままごとをしている姿は、どう見ても男女が逆転していたのである。
「えーと。ドレスじゃなくてもいいなら、ぬいぐるみのドレス、一緒に作る?それとも、馬に乗ろうか」
「どっちも!」
「そうか。……うん、そうか……わたくしのせいだね、こりゃ……」
ニコニコと微笑んでいる少女めいた顔を見ながら、ヘンリエッタは、大きく溜息を吐いた。
「どっちも一緒にやるから、ちゃんと仕事もするんだぞ。もちろん、勉強も」
「ヘンリー……じゃなかった、リエッタも一緒にしてくれる?前みたいに」
「うん」
学園に入る前、いい加減淑女らしくしろ、と両親に言われ、さすがにルイズフェルドに付き合って王子教育を受けるのをやめたのだ。
そして、エヴァンジェリンたちとの時間を増やしたら、これが楽しくて。
だから、ごねられるのが面倒で、つい色々先回りした結果、ルイズフェルドと過ごす時間が激減していた。
テーブルを回って同じソファに座り、腕に抱きついてエヘヘと笑うルイズフェルドの頭を、わしゃわしゃと撫で回す。
「あー、なんか懐かしい」
「そうだよなー。わたくしが悪かったよ」
「……ボクも、ごめん。ちゃんと寂しいって、言えば良かった」
「今度からそうして。……あ、そうそう、コレだけはやっておかないとね。はい」
にっこりと差し出されたクッキーに、ルイズフェルドは瞳をキラキラと輝かせた。
「え!クッキー⁉︎作ってくれたの⁉︎」
「うん。ほら、あーん」
嬉しそうに口を開けたルイズフェルドは、次の瞬間悶絶した。
「かっ、辛いーっっ!!」
「まあ、一応、ケジメだからね。……うん、わたくしも食べるよ……」
壁際で気配を消していた侍女たちは、見慣れた光景にホッと息を吐き出した。
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1つしか違わない筈なんだけどなー。
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