どうしてか、知っていて?

碧水 遥

文字の大きさ
16 / 17
番外編

ハーレム男(ジム・シュタイン)

 オレが前世を思い出したのは、4歳になったばかりの頃だった。

 誕生日ではしゃぎ過ぎて、転んで頭を打ったんだ。
で、気絶してる間に、前世を思い出した、ってより、もう一度体験した、って方が近いかな。

 まー、平凡な男だったね。趣味がギャルゲーってのがまた、平凡さに拍車をかけている。

 だが!オレは思い出したんだ!この世界より発展している元の世界を!

 その時からオレは、いわゆる神童だった。だって4歳児のおベンキョーだぜ?目ぇ瞑ってても出来るっての。

 それから1年経った頃、この国の第1王子が婚約した。
 クローディアス・レンドールと、

 ちょっと待て!それってエヴァたんじゃん!オレのイチオシだった、超絶美少女の!

 つまりここは、『綺羅星の花たち』通称『キラハナ』の世界じゃん!!

 ってことは、ジム・シュタインであるオレって、主人公じゃねーか!!

 まあ、『キラハナ』って売れなかったんだけどな。
貴族令嬢が攻略対象なのは珍しいし、みんなものスッゴク美少女だったんだけど、いかんせん、エロもないし、ゲームが簡単だったんだわ。

 オレのイチオシ、エヴァたんなんて、選択肢が出るたびに『なでなで』を選ぶとあっという間に好感度が上がって攻略出来ちゃう。

 まあ、エヴァたんはそれからが本領発揮なんだけどな!

 ブクブク太った主人公のために料理を作り、運動メニューを作り、ダイエットに協力してくれるんだ。
 目標に到達すると満面の笑みで誉めてくれるのがまた、イイんだよなぁ。

 のちのアプデで、エヴァたんを初めに攻略すると、ハーレムエンドが追加になったんだよねー。

 エヴァたんのダイエット指導により美少年に化けるジムオレに、他の美少女たちも攻略されちゃうんだ!

 そりゃ?エヴァたんが1番ですけど?イチオシですけど?
 他のコたちだって美少女だしさー、みんなオレのこと好きになるんだから、受け入れてあげなきゃ可哀想だよね!

 それに、選りすぐりの美少女ばっかりオレのものになるんだから、攻略対象以外のオンナのコだって、オレになびいちゃうと思うんだよね!

 いやぁ、学園中のオンナのコがオレのものになっちゃったら、どうしようかなぁ!

 ただ、ブクブク太るのは無理だった……。そこまで食べるの、好きじゃないし。そもそも、そんなに食べたい!と思う程、美味しくない。……うちだけ?

 けど、料理チートする程の知識、ないんだよなー。

 うーん……学園に入る時期を遅らせてまで頑張ってみたけど、ゲームの主人公程太ってないかなぁ。

 ま、いっか!オレが主人公なのは変わらないんだし!



▼△▼△



 いたぁ!エヴァたんだ!めっちゃ可愛い!可愛いってか、美少女?
 うわぁ、あのコがオレのものになるのかー。

 異世界ってサイコー!

 でも、警戒してるのか、『なでなで』させてくれない。
 何で男侍らせてんだよ!邪魔すんじゃねー!

 エヴァたんはオレのモンだっつーの!

 『なでなで』さえできればオレのモンなのにー!!

 あ、これはまさか定番の、エヴァたんも転生者なのでは⁉︎

 あ、また男とくっついてやがる!だーかーらー、エヴァたんはオレのモンだっての!エヴァたんがオレのモンにならないと、ハーレム出来ないじゃん!

 いい加減、優し過ぎたのかな。もっと、強引に行かないと!

 ……は?王太子が呼んでる?何で?



▼△▼△



「何の用だよ」

「貴様!不敬だぞ!」

「あー、構わない。それを咎めてると話が長くなるからな。まあ、言いたいことはひとつだ。エヴァンジェリンに触れようとするのはやめたまえ」

「はぁ⁉︎何でアンタの言うこと聞かなきゃなんねぇの」

「それは、私が彼女の婚約者だからだな」

 薄っすらと浮かべた笑顔が胡散臭え。大体、何でこんなに取り巻きを連れてんだよ!

「婚約者だから何だよ⁉︎エヴァたんはオレのモンだっつーの!」

「我々の婚約は、王命だな。つまり、きみは国家反逆罪を科されたいと?」

「はぁ⁉︎ふざけんなよ、何も知らない癖に!!」

 前世からの推しを!どれだけエヴァたんに課金したかを!オレのハーレムを!!!

 許してたまるか、オレは主人公だー!!!

 オレは拳を振り上げ、勇ましく王太子とやら権力の象徴に殴りかかった。



▼△▼△



 オレはロープでグルグル巻きにされて、うちの立派な馬車に放り込まれた。うち、金だけはあるから。

 ……じゃない!何でオレが退学になるんだ!悪いのはアイツだろ!

「ムームームー!」

 何で!オレはただ、エヴァたんを!オレのハーレムを!

『──攻略失敗。ゲームオーバー──』

「……は?」

 今、何か、変な声が……。

『──速やかに回収します──』

 うわっっ!引っ張られる!何だ、これ!!エヴァ……た……。



▼△▼△



「ジム!」

 馬車に走り寄り、シュタイン男爵夫人はドアを開けた。可愛いジムが不敬罪なんて、どんなに傷ついただろう!

「かぁしゃま」

「……は?」

「ジム、ひとりでこわかったの。かぁしゃまいなかったの」

「……ああ、ジム……」

 4ジムを、シュタイン男爵夫人はギュッと抱きしめた。

「いいのよ、お部屋に戻りましょうね。母さまがいなくて寂しかったわね。お部屋には、大好きなクマちゃんをたくさん用意しましょうね」

「エヴァたん!エヴァたんがほちいの!」

「ええ、銀色のクマさんね」

 ニコニコしながら手を繋ぎ、2人はゆっくりと屋敷に戻って行った。
感想 2

あなたにおすすめの小説

王家の賠償金請求

章槻雅希
恋愛
王太子イザイアの婚約者であったエルシーリアは真実の愛に出会ったという王太子に婚約解消を求められる。相手は男爵家庶子のジルダ。 解消とはいえ実質はイザイア有責の破棄に近く、きちんと慰謝料は支払うとのこと。更に王の決めた婚約者ではない女性を選ぶ以上、王太子位を返上し、王籍から抜けて平民になるという。 そこまで覚悟を決めているならエルシーリアに言えることはない。彼女は婚約解消を受け入れる。 しかし、エルシーリアは何とも言えない胸のモヤモヤを抱える。婚約解消がショックなのではない。イザイアのことは手のかかる出来の悪い弟分程度にしか思っていなかったから、失恋したわけでもない。 身勝手な婚約解消に怒る侍女と話をして、エルシーリアはそのモヤモヤの正体に気付く。そしてエルシーリアはそれを父公爵に告げるのだった。 『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。

「静かで、退屈な婚約者だった」と切り捨てられたので、最後くらい全部言って去ることにしました

桃我タロー
恋愛
「静かで、退屈な婚約者だった」 婚約破棄のその日、王太子は広間でそう言い捨てた。 三年間、失言を隠し、場を整え、黙って支えてきたのに。 どうやら私に必要だったのは婚約者ではなく、“便利な人”という役割だけだったらしい。 しかも隣には、つい三日前まで殿下の従兄に求婚していた令嬢まで立っていて――。 ならばもう、黙っている理由はない。 これは、最後まで笑って終わるつもりだった令嬢が、自分の声を取り戻す話。

私は王子の婚約者にはなりたくありません。

黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。 愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。 いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。 そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。 父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。 しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。 なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。 さっさと留学先に戻りたいメリッサ。 そこへ聖女があらわれて――   婚約破棄のその後に起きる物語

再会の約束の場所に彼は現れなかった

四折 柊
恋愛
 ロジェはジゼルに言った。「ジゼル。三年後にここに来てほしい。僕は君に正式に婚約を申し込みたい」と。平民のロジェは男爵令嬢であるジゼルにプロポーズするために博士号を得たいと考えていた。彼は能力を見込まれ、隣国の研究室に招待されたのだ。  そして三年後、ジゼルは約束の場所でロジェを待った。ところが彼は現れない。代わりにそこに来たのは見知らぬ美しい女性だった。彼女はジゼルに残酷な言葉を放つ。「彼は私と結婚することになりました」とーーーー。(全5話)

妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。 民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。 しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。 第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。 婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。 そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。 その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。 半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。 二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。 その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。

【完結】婚約破棄したのに殿下が何かと絡んでくる

冬月光輝
恋愛
「お前とは婚約破棄したけど友達でいたい」 第三王子のカールと五歳の頃から婚約していた公爵令嬢のシーラ。 しかし、カールは妖艶で美しいと評判の子爵家の次女マリーナに夢中になり強引に婚約破棄して、彼女を新たな婚約者にした。 カールとシーラは幼いときより交流があるので気心の知れた関係でカールは彼女に何でも相談していた。 カールは婚約破棄した後も当然のようにシーラを相談があると毎日のように訪ねる。

【完結】白い結婚をした悪役令嬢は田舎暮らしと陰謀を満喫する

ツカノ
恋愛
「こんな形での君との婚姻は望んでなかった」と、私は初夜の夜に旦那様になる方に告げられた。 卒業パーティーで婚約者の最愛を虐げた悪役令嬢として予定通り断罪された挙げ句に、その罰としてなぜか元婚約者と目と髪の色以外はそっくりな男と『白い結婚』をさせられてしまった私は思う。 それにしても、旦那様。あなたはいったいどこの誰ですか? 陰謀と事件混みのご都合主義なふんわり設定です。

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……