17 / 17
番外編
神々の庭
しおりを挟む
そこは、見渡す限り美しく花々が植えられた場所だった。ところどころ四阿や噴水、ベンチやガゼボなどが設られていて、過ごしやすそうだ。
そのガゼボのひとつで、つまらなそうに大きな画面を見ている女性がいた。
「今回は、完全な失敗ね……つまんない」
「あなたったら、また、人間を使ってゲームとやらをしていたの?暇つぶしに人間を巻き込むのはおやめなさいな」
「だって、普通のゲームではつまらないのだもの。同じゲームは何度やっても同じだし。だから、人間を使ってするゲームの方が、結果が判らなくて面白いじゃない?……でも、今回は失敗だわ。完全に阻止されてしまったもの」
「あら。では、見どころのある人間がいたのね」
「と、言うか……選んだ魂が失敗だったのかしら。それとも、同時に2つのゲームをやろうとしたのがダメだった?」
「それこそ、人間のせいにするのはおやめなさい。あなたが選んだ魂で、あなたが始めたお遊びでしょう?」
「そうだけど……」
不満そうに唇を尖らせた末妹を、姉は優しく嗜めた。
「いい加減にしないと、創造神に叱られてよ?お遊びに人間を巻き込むことを、快く思われないでしょうに」
「あら、それで怒られたことはないもの。大体、他のお姉さまたちだって、勇者だの聖女だの言って、異世界転生させているでしょ」
「それとこれとは別です。彼らは、世界を発展させるのに必要でしょう?」
「わたくしの世界にだって、お遊びが必要なの!」
「嘘を仰い。必要なのは、あなたにでしょう」
「必要なことには変わりないですぅ」
べーっと舌を出して走り去っていく妹に、姉の1人は溜息を吐いた。
「もう……反抗期かしら?」
何の支えもなく、宙に浮かんだ画面を覗き込む。
「あ、ほら。やっぱり忘れているではありませんか」
自分勝手なことを喚き立て、暴れている異世界の魂を、姉はきっちり回収した。
記憶を完璧に消し、まっさらな魂に戻すと、元々の世界の輪廻の輪に飛ばす。
「まったく……どうしてあの子は、世界に何の実りももたらさない、無意味な魂ばかりを選ぶのかしら?悪影響さえも与えないなんて、逆に珍しいのではなくて?」
今回も、世界には何の影響もなかったようだ。
ひとつの世界の中の、ひとつの国。その中のたったひとつの学園で起こった些細な事件など、池に投げ込んだ小石よりも、世界には影響しない。
余程の魂が起こしたことでなければ。
「それくらいは、あの子も弁えている、ということなのかしら」
末妹の世界は、今日も無駄に美しい。その美しさだけは、たくさんの姉妹たちの中でも群を抜いている。
「あら、あの子の世界を見ているの?」
「お姉さま」
通りすがった姉に視線を向けると、姉も画面を覗き込んだ。
「ひとつの世界に手を掛け過ぎね。美しいのは良いことだけど、あの子の影響が強過ぎるわ」
「ああ……だから、他の世界から魂を持って来ても、影響がありませんのね」
「まったく。遊ぶための世界を許すなんて、創造神もあの子には甘いのだから」
そう言って、憑依され、疲弊していた魂が回復するよう、僅かな祝福を与えた長姉に、次姉はくすくすと笑った。
「あら、お姉さまだって甘いではありませんか。あの魂たちも、別に不幸にはなりませんのに」
「……あの子が恨まれたら可哀想じゃないの」
「ふふ、そうですね」
憑依していた魂が排除されたので、2つの魂は憑依される前に巻き戻ったようだ。
これで、両親に愛される筈である。自分の子どもに戻ったのだから。
「いい仕事をしましたわ」
「そうね。……じゃあ、あの子とお茶をしましょうか」
「今日は、美味しいクッキーを取り寄せましたの」
「まあ、楽しみね」
姉妹が立ち去ったあとも、画面の世界は美しく輝いていた。
そのガゼボのひとつで、つまらなそうに大きな画面を見ている女性がいた。
「今回は、完全な失敗ね……つまんない」
「あなたったら、また、人間を使ってゲームとやらをしていたの?暇つぶしに人間を巻き込むのはおやめなさいな」
「だって、普通のゲームではつまらないのだもの。同じゲームは何度やっても同じだし。だから、人間を使ってするゲームの方が、結果が判らなくて面白いじゃない?……でも、今回は失敗だわ。完全に阻止されてしまったもの」
「あら。では、見どころのある人間がいたのね」
「と、言うか……選んだ魂が失敗だったのかしら。それとも、同時に2つのゲームをやろうとしたのがダメだった?」
「それこそ、人間のせいにするのはおやめなさい。あなたが選んだ魂で、あなたが始めたお遊びでしょう?」
「そうだけど……」
不満そうに唇を尖らせた末妹を、姉は優しく嗜めた。
「いい加減にしないと、創造神に叱られてよ?お遊びに人間を巻き込むことを、快く思われないでしょうに」
「あら、それで怒られたことはないもの。大体、他のお姉さまたちだって、勇者だの聖女だの言って、異世界転生させているでしょ」
「それとこれとは別です。彼らは、世界を発展させるのに必要でしょう?」
「わたくしの世界にだって、お遊びが必要なの!」
「嘘を仰い。必要なのは、あなたにでしょう」
「必要なことには変わりないですぅ」
べーっと舌を出して走り去っていく妹に、姉の1人は溜息を吐いた。
「もう……反抗期かしら?」
何の支えもなく、宙に浮かんだ画面を覗き込む。
「あ、ほら。やっぱり忘れているではありませんか」
自分勝手なことを喚き立て、暴れている異世界の魂を、姉はきっちり回収した。
記憶を完璧に消し、まっさらな魂に戻すと、元々の世界の輪廻の輪に飛ばす。
「まったく……どうしてあの子は、世界に何の実りももたらさない、無意味な魂ばかりを選ぶのかしら?悪影響さえも与えないなんて、逆に珍しいのではなくて?」
今回も、世界には何の影響もなかったようだ。
ひとつの世界の中の、ひとつの国。その中のたったひとつの学園で起こった些細な事件など、池に投げ込んだ小石よりも、世界には影響しない。
余程の魂が起こしたことでなければ。
「それくらいは、あの子も弁えている、ということなのかしら」
末妹の世界は、今日も無駄に美しい。その美しさだけは、たくさんの姉妹たちの中でも群を抜いている。
「あら、あの子の世界を見ているの?」
「お姉さま」
通りすがった姉に視線を向けると、姉も画面を覗き込んだ。
「ひとつの世界に手を掛け過ぎね。美しいのは良いことだけど、あの子の影響が強過ぎるわ」
「ああ……だから、他の世界から魂を持って来ても、影響がありませんのね」
「まったく。遊ぶための世界を許すなんて、創造神もあの子には甘いのだから」
そう言って、憑依され、疲弊していた魂が回復するよう、僅かな祝福を与えた長姉に、次姉はくすくすと笑った。
「あら、お姉さまだって甘いではありませんか。あの魂たちも、別に不幸にはなりませんのに」
「……あの子が恨まれたら可哀想じゃないの」
「ふふ、そうですね」
憑依していた魂が排除されたので、2つの魂は憑依される前に巻き戻ったようだ。
これで、両親に愛される筈である。自分の子どもに戻ったのだから。
「いい仕事をしましたわ」
「そうね。……じゃあ、あの子とお茶をしましょうか」
「今日は、美味しいクッキーを取り寄せましたの」
「まあ、楽しみね」
姉妹が立ち去ったあとも、画面の世界は美しく輝いていた。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
821
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
完結ありがとうございます♥️楽しく読ませていただきました。斬新でした。次回作もたのしみにしています。
感想ありがとうございます♪
物語なんだからそんなこと思うなよ…とわかってはいるものの、
現代であった小説やゲームの作り話に転生とか転移って
現実的にあり得ないというか、神様はその作品を参考にして世界を作ったのか?
どうしてそんな世界にするのか。とか色々考えてしまい納得できない自分がいるので
最後の神々の庭は納得がいくものでしたw
こういう設定凄く欲しいですね~
感想ありがとうございます♪
末妹は自分のお遊びのためだけにこの世界を作ったので、きっとあちこちの国やその中の学校や神殿に、ゲームのキャラがいるんでしょうね。