死を取り扱う精霊の物語

Spitfire

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サイドストーリー

湯船

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「つかれたぁ……」
体を大の字にして倒れ、芝生の涼しさを楽しむ泡精霊・ラフィ。さっきまで10キロのランをし終え、胸から来る苦痛の疲れを吐き出す。
「お疲れ様、ラフィ」
彼を気遣いながら、自分の軽く体を捻ったりしてストレッチをする。
「こんなはーどなの……毎日できない!」
むくっと顔をふくらませて僕を睨む。
年上のはずなのにこうなって見ると僕が歳上なのではと疑ってしまいそうだ。
「とりあえず……今日はここまでだな」
ラフィはそれを聞いた途端、やったぁっと声に出して言う。

その後、2人でシュティーア寮にある浴場に行く。
まぁ、普通シュティーア寮の人々は個人の部屋にある場所で何とかできるが、たまには広い所でくつろぎたいものだ。
ちょっと前に聞いた授業の内容を話しながら衣類を脱ぎ、2人で体を(ラフィの)泡で汚れを落とし湯船に飛び込む。
「いいゆだなぁ……」
とろけそうな程体を湯に浸からせ、今日の疲れを取っていく。
ラフィも同じく湯に漬かり、のんびりとする。
泡が少なくなったラフィはその細身のフォルムを見ては、
「まだまだなのかな」
と、呟き考え込む。
「成長なんてそんなもんだよ、何処かでうんっと伸びない時期が来るんだから」
「そうなんだ」っと、ラフィは目を大きく開け、近寄る。軽く後ろを見ると水龍系によく見られるヒレのようなものがあるしっぽを振っていた。
「先客がいたのか」
ラフィと僕はそんな声が聞こえ、2人で浴場の扉を見る。
双子の弟・セラートとマントの精霊・ジーク金髪の美青年と赤髪の美青年が扉を開け、僕らを見てる。
彼らもシュティーア寮の10人なのだが、広いのに来たかったのか、浴場に入る
「何だろう、この眩しさ」
ラフィと僕とは真逆のルックスを持つ2人。
そんな2人もあわさって大浴場は少し賑わい始めていた。
セラートは相変わらずクールに感じるも、あった頃よりはふんわりしてる気がした。(あくまで気がした)
ジークの羽はもう第3形態になっており、立派に見える。美青年まっしぐらしてる気がする。
そんな羽を見るラフィはちょっといじけてるそうで、口ら辺まで湯船に入れてしまっている。
「こう、みんなで賑わい出すのは……中学以来か……」
……その途端、ジークとセラートは僕を見る。
2人は目を丸くしてたり、2人で僕の事を言ったりしている。
ラフィはなんの事だろうという顔で風呂に浸かり、たまに近くに来る。
「なぁ……」
暗い声で一瞬、セラートが僕を見ていた。
「今、何って言った?」
そのトーンのまま、僕に質問を返す。
「さっき……」
その途端、僕の口が固まった。いや、口もだが、頭も止まったような感覚だった。
「僕今……何って言ったの」
しまいには相手に質問を返す形になってしまった。
「……記憶にないの?」
ラフィはそんな僕を見てほっぺに手を当てる。
正直、今僕は何を言ったのか分からない。でも、言えることは1つ。僕はとんでもない事を言ったのだ。
「……まぁ良い」
セラートはとりあえず話を区切り、クールさが抜けないまま湯船に浸かっていると。
「……ほい!」
いきなりセラート向けて水鉄砲(と言っても指でやるようなもの)を器用にするラフィがいた。
油断大敵……というのはこのことなのか。セラートはその水鉄砲を顔に命中させられた。
「……」
セラートは完全に沈黙した。はしゃぐのが好きではない彼からしたらこんな事されてたまったもんじゃないんだろう……。
「ずっと冷たい感じだと辛いよ!」
ラフィは顔をふくらませてセラートに言う。
まぁ、実際。ずっと冷たい感じだと辛くなるものだ。冷静でいる時の僕も辛くなって帰りか帰った後マフィンとかのお菓子を頬張るくらい疲れる。
「……」
確かにそうだと思ったのか。それともカチンときたかは分からないがいきなりセラートは拳を作り、水面をおもっきし殴る。
その途端、大量の水が僕らを巻き込み。
ドバシャン。
みんな水浸しになった。……いや、ここではお湯浸しか。
「……っ、やったな!」
被害者一号のジークも完全にスイッチが入ったのだろう、桶を持ち、水中に入れて、湯を満杯に入れるやいなやその湯をラフィ目掛けてぶっかける。
「わっわ!?」
ラフィの顔にほとんどが命中。
大乱闘が始まった。男と男が水を使って、大規模な乱闘がここ、湯の天国・浴場で行われた。
最初はやり返しでやったセラートだが、あまりにも当たりにくいラフィや、動きまくって当てにくいジーク相手に苦戦をし、途中から若干本気になっていた。
ラフィ、ジークは楽しそうにやっているのが見てわかった。
段々とカオスはエスカレートして行き、遂に……。
「っ……!?」
僕にもヒット。ラフィの近くにいたのだ。がっつり頭に湯がかかった。
「………………」
「……あっ」
3人は何故か固まった。
分かりやすく言うと彼らは檻のライオンを放ってしまった光景を近くで見る人達だ。
「……わかった、本気を出せばいいのね」
それだけをみんなに伝える。
「…………………………」
珍しく、3人の硬直した顔は実に、可愛く、そしてぶっ飛ばしたくなった。

「……ふぅ」
水だらけの毛を完全に乾くようドライヤーをがっつりかけている。
「……とんでもないものを見た気がする」
長椅子に寝っ転がるラフィはさっきまでの光景を鮮明に覚えているらしく。僕が鬼に見えたらしい。
「……カッとなったのは悪かった」
謝罪をするセラート。冷静な顔は今回怖ばりの顔でいた。
「……それにしても一体何故あそこまでなれるのです」
近くで髪の毛を整えるジークは僕を見て、さっきまでの事を言う。
「たしかに……僕を鍛えてくれた時もそうだけどベクターって運動できるよね」
ちょっと前まで走ったラフィも食いつく。
「……うーん」
「前にも競ったことがあるけど、君はかなり運動できるから気になったんだよ」
ドライヤーをかけ終え、僕は元あった所に戻す。そして、それを確認し終えると僕はこう答える。
「……ここに来る前、ずっとお師匠様と一緒に旅をしてたから?」
「えっ」
ラフィは驚いた。
僕が運動できるのは多分、お師匠様のおかげだとしか言えないのだ。
「……一体どんな度だったんだ」
ジト目のジークは僕の旅が気になったそうだ。
「ジーク程ではないよ……多分」
ずっと雪国を周り、絶壁の壁を登ったり、吹雪の中を2人で乗り越えたりしてただけだ。
「たまに階段を見てたら壁を使った落下降りとかしたくなる」
「おいおい……」
「危険だよ……」
セラートとラフィはちょっとヤバいやつと思ったのか後退る。
ジークはほほうという顔をしながら聞いている。
そして四人一緒に浴場を後にしたその時、
「……みんなぁ?」
僕とジークはその声にビクリとした。
セラートも察した顔で、唯一着いてこれてないラフィはその状態を理解できなかった。
目の前にはかんかんに怒るソフィア先生が居たのだ。
先生曰く、僕らの乱闘は寮全てに聞こえていたのだった。
冷たく、そして鋭い声と共に、彼らは浴場の掃除などをする羽目になったのは言うまでもない。
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