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サイドストーリー
1-2-s ベクターの手料理
しおりを挟む白い寮、シュティーア寮。
その中にある1つの部屋で僕はいる。
「ふふーん♪」
お師匠様に教えて貰った歌を鼻で歌いながら、大量にある衣類をタンスに押し込んでいく。
来てまだ1日しか経っていないものの、自分の住みやすいようにしてないと落ち着かないので、とりあえずタンスを自分の入れ方にしている。
両開きの所には趣味の機材やなんやらを入れたり、引き出しの所には衣類を押し込む。
「これで良し」
あらかた入れ終えたタンスを後にし、僕はキッチンに向かう。
ずっと室内の片付けをしていたのであまり気にしてはいなかったが、かなりお腹が空いていた。まぁ、昼飯も食わずに朝から午後1時までやっていたからな。
「さて、何を作るかなぁ……」
お師匠様が人間界に行き、見つけた小さな冷蔵庫の中身を見ながら、今日作るものを考えている。
「……久々にあれを作るかな」
そう独り言を呟きながら、僕は塊の肉を取り出し、木のまな板に持っていく。
肉用の包丁を取り出し、塊の肉を切る。
薄く切った肉をこれまた冷蔵庫から取り出した赤黒い液体に満ちた容器に入れる。
「これで良し……後は」
肉を漬けたまま、他のものを探す。
日が完全に当たらず、温度が変わらないキッチンのL字角、そこに置かれた瓶を取り出す。
その瓶には透明な液体に付けられた緑の食べ物が数本入っている。
ピクルス、というその食べ物を1つ取り出し、輪切りにする。
輪切りにしたピクルスをバゲットというパンを皮1枚繋がっている感じになるように切ったものの中に入れる。
超少量に油を引いてある程度火をつけたフライパンに液体が染みたお肉を入れ、焼いていく。
薄く切った為、直ぐに火が回り、食欲を誘う茶色に焼き終えると、バゲットの中に入れる。
フライパンにある残り汁に調味料を混ぜ、特性のソースを作り上げた。
そのソースをバゲットにサンドされている具材の上にかけ、しっかり挟む。
あまり多くかけてないので直ぐにパンにソースが吸われる。
バゲットを何個かに切り、一つ一つ薄茶の紙に入れていく。
「昼飯完成!」
ぱぁっと手を広げ、うれしみに浸ると同時に達成感に顔はとろけてしまう。
まだ暑い夏の時期なので冷たい紅茶を氷の入った魔法瓶に移し、バスケットに涼しくなりそうなスカイブルーをメインにしたシートを広げ、さっき作った具材入りパンや紅茶、スコーンなどを入れる。
まるでピクニックでもしそうなバスケットと、スケッチブックやその他荷物を詰め込んだ肩がけバックを持ち、鹿撃ち帽を被り、部屋を出る。
階段を駆け下りて、寮の先生、ソフィア先生に「行ってきます!」と元気よく言い、外に出る。
夏の熱に照らされる外、その熱から逃げるように木が多い場所に行く。
「やっぱり暑い……」
湿度も熱も高いここは冬地の僕らからしたら地獄なのかもしれない……そう思いながら木々の影にある芝生に寝っ転がりながらも、バスケットの中を漁りながら居ると。
「あ、美味しそうな匂いがする…!」
そう言いながらこちらに近づく者がいた。
ふわっとしたような白い身体。透明感のある泡を持ち、愛らしいフォルムの白い小竜。
入学式の時、僕と同じく人型ではなかったのでその印象的な姿は覚えている。
「……君は」
僕とは対象的な子に向け、誰という疑問をぶつける。
「ボクはフラフィ、ラフィと呼んでよ」
と、泡竜の精霊は言う。
「……ラフィ…わかりました!」
その言葉を聞いた精霊・ラフィは子供ぽい笑みを浮かべる。実際は僕より歳上らしいけど。
「もしかして、今からお食事?」
ラフィはバスケットに手を突っ込んでる僕を見てそう思ったのか。そんな事を言ったあと、
「なら手を洗わないと!」
と、僕には言う。
「それもそうだな……」
僕はバックを漁る。しかし、肝心な除菌シートやウェットティッシュのようなものを忘れてしまっていた。
「……しまった、忘れてしまっていた」
準備は基本、ちゃんとしている方だが、たまにこうやって忘れる時がある。特に、いつも入っているだろうと思えるものが多い。
そんな事を思っていると、ラフィが、
「なら、僕を使ってよ!」
と、自身を売る。
「……い、いいのか?」
そのラフィの発言にちょっと驚く。
普通、そんな事を言う奴は少ないからだ。
「だって僕はそのために居るんだもん!」
ぴょんぴょんと跳ねながら彼は言う。
「なら……使わせてもらおうかな……?」
僕はそんな彼を使う事を決心する。
彼はそれを聞くと歩いて来て、僕に手を出してもらうよう指示する。
言われたように手を出すと、ラフィは自分の体を擦り付けてくる。
その途端、泡泡と自身の体から泡が泡立ち、僕の手を包み込んでくれる。
あらかたその泡で洗い、彼がたまたま持っていた水でその泡を飛ばす。そうすると手は綺麗になっており、毛の一部が完全に明るくなってるようになる。
「むむ、君……かなり汚れてない!?」
そんな状態に彼は気が付いたのかムッとこちらを見る。
「……さっきまで掃除や料理をしてたから…?」
思い返せばずっと掃除をしてたから汗や汚れがついてたのだろう。
「……」
そんな僕を汚れ取りの精霊は見逃すわけが無い……。
彼は僕を捕まえるとそのまま寮に備わっている風呂場に僕を連れて行ってしまった。
……その後、僕は泡地獄を見せられる羽目になったのは言うまでもない。
P.S.
2人でサンドを美味しく食べました
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