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01 希望は泡と消え行く宛も拠り所もなくて……
しおりを挟む「お前、ルイとは何でもないって言ってたのに嘘ばっかりじゃないか、俺のことなめてんだろ !!」
えっ ? 確かに僕は昨日ルイと二人で外食したけれど、彼女の相談に乗っただけで他に何もないってのに。
「何を言ってるんだい ! ルイなんて妹みたいなものじゃないか ?!」
「言い訳なんて聞きたくないさ。使えないテイマーを我慢して仕方なく使ってやったのに。お前なんか首だ ! 二度と俺の前に出て来るな !!」
何ということだ。それが本音なのか ? 最近は厳しく責められたり文句を言われることが多かったけど、まさか、僕のことをそんな風に思っていたとは…… 夢にも思わなかったな。
……ショックだった !
ここはショーキの街。その中心地にある、冒険者から見ればいくらか高級な宿で、ボルトに突然の追放宣言を受けた。
宿の料金はそれなりだけど、さほどのことではない。なぜなら、僕らは今にも頂点を極めようとしている、Sランクの5人パーティー、ラビアンローズだからね。
とはいえ、つい先日までは順風満帆だった僕らも、Sランクに昇格してからは少し行き詰まっていたんだ。突然の宣告はそのせいかもしれない。
僕とボルトから少し距離をおいて、その場にいたエメリアとカエラは彼の意見に同意しているのだろうか ?
二人は特に何も声を掛けることも無く、こちらの事の進展を見守っていたから。
というのも、ボルトとこの二人は、そう !!
実は… 大人の関係のようなんだ。
直接「彼女らと付き合ってる」などと、聞いた訳じゃないから事実は不明だけど。エメリアもカエラも彼女ということなのだろうか ? お互いに了承済みのようで、テントの中で3人でイチャイチャしていることもあったんだ。
だからきっと、ボルトが黒と言えば二人共、白でも黒って言うだろうね ?!
じっさいボルトは男の僕から見ても、素晴らしい体躯で顔も相当にカッコ良い。
パーティーのエースとして実力も兼ね備え、ホントに困っちゃうくらい猛烈にモテるんだ。
だけどね、コイツはかなりの女好きだから大変さ……
「僕がこのパーティーへの女の子の入退会の調整に、どれだけ苦労したことか ?」
人事に会計に荷物運び、食事の用意から細々としたことまで、雑事はすべて、僕に任されるんだから。
ボルト狙い、お金目当ての入会希望者は掃いて捨てるほどいるんだよ !!
放っておいたらさ、ボルトと僕と女の子100人からのパーティーができちゃうくらいなんだよ !!
「ナンだとー ! お前が小難しいジイさんみたいな事ばっかり言うから、このパーティーに入れない娘が山ほど出るんだろ !!!
ある意味、お前の代わりなんていくらでもいるってこったぜ。 ハッハッハ !!」
「そこをボルトとパーティーの為になるように、厳しくチェックしてるんじゃないか !」
「うるせーぞ !! お前のそのワン公と一緒だぜ。うるせーし、くせーんだよ。前からムカついてたんだこのワン公が !」
そう言うと、ガツンッ、とコタローの頭を蹴っ飛ばした。
「ひどい、何をするんだ !」
間に割って入るけれど、盾になるだけだ。僕の力ではボルトに遠く及ばない。
「この肩に乗せたぷよぷよした奴も目障りなんだよ !!」
バシンッ、と使い魔のスライムをはたいた。
「ガルル !」
コタローはとても賢い魔狼なんだ。
自分が蹴られても、さっきの蹴りなどは傷付かないように衝撃を殺して受けて、まったく冷静なままだ。
だけど仲間を、それも弱いスライムを攻撃されたのは仲間想いの彼には許せなかったんだろう。
「ナンダナンダー ? やんのかこのワン公め。犬鍋にして食っちまうぞ !!」
「もうやめてくれ、分かったから。僕が抜ければ良いんだろー ?!」
「分かれば良いんだ、分かれば。アイテムは全部置いてけよ ! それは俺の力で得たものだからな」
「厳しいよ ! 装備してる物くらいは許してくれよー ⤵⤵」
「しょうがねえな。餞別にくれてやるぜ !
だがな、この剣は置いていけ。これは高かったんだ。お前にはこっちの なまくらがお似合いだぜ(笑)」
そんな剣まで取り上げるのか ?
ボルトの剣の何十分の一しか価値の無い安物を ?
売っても銀貨数枚だろうに !
相変わらず、他人(男限定)にはケチな男だな。
こうして僕は、あまりにも突然にパーティーから追放されてしまったんだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕はこれまで、このパーティーを少しでも良くする為に必死に耐えて頑張って来たんだ。
やっとSランクまで上り詰めて、さあこれから というところだったのに……
僕自身も ついこの前、テイムマスターの称号を得て、パーティーも順調に昇格してきた。
Sランクに昇格したばかりだけどギルドの信頼も厚くて、難しい討伐依頼も幾度となくこなして来たんだぞ。
依頼の選択や攻略プランで僕がどんなに悩んで、どんなに工夫を凝らしてきたか……
確かにボルトの力は素晴らしいものだけど、僕と使い魔達のやってきたことは、彼のそれと比較しても決してひけをとらないもののはずだ。
索敵、運搬、罠探、調理、なによりパーティー内の人事と雑用は、まるまる全部僕が受け持っていたと言っても過言ではない。
火を起こしたり、宿の受付や支払い等も、他のメンバーがするところなんて見たことがないよ。
ボルト達はそんなことは全く気が付いていなかったんだろう。
それなのにお金もアイテムも全て取り上げられて、必要な物すらまったく持ち出せずに、ほとんど着のみ着のままで放り出されたのだ。
拠りどころもない……
行く当てもない……
希望は霧散して、目の前には深い闇が覆い尽くす……
お金も銅貨数枚が残されただけで、これでは夕食もままならない。
これまで他のことには目もくれず、パーティーの為にと必死に頑張って来たのは何だったのだろうか……
その全てが泡と消えたのだ !!
悔しくて、悔しくて、しょうがない……
涙がこぼれてしまう。
「くそっ、どうして !?!?」
しかし、こうなってしまっては今更どうしようもない……
宿のある繁華街から徐々に暗くなってゆく町を、途方も無くトボトボと歩いたんだ。
どこをどう歩いたのかも分からない……
やがて町の外れまで来て、何かの店先のベンチに力無く腰かけた……
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