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17 まずい !不味い!ダメダメ 美味くないデスよー !!
しおりを挟む少し遠くまで銀さんと取り巻きを連れて狩猟に出たんだ。
この日は魔物が多くて途中で一度里に持ち帰るほどだったんだよね。
するとその時、ブルーコンドルのセリカが少しあわてた様子で知らせて来たのだ。
"リョーマリョーマ !! こっちが大変よ"
急いでセリカの示す方へ向かうと、森の細道を抜けたところでワイバーンに襲われている兎人族の親子を見つけたんだ。
娘を庇っているのだろうか ? 父親と見られる男はかなりの怪我を負いながらも、樹上のワイバーンに古びた剣をかざして辛うじて立っていたのだ。
ワイバーンはスゴいスピードで降下してとどめの攻撃をしようとしていた。
もうほんの幾ばくかで、二人の命が奪われようとしていたんだ。
一番近くにいた銀さんがそうはさせぬと、一気に距離を詰めてワイバーンの攻撃をギリギリで防いだ。
そこに疾走したコタローが駆け付け、ワイバーンの上に飛び乗って魔力を流し飛行のバランスを崩した。
僕はコタローの後に続いて一閃で凪ぎ払うとワイバーンは地上に墜ちた。
「ぐえええええーーーーーー !!!!」
「ボスーーーー !!! コイツ旨そうですね !?」
「えーーーー ? 美味しいのかい ?」
ヤバイよ ! 銀さんがヨダレを垂らしながら言ったんだ。きっと相当旨いに違いないぞ !
"いやぁーーーーーーーーーーー !! まずい !不味い!ダメダメ 美味くないデスよー !! ヒギャーーーーーー 許してーーーーー !!"
「分かった、分かった。ところで、なんで兎人族を襲ったんだい ?」
"お腹空いたんだ、ごめんなさい。ううううっ…… なんでもしますから許してー !!"
「しょうがないなぁ !!」
僕はワイバーンを一応テイムして、回復魔法で怪我を治してあげた。
「君をワイタロと名付けるよ。一人じゃ寂しいだろ ? 群れに帰っても良いよ」
ワイタロは少し大きくなり力強くなった。そして、僕のステータスも上がったんだ。さすがに飛行のスキルは無かった… 残念 !
「うんうんうんうん !!!! ありがとう。何かあったら呼んでね ! バイバーイ」
ワイタロは首をブンブンブンブンと激しく縦に振って、逃げるようにして飛び立っていった。
銀さんが脅かすからよっぽど怖い思いをしたんだろうな ?
「ねえ銀さん !」
銀さんは僕の声にも上の空でワイタロが飛び去った方を見ながらお腹を、クーーっと鳴らしていた。
「銀さん ? 」
本気か ? 本気で食うつもりだったのかな ? ヤバイな ? まあ、僕も一瞬の気の迷いで美味しいの ? って言ったかもしれないし……
しかしワイバーンなんてとても強い魔物のはずなんだけど、一太刀で倒してしまった。以前と比べて飛躍的にパワーとスピードが上昇してるんだろうな ? 皆が仲間になってくれたお陰だね。
一方、傷だらけの男は安心したのか膝をついて、まだ酷く息を切らしていた。
彼にとって壮絶な戦いだったことを物語っていた。
子供を守る為とは言え、あんなに実力差のある魔物と向き合うなんて…… お父さんの力って凄いなぁ。
「ハア ハア マイン !! だっ、大丈夫かい ?」
「うん、私は全然大丈夫だよ !」
「良かったぁ。 あっ、ありがとうございました !」
「いえ、危ないところでしたね。間に合って良かったです。怪我がひどいから、先に回復魔法で治しましょうね」
僕がヒールの魔法で治療すると、彼の呼吸もいくぶん楽になったようだ。良かったね、お父さん !!
「もう、本当にダメかと思っ…… ええええっ ? あなたは ?!」
男は銀さんに礼を言おうとした途中で、人間ではないと気が付いたんだろう。
コタローは「あっ、ヤバッ」と言って魔狼から人間の姿に変化した。
おいおいコタロー遅いよーー ! 逆に悪目立ちしてるからねっ !!
「あっ、大丈夫ですよ、彼らは僕の仲間なんです。傷付けなければ、人に危害は与えません。じゃあ、これで……」
何か犯罪を犯した人のような反応をしてしまうなぁ。と思いつつ、これ以上のボロが出る前に足早に立ち去ろうとした……
「えっ、あっ、うっ、いっ、行かないで ! ちょっと待って下さい。大丈夫です」
男は適当に別れのあいさつをして、すごすごと帰ろうとする僕たちを呼び止め、何かお礼がしたいと、すぐ近くの自宅に招いたんだ。
そこは小さな家が4軒ほどある集落で、そんなに裕福には見えなかった。
男はテツと名乗り、娘はマインというようだ。スラクと仲良く遊んでいる。ウルフも遊んでもらっているようだね。
テツは、何もないな…… とか言いながら、全財産なのであろう、銀貨1枚と、銅貨などをかき集めた物を差し出した。
大した金額ではないけど、この人にとっては大金なんだろう…… きっとこのお金が無ければ、この親子の生活は今よりももっと苦しくなるはずなんだ。
ポンと出してしまうテツという男は、腹の据わった人だと感心してしまったよ。
でも、リョーマはそんな大事なものは受け取れなかった。
「僕にはお金なんか必要ないんだ。どうしてもと言うなら、その代わりにコイツらウルフ達と又、遊んでやってよ。どうだい ? マインちゃん」
「良いよー。みんな、モフモフで可愛いもん !」
「良し。じゃあ決まりだね !」
テツに話を聞くと、ここから近くの里に、獲物や採集したものを売りに行って生業にしているけど、最近、ワイバーンが多くて、迂闊に出歩けなくなってしまったそうなんだ。
ワイバーンは元々この森には居なかったのに、急に現れたようだ。この森に何かあるのだろうか ?
しかし、今の状況では、僕らの里まで遊びに行くのも命懸けだよな。
テツの家を出て帰ろうとすると、ワイタロが、3体のワイバーンの仲間を連れてやって来た。
「アイツ ! 仲間を連れて敵討ちに来たな !!」
「待って、コタロー。そんな感じじゃなさそうだよ ?」
「ヤッホー ! リョーマ !」
「この子達はどうしたんだい ?」
「僕の仲間だよー。僕が急に強くなったから、驚いたんだって。それでね…… こいつらも強くして欲しいんだってさぁ !」
"ハーイリョーマ、私達も強くしてちょーだい !"
「いいけど、女子ばっかりかい ? ワイタロ、お前モテモテだな !」
"違う ! 全然違うわ ! この子の方がヘタレだったのに、さっき私が負けちゃったからスンゴイ悔しかったのよ。それに男子もいるわよ"
"よろしく !"
この子は男子のようだ。僕はテイムマスターなのに全然違いが判らないぞ !!
「僕にテイムされても良いのかい ?」
"会ってみてから決めようと思ったけど、あなたのように素敵な人なら願ってもないわ♡♡ !! 私達、きっと役に立つわよ♡ !"
"私達もお願いしまーす♡ !"
"しまーす !"
哀願されるままに僕はテイムして、ワイミ、ワイラ、ワイジロと名付けると、淡く光り、ワイタロと同じくらい大きくなった。
「ありがとう、リョーマ♡ 力があふれるわ !!!」
「ありがとう、良い感じよー !」
「ありがと !」
「良かったねー。これから宜しく頼むよ」
彼女らがパワーを感じたように、僕もワイバーン3体から影響を受けて、力があふれるのを感じたんだ。
「あのねリョーマ。お願いがあるんだけど…… 」
彼らに事情を聞くと、この森にやって来たのは少し前で、自分達の住んでいた山を乗っ取られたから仕方なく森にやって来たようだ。
それで、パワーアップさせてもらったからきっと勝てるんじゃないかと思ったみたいなんだよね。
リョーマ達も強いからできれば手伝って欲しい、と頼まれたから仕方がないなぁ。テツとマインちゃんの為にも手伝うことにしたんだ。
この何気無いお願いが僕の運命を変えるようなあんなことになっちゃうとは、この時は全く思いもしなかったんだよね……
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