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01 超絶美少女の半端ない魅力
しおりを挟む長かった6時間の授業からの開放。
この静かに鳴り響いている放課後を告げるチャイムが一番好きだ。
ただ、そんな感傷は隅へ追いやり、まだそれが鳴り止まない虚と実の間のうちに何人かのクラスメイトに続いて教室から飛び出した。
「えっ ?」
廊下に二歩三歩、足を踏み入れてやっと異変に気付いた。
誰のイタズラだ ?
その床には大きな魔方陣のようなものがが描かれていた。
しかし、そんな思いも束の間。フワッと宙に浮かんだ気がした次の瞬間には意識ごと持っていかれた。
「 ……うーん。、 、 、 うわっ !?」
暗転した意識から背中にゴツゴツとした硬い感触とまぶたに感じる光で復活し目を開ける。身体に痛みは無くて安心したのも束の間、そこは疑いたくなるような光景だった。それは重厚な石造りの立派なキラキラした建物で、王宮の広間のようなところだった。
目の前には豪華なドレス姿の超絶美少女。そして兵士 ? などが十数人いたのだ。
美女はアイドル ? 王女か女神か ? 兵士はコスプレ ?
「おめでとうございます ! とうとう召喚に成功しましたね、女神イーリス様」
……おおっっ、女神樣かぁ !?!?
顔ちっさー !! とんでもなく可愛い。胸の鼓動が早まるのが分かるほどだよ。女神様というだけあってか、惹きつけられるような感じがして目が離せない。
「大臣 ! なんと、6名もの召喚 ! とうとう成功しましたわ !」
はっ ?
召喚 ?
6名 ?
あっ、
左右を見てやっと理解が追いついた。
生徒会長のハルト、それにリュウイチと、長い黒髪が美しい我が校ナンバー1の美少女アイリ、地味子の確かミサキ、それにまあまあ仲良しのイチカが居た。
一応、知った顔ばかりで安心した。
「みなさん、ようこそお越し下さいました。私は王女イーリスと申します。ここはエルネ王国。この世界の救世の為に召喚させていただきました。どうか魔王を倒すためにお力を貸していただけないでしょうか ?」
見た目は外人さんだが、女神樣の言葉は理解できる。
落ち着いて観察すると、女神と大臣の他に様々な人が居るのに気付いた。
鎧を着た騎士の他に礼服のような服装の文官 ? らしき者が総勢20名ほどで取り囲んでいた。武器を手にしてかなり警戒しているようだ。
ただ、それを俺たちの前に突きつけるような手荒な対応ではないのがまだ救いだ。
「おいおいネーチャン ! いきなりラチっといて何言ってんだよ ? 魔王がどうとか俺には関係ねーし !!!」
「女神様に対して、ねーち、イヤイヤ、なっ なんということを……」
「大臣 ! 良いのです !」
それにしても、まるで状況がわからないというのにリュウイチはかなりキレている。まったく困った奴だよ。さっき安心したばかりなのにそんな敵意を込めた発言するから、案の定兵士に鋭利な剣を突き付けられているではないか。
しかし、女神様はそれに反して冷静沈着だった。
「申し訳ありませんでした。この王国をお救いいただいた暁にはお礼は何なりと…… 女性にも、おモテになるでしょうし、私もそれなりに…… 」
女神様はリュウイチのすぐ近くまで歩み寄ると、右手を両の手で挟み込むように優しく握り、息がかかりそうなくらいの距離からじっと見つめながら語った。
「うおー ! 俺、頑張るよ !!」
何だ ? すごい技だな ! このヒトって、意外とやり手な感じの女神樣なのかな ? だけど、リュウイチには上手い対応かもな ? あんなにイキってたのに、一転してころっと言いくるめられてるし……
「僕達はいずれ国に返してもらえますか ?」
今度はハルトが訊ねた。
「申し訳ありませんが帰還方法は今のところ……
ですが、何とかお力になりたいと考えています」
あゝ、帰れないのか…
それでも、俺と女子達は顔を見合わすくらいで特に何も言えない。動揺もあるし、俺は公の場でガンガン物を言える性格では無い。気持ち陰キャ寄りの普通の青年なのだ。
ハルトとリュウイチがいくつか質問を投げ掛けると、この世界は魔力溢れる剣と魔法の世界だと教えてくれた。
「では、召喚の儀を進めさせていただきます。こちらへどうぞ」
女神様はリュウイチの手を引いて大きな水晶玉のような物の前に導くと、彼の左手をその上に乗せた。
「あああーー !!! レベル55の聖騎士、攻撃力188とは素晴らしいです、リュウイチ様」
「おおー !! 鍛練も無しの素レベルで55とは、あり得ない……」
あの水晶玉は人の職種とレベルや能力などを測定できる鑑定器のようだ。
リュウイチは誇らしげに武勇伝を語ったが、ここは割愛して…… その先にいる文官に何か説明を受けている。
そして次は艶髪のアイリが鑑定玉に手を置いた。
「おおっ!! レベルは46ですが、10年に一人と言われる大聖女と出ました。これも素晴らしい、アイリ様 !」
ハルトは大賢者レベル62、ミサキは大魔道師レベル24、イチカはテイマーレベル38と、この世界の人と比べるとかなり良いステータスのようだ。
いよいよ俺の番だ、緊張するなぁ !
女神様が俺のすぐ隣り来ると、すごく良い匂いがした。
そして、優しく包み込むように手を引かれた。
うわあ、ステキです !!
女神様の手に触れるとズキュンと心臓が跳ね上がり、脳天に甘い快感がほとばしった。まるで軽くイッてしまったような感じがしたんだ。
「どうかなさいましたか ? 大丈夫ですよ」
なぜか違和感を感じてほんの少し手を引いたオレに問いかける。
美しくキラキラと輝く淡い金の髪がオレの肩に触れそうな距離から見上げ、食い入るように見つめられた。
そう、食い入るように… オレはもう、瞳の奥の奥まで覗き込まれているような気がしたんだ。
だけど待て待て、あなた大丈夫と言いましたか ?
それは怪しい奴の常套句。よく言うセリフだ。詐欺師に美しい女性をクドく男、そして歯医者さんだ。
コイツ怪しいぞ ! 疑いを深めたその時だった。
(プシューーー !!)
脳から湯気が出た !
多少の疑いなんて、そんなに間近で見詰められて… ものすごくドキドキして耐えられないよう。それどころか、愛おしくてたまらないというか、彼女の全てが欲しいという衝動にかられてしまっている。
えっ 何だこれ ?
ついに俺にもこの瞬間が訪れたというのか ?
これがひと目見た瞬間にビビッときましたってヤツなのか ?
女神様 ! 貴女もビビッときましたか ? 二人の運命を感じてますか ?
イヤイヤ、それは違うだろ !
そんな訳ないだろっ。オレの馬鹿 !
この女神怪しいんだってば。
あっ ‼
ラノベを良く読む俺はピンと来た。
コレは魅惑だ !!
間違いない。ヤバイッ ! これヤバいヤツだよ。
それはもう、持っていかれそうになるところをギリギリでつなぎ止めた平静だった。
太ももを全力でつねって、みるみる高揚し支配されそうになる意識を辛うじてつなぎ止めるこができたんだ。
えー ? ってことは多分だけど、俺以外は何人か魅了されているぞ !!
きっとリューイチは間違いなく手遅れだろ ? 下手をすれば全員やられちゃってるかも知れないよ。
それに気付き思いを巡らせようとしたが、考え込む間も無く水晶玉に手を乗せられた。
もしかしたら、はいっ、コイツの魅惑完了~、なんて感じで、オレの感情なんて無視してるのか ?
そうかも知れない。声も掛けないし、ずいぶんと機械的だしな。
しかしこれはマズイぞっ !!
このままじゃ、俺たちどうなっちゃうか分かったものじゃないよ !?
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