聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶

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39 【サイド】マクライア2

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取り残されたような寂しい墓地に、マクライアはそっと小さな花束を置いた。

そこに眠る者はいない。
けれど、この墓は、かつて愛した人、アルデリアのための場所だった。

「……また来ちまったな」

膝をついて、草に指を触れる。

焦りばかりの若い日々。
役立たずの烙印。パーティでの孤立感。
情けなさと、それでもそばにいたいと願った想い。

「……結局、守れなかったよ。俺は」

あの日、魔界の門が開き、押し寄せる魔物の群れの中で。
成果を出そうと焦った自分が、目をつけたのは――まだ幼い九尾の子ども、トミーだった。

斬りかけた刹那――母親が庇い飛び込んできた。
だが盾役のキリルが、躊躇なくその母親を殴り殺した。

「俺は……魔物だろうが子供だろうが、ためらわず斬れる男になっちまってたのかって……あの時、ようやく気づいた」

アルデリアは血を吐きながらも回復魔法を放ち、母親を救おうとした。
けれど間に合わなかった。

「お前が命を懸けて守ろうとしたものを……せめて俺が、最後まで守ろうと思った」

ガブリエルの放った炎からトミーを庇い、自分も全身に大火傷を負った。
生死の境をさまよい、気づいた時には彼女の遺体すら残っていなかった。

「……生きてて、ごめんな」

墓前に深く頭を垂れたその時――

「クルルッ」

見覚えのあるカラスが頭上を旋回し、降り立った。

「……伝書鳥、か」

あの少女を送って以来、戻ってきていなかったので気になっていた。
その足にくくりつけられていたのは、小さなカプセル。

ん?何かまた魔王様から連絡事項か?
伝書鳥がマクライアの腕に止まる。
またすっかり顔馴染みだ。

そしてその中には――

「……っ!」

あの時、自分がアルデリアに贈った婚約指輪。
安物だったが、何十回もダンジョンに潜って、必死に手に入れた唯一のプレゼント

「アルデリア……」

震える声でつぶやき、膝の上で指輪をぎゅっと握りしめる。
思い出と後悔で、涙と鼻水がボトボトと落ちていく。

魔界の門で、アルデリアの亡骸を探したが見つからなかったんだ。これは唯一の形見だ。

魔王様、見つけてくれたんだろうか?

「ごめん……ほんとにごめん」

マクライアは50年ぶりに触れる指輪に懺悔するしかなかった。
だが、その瞬間だった。

「――あーもう、握りしめないでくれる? 出るに出られないじゃない」

「へっ……?」

墓地に、マクライアの間の抜けた声が響いた。
どこから?どこから声した?

そーっと、握りしめた指輪を見る

「『へっ?』じゃないわよ! アンタほんと変わってないわね!」

その指輪から、マクライアの目の前にふわっと人の形をした魔素が立ち上がる。

そこに現れたのは――かつての恋人、いや、今の精霊・ウンディーネだった。

「え、え、えっ……ど、どちらさま?」

思わず腰を抜かす。
だ、誰?
オタク、誰?

マクライアは凝視しながら呟く。

「はぁ~~っ!? この顔! この声! どう見たってアルデリアでしょ!? 少し姿が精霊っぽくなったくらいで見分けつかないとか、どんな鈍感よ!」

怒りの指先でマクライアの胸をぷすりと突く。

「ていうか、年取りすぎて顔変わったのアンタの方なんだからね!? こっちはほぼそのままよ!」

びしっと指を突き刺される。

これだけごめんと泣きながら、
まさかここで「どちらさま?」って言われるとは。
さすが、マクライアだわ。
この鈍感力、変わってなさすぎる。

でも、こんな困った奴だからこそ、わたし、好きになったのよ

ウンディーネは頭を抱えたくなった。
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