【完結】存在しないことにされていた管理ギフトの少女、王宮で真の家族に出会う 〜冷遇された日々は、王宮での溺愛で上書きします〜

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恋愛編

25 【サイド】ゲオルク③

どうしてこんなことになった?

リアは、なぜ俺の未来に願いをかけてしまったんだ。
あの純粋さが、こんなことになってしまうなんて。

俺の幸せは.....

今までの苦しみを涙で洗い、母のことに終わりをつけた時、俺の元には、リアの温かさだけが残っていた。

俺の幸せを望む声は、自分の苦しみをおいて、俺のことを思ってくれるあの日の母と重なった。
そして、残酷にも気づいてしまった。

俺の新しい幸せは、今日のように、リアと喜ぶ場所を共に歩き、感じ、笑い、そして、いつものように仲良く過ごし、彼女がうれしそうに読んだ本の感想を一番に聞くことだ。

それは、疑似ではない。
本当の関係で......だ。

俺の幸せは......リリアーナだ。
俺が幸せにリリアーナと結ばれなかったら......
その原因の彼女はどうなるのだろうか?

彼女の純粋なギフトの祈りが、俺の意に沿わないものになったら、その原因であるリリアーナを排除しかねない。

冷静に...まだ気づき始めたばかりぐらいの想いだ。
俺は王子だ。
彼女と偽装戸籍で添い遂げるのは無理だ。

だからヤコブも今なら引き返せると、俺に牽制してきたんだ。

俺がそんな幸せを求めなければいい。
リアが幸せになれることを心から祈れたら......
そして、リアとは離れて、違う女性との生活に幸せを感じられるようにならないと。

それなのに、母と過ごした部屋に来ただけで、心の中に風が吹いてしまったような、ここにリアがいてくれたらいいのにと願ってしまう俺がいた。





「ドレスは踊り子時代のものを一枚、普段着ていたドレスを.....一枚...以外は、神殿に寄付して欲しい」

王宮の侍女に頼んで、片付けを一つ一つ行っていく。
ドレスは時が経ち、流行とは程遠かったし、貴金属も父からプレゼントされるもの以外持っていなかった。

後は、俺の小さい時の服がたくさん出てきて驚いた。
捨てるに捨てられなかったのだろう。
生地は上質なのでこれらも寄付に回す。

そうすると、あっけないほどに箪笥の中はすっからかんになった。

「あまりお洋服はお持ちではなかったんですね」
侍女長が、指示を与えながら片付けていく。

「貴金属はどうしようか?父上に渡しても、困るよな。他の王妃に渡すわけにもいかないだろうし......」

少ないといっても、父が寵愛していた妃だけあって、宝石の石はかなり大きいものもある。
普段使いにつかえるようなシンプルなものもあるが、そういう小ぶりの物は細工が丁寧で高価であることがすぐにわかる。
また、ティアラなど寄付するには金額が張りすぎるものもあった。

「未来の奥様にお渡しするのが一番良いかと思います。金具だけ変えても良いでしょうし。ドレスも少し手直しして使っても良いので気に入ったものがあるなら数枚手元に置いてはいかがですか?」

「うーん......どうかな?母親のお古を使ってくれなんてふつうは嫌がるんじゃないかな」

俺は苦笑いするしかなかった。
正直もう少し手元に......そう思った。
だけど、王子の妃候補なんて、金持ちの家の娘ばかりなんだからさ。
こんなドレスきっと見せただけで笑われそうだ。

それなのに、リアがこれを着てくれる姿を想像してしまい、目を閉じて打ち消そうとする。

そんな姿をチラッと見た侍女長は、背筋をピンと伸ばしてニコリともせずに話した。

「差し出がましいようですが、ここにあるものを大切に保管するようにと指示しておられたのは第一王妃様です。
部屋に風を通し、できる限り埃も被らないように、衣服の色落ちもしないように心がけてまいりました。
リリアーナ様は第一王妃の話だと、第三王妃との思い出を大切にしてくれそうな女性と伺っております」

「第一王妃が......ここを?」

俺は考えてもなかったことに驚き、思わず聞き直す。

「はい。第三王妃が亡くなられて、ゲオルク様が困ることがないように教育係や使用人をつけ、周りのものに軽んじられることがないように目を配っておられました。
今日の片付けも、ゲオルク様が何でも捨てるようであれば、一時的な保管場所も提案するようにと仰せです。」

侍女長は、俺が衣服をほとんど寄付してしまうので、あとで後悔しないか心配しているようだった。

「そうか。だが、リリアーナはあくまでも候補なんだ。彼女なら喜んで大切にしてくれそうだけどね。」

教育係や使用人を俺につけてくれたのは、父だと思っていた。
母が亡くなってから、他の王子や姫から軽んじられることがなくなったのは父のおかげだと思っていたのに。

部屋も誰も入らないようにと伝えていたが、それだとカビだらけになってしまっていただろう。
あの時のまま維持してくれていたとは......

だとすれば、父は、亡くなったあと自分の元に来ることも、この部屋で思い出に浸ることもほぼなく、結局俺のことを第一王妃に任せ、自分はまもなくさらに若い妃を、二人も求めて母も俺も顧みなかったことになる。

リアの父親とやってることが変わらないじゃないか

「だ、だが...母と第一王妃は仲が悪かったように思っているが?なぜ?わたしのために?」

俺は動揺を押し殺して、侍女長に聞いてみる。
侍女長も、頷いている。

「当時、最大権力を持っていたのが第一王妃だとしたら、最高寵愛を受けておられたのが第三王妃です。ですから、敵視しならも、作り物ではない美しさに一目置かれていたし、ゲオルク様が軽んじられていないか、いつも、気にされていたのです。
今でも、第三王妃の美しさは、自分たちや若い王妃たちとは比べ物にならないと話されておられますよ」

侍女長は困ったように、だが、母はそれだけの素晴らしい人だったと伝えてくれた。

俺は、片付けられた部屋をゆっくり歩きながら、母と過ごした部屋を見回していた。
思ったより狭かった。
子供の頃には広い空間に思ったのだけど......

「時が経てば見方も変わってくる......か...」

踊り子をしていた母はスタイルは良かったし、美しかった。
さらに、記憶にあるように周りには流されない凛とした強さを持っていた。
それが父である王や王妃たちには、貴族にはない美しさと力強さ、魅力に映ったのだろう。

「メイクも、貴族特有の色白メイクとは違ってたんだよな」

机の上の宝石箱のような入れ物には、母が自ら染料を使って作っていた化粧品が残っていたが、さすがにひび割れたり、カビが生えていた。
その中に、見慣れない容器がある。

「侍女長、この容器に見覚えは?」
俺が聞くと、思い出したように侍女長は少し悲しげな顔をした。

「それは...最後の時の持ち物の中に入っていたものです。
最後に着ていたドレスは、汚れており処分させていただきました。その他の小物は片付けたのですが、良い香りがしましたので化粧品かと思い、入れさせていただきました」

「ああ、そうだったのか。」

カリーナ姉さんが話していたものだな。
それぞれの王妃にプレゼントしたというアレか......
勝手に捨てられないとはいえ、流石に中のものは使えない。
でも、これのおかげで、いろんなことが明らかになったんだしな。

「母が身につけていた小物や化粧品は、もう少しこのまま大切に保管しておくよ」

俺はパタンと化粧品の箱を閉めた。
化粧品や貴金属は片手で持ち運べるほどの大きさだった。
思い出はこんなに小さい──

リアのことも、今ならもっと小さい思い出に変えることが出来るはずだ。
俺は、ぐっと息を呑み込み、心を落ち着かせた。

「侍女長、頼みがある。実はリリアーナとは上手くいっていないんだ。第一王妃に、俺の縁談相手を探してもらえるようにつたえてくれないか?」

そう伝えた俺の言葉を聞いた侍女長は

「えっ?今、今なんて?」

と思わず聞き返し、動揺を隠せないようだった。
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