【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶

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23聖女の祈り

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あんなに空をブンブンと飛んでいる民族がいるのに、ここでわたしに与えられたものはまさかの馬車??

《うわーー!揺れる!気分悪い!お尻痛いよー!!》

「カラドリウス様がされたことと同じことを伝統的に行うことに意味があるのよ」

聖女課がわざわざ馬車を準備させる意味がわからない。
みんなみたいに空中バイクに2ケツするとか、羽つけて飛んでいこうよ!!

だが、空を飛ぶ時も馬には羽がついている。
その、馬にぶら下がって、私がいるキャビンはぶんぶん揺れる揺れる。
もはやジェットコースターよ!

ひーーーっ!!!

海を渡る時も、なぜか馬。
犬かきのようにして馬が泳ぐ中、水こそ入ってこないが馬と一緒にぷかぶか船のように引っ張られるキャビン。

そして、陸。
馬はまさかの犬ぞり状態。
馬が一気に増殖する。
一頭の馬は十頭に、十頭の馬は二十頭に...
そしてーーー

猛スピードで走る走る。
それに引っ張られるキャビン......

吐き気、嘔吐のレベルを超えている。
キャビンに誰もいないのがせめてもの救い。
うえーーーっ!嘔吐袋をひたすら取り出す。

まさかの水陸空両用馬...
異世界なんでもありすぎじゃない?

しかもーーー

「聖女様、お疲れではありませんか?すみません、強行日程なもので」

馬車なんて使うから強行日程になるのだ。

だが、一旦忘れて、そんなことはどうでもいい。
その馬車を守っているのが、ガルーダとは思わなかった。
本日聖女をお守りするのは私だと言われた時には、唯一ヴェールから出ている目が挙動不審になったわよ。

もう詰んだ...いくらなんでもばれるでしょ

そう思ったのに、思い込みの威力の激しさよ。

バレてない!!
ガルーダも周囲もあんなにシームルグのそっくりと騒いでいたのに気づかない。
さすがに声を出せば気づかれるだろうから、首を横に振り、大丈夫とアピールしながら、指を合わせて手を組んでいく。

「ありがたい。みんなの士気も高まります。今日は夜が来て初めての巡回ですからみんなの不安もピークなのです。聖女様のいつになく気合いを感じて身が引き締まる思いです」

ガルーダは丁寧にお礼をする。
元々、シームルグではないと言った時も早めに警戒を解いてくれたのは彼だし、根はいい人なのだろう。
そんないい人をここで騙すのは本当に心苦しい。

お願いだから何事もありませんようにーーー

そう祈るぐらいしか自分には方法がないのだ。

◇◇◇

今回、私が行く地域はこの世界の北側。
北は夜が来るのが早く、ソラリクスの昼が元々届きにくいのだという。そのため、住んでいる人は少なく、土地も痩せ衰えているという。

馬車で第一の祈祷場所に到着する。
わたしがヨレヨレになりながら馬車から降りると、馬もやっと休めたのだろう。
ガブガブお水を飲み、馬の交代が行われていた。
わたし以上に空を海を陸を駆け巡った馬の方が大変だったはずだ。

大変だよ。絶対馬車はみんなの負担を増やすだけだ。

わたしは、ジェスチャーで触れてもいいか兵に聞き、OKをもらってそっと馬の首を撫でる。
美味しいおやつをもらっておくれ、ごめんね。
撫でると馬は耳を立てて顔をぐりぐり押し付けてくる。
どうやら甘えん坊だ。あっやばい!ヴェールが外れてしまう。
小さい声で「ごめんね、ありがとうね」そう呟いて、早く馬も疲れが取れるように祈る。

伝統を守り続けている聖女たちにぽっと出の時渡りの私が馬車はやめろとか言えない。
かといって、自分どころか他の聖女の祈祷にすら意味がないのよ。
それなのに、さらにこれだけみんなにも馬にも追加の負担をかけさせるのよね。

なんの力もないけど、せめてみんなを騙している分、真面目に心からみんなの無事を祈ろう。

ゆっくり祈祷場所に立つとそこには石で作った祭壇と城にいた時とは違うひんやりとした風が感じられる、
まばらに立つ家や田畑、痩せ細った動物が見える。


この土地が大きな危害を加えられることもなく、大きな病気が流行ることもなく、豊かな土壌になりますように。

目を閉じて、冷たい風が吹く中、どのくらい祈ればいいのかわからない。
聖女たちはそれっぽい踊りも加えるらしいが、そんなことをしたらバレるので動きは最小限にしろとジズから言われている。

ただ、祈るしかない。

ちょうど祈り始めた頃、太陽が雲の影から出てきて暖かな空気になったのも良かったのだろう。

「おお、光が出てきたぞ」
「風が暖かくなってきたな」

そう囁く声が耳に入る。
ごめんね、その効果はわたしとは無関係。
ただ、雲の影から日差しが出ただけに過ぎないのよ。
そう思い目を固く閉じたまま、必死に祈る。

冷たかった風が、日が出たことでほわほわと暖かくなってきて、すっかり日が上がったところでわたしは目を開ける。
すると、夜露に濡れたまま乾いていなかった土地が、日差しを浴びてキラキラ光っているのを目の当たりにする。

「うわぁー!!これが聖女の力か」
どこからともなく声が聞こえて、ますます罪悪感に押しつぶされそうになり、そそくさと馬車のキャビンに戻る。

「聖女様、手が震えておられますが大丈夫ですか?」

馬車に乗る時に手を貸してくれたガルーダが、心配そうにこちらを見ている。
わたしは、自分が予想外にダメージを受けていることにハッと気づき、思わず震えを止めようと、自分の手で震える手を握りしめた。
そして、大丈夫であるとガルーダに向けてコクコクうなずく。

ガルーダは怪訝な顔をしていたが、
「この後は、討伐隊が森を捜索予定です。聖女様は、森の入り口で我らの身の安全の祈祷をよろしくお願いします」
と頭を下げて去っていく。

みんなが、感謝すればするほど、こころが痛すぎるわ。

私は頼れる人もおらず、どうすれば詐欺の片棒を担ぐことから回避できたのかしらと泣きたくなってきた。

ーーー

ガルーダが伝えてきたように、そこから馬車は猛スピードでさらに奥地に向かっていく。
討伐隊が急ぐ気持ちもわかる。
今までならば一日中昼だったこの土地も夜を迎える。どんな魔獣が出るかわからないから森を捜索するのに、夜が近づけば近づくほど見たことがない危険な魔獣と遭遇する危険性が高くなるのだ。

それも、聖女がいなければもっと早くたどり着けるのにーー

揺れが激しいなんてわがままは言っていられない。
それでも、吐き気に苛まれながら馬車は猛スピードで走っていく。
もしかしたら、多少浮いているのかもしれない。
そのぐらい揺れは激しかった。

どのくらい走ったのか?
やがて止まった先には、もう民家も田畑もない。
まだ昼にも拘わらず、森の先に光が見えない、そんな森の入り口に聖女の祈祷用のスペースが置かれる。

そこには地面にも拘わらず絨毯が敷かれ、自分のために接待をする兵まで配備される。

なんでここまで聖女に手厚いの??

わたしはヴェールの下で険しい顔つきになるのを感じていた。ソラリクスがみんなから崇められるのはわからないでもない。
わたしの行動どころかみんなの行動を全て把握しているような、あの人がこの世界を作っているという感じがあるからだ。
でも、聖女は??なんで神と同じような扱いになって、こんなにチヤホヤされるの?
聖女シスターズはこれが当たり前だと思っているのだろうか?いや、兵たちはこれで不満がないのだろうか?

わたしは、与えられた環境に対して遠慮することもできず与えられた絨毯の上で祈祷を始める
兵たちも、先ほどと違いほとんど会話がない。
表情も固く、ガルーダの指揮のもとみんな隊列を乱さず森に入っていく姿をわたしはただ見守りながら、みんなの無事を祈るしかなかった。

だが、それから予想外のことが起こってしまうことを私は予期していなかったのだ。

夜が来るーーそれはソラリクスのいうとおり当たり前のことであっても、夜を忘れた500年の間に明らかに止まってしまった文明や習慣による弊害が、じわじわとこの世界の住民を襲っていくのだった。







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