48 / 102
第2部 勤労令嬢、恋をする - 第1章 勤労令嬢と留学生
第9話 ある令嬢の手記
==========
シェリンガム暦1853年1月20日
今日は『魔力機関車』が走る鉄道の開通記念式典が開かれた。もちろん私も出席したわけだけども。どうにも納得できないことが二つばかりあった。
一つ目は、男性と女性で席が分かれていたことよ!
各家門の当主や令息方は前、夫人や令嬢たちは後ろの席。この国は、どうしてこうも女性の地位が低いのかしら。彼らはいつだって淑女を優先してくれるけど、そんなものは見た目を良くするための手続きに過ぎないんだわ。
二つ目は、ジリアン・マクリーン嬢まで後ろの席に座らせたことよ!
この1年で『魔石炭』の研究が飛躍的に進んだのは、彼女の助力があったからこそ! それなのに!
私が公爵位を継いだら、真っ先に改革してやるんだから!
==========
1月21日
テオバルト・マルコシアス侯爵。昨日の式典でも見かけたけれど、本当に美しい人だわ。
それにしても、あんなに堂々と王立魔法学院に乗り込んでくるとは。何かを企んでいるのは間違いないけれど……。
よりにもよって、ジリアン嬢を口説くだなんて!
だからこそ、彼の目的が分からないわね。ジリアン嬢はマクリーン侯爵家の後継者で、確かに国にとっての重要人物だわ。だけど、マクリーン侯爵は現在の議会で重要な位置にいるということもない。
近づくなら、もっとやりやすい令嬢が他にもいたはずなのに。私に近づいてきたと言うなら、まだ分かるわ。お父様は大蔵卿だもの。それなのに……。
気をつけておかなきゃ。
==========
1月28日
今日は、とてつもなく疲れたわ。
お祖父様とテオバルトが接触しないように、気をつけていたけど。授業じゃ仕方ないわよね。まさか、留学生に『この授業は受けるな』なんて言えないし……。
とはいえ、なんとか無事に終えられてよかった。
彼の精霊の魔法はすごかった。貴重なものを見せてもらえたわ。
それにしても、……ジリアン嬢は正真正銘、武人の子ね。
刃を交わして、はじめて友情が芽生えるだなんて。こういうの、なんていうんだっけ? 脳筋?
テオバルトも同類。彼には、本当に裏などないのかもしれないわね。
==========
2月1日
テオバルトが魔法学院に来て2週間も経っていないけど、すっかり馴染んでしまったわ。相変わらずジリアン嬢の尻ばかり追いかけているけれど。
今日も彼女の護衛騎士に睨まれて撤退していたわね。まったく、懲りないというか、なんというか。
==========
2月7日
彼、ちょっとかわいそうだったかしら。
そんなことないわ。ジリアン嬢を放っておいたうえ、他の女との婚約話が噂になるだなんて。最低よ。
彼の婚約話以外にも、あっちこっちで不穏な噂があるし。
……こんなドロドロした世界、ジリアン嬢には似合わないわ。
彼女には、ただ朗らかに笑っていてほしい。その才能を遺憾なく発揮して、人々に希望をもたらす。そうやって、ただ明るい道を歩いていってほしい。
たぶん、彼も同じことを願っているんだわ。だから、彼女には何も話さないんでしょうね。そんな不器用だけど優しい彼だから、もしかしてジリアン嬢を任せられるんじゃないかって思ってたけど。
こんな不甲斐ない男だとは思わなかったわ!
==========
2月25日
ジリアン嬢が、ほとんど登校しなくなって2週間以上経つ。体調が悪いということだけど、本当のところは……。
マルコシアス侯爵は相変わらず楽しそうに学院生活を送っているけれど、少し寂しそう。ジリアン嬢がいないからといって他の令嬢に粉をかける様子もないし。
……やっぱり、本気だったのかしら?
もうすぐ春、ジリアン嬢の誕生日ね。
今年はこんな状況だから、パーティーはないかも。それなら、プレゼントだけでもお送りしなくちゃ。
今年は、何を贈ろうかしら。
第1章 完 To be continued...
---------------------------------------
第2部 勤労令嬢、恋をする - 第1章 勤労令嬢と留学生
これにて完結です!
次話からは、第2章 勤労令嬢と社交界 が始まります!
1年前、ジリアンの異母姉妹であるモニカ・オニール嬢に『黒い魔法石』を与え、ジリアンを殺させそうとした事件。その黒幕と目されるハワード・キーツが、再びジリアンの前に……!
ジリアンの潜入捜査の行方は?すれ違ったジリアンとアレン、そしてテオバルトの恋はどうなる?
波乱万丈の第2章にも、乞うご期待!
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした