愛の証明

月岡夜宵

文字の大きさ
5 / 16

5◇忠告◇

しおりを挟む
「そんな哀れな坊やに忠告さ。今から言うことをよくお聞き。賢い子なら助かるし、愚かな人なら助からない」

 魔女は再び鼻唄混じりに告げた。

「そののろいはね、好きな人に永遠に愛されなくなるまじないだよ。悪循環や負の連鎖ってのは知ってるかい? その呪いを受けた日から恋さえしなければアンタはそこまで老いることはなかった。逆に恋に落ちる程、相手がアンタを受け入れられなくなる容姿に変化していくのさ。最終的には――化け物になったっていう例もあるんだよ。いひひひ」

 つまり、この老化は、体を蝕む呪いは止まらないということか? 話なんてまともに聞くんじゃなかった。それじゃあ方法なんて無いに等しいじゃないか。

「おや? その顔……気付いたみたいだね。そうさ、軽はずみな恋ならそもそも呪いはそこまでの効果を発揮しない。本気である程に、呪いはアンタの生命力を奪って加速していくんだ。さぁ、楽しくなってきたじゃないか。化け物になるのが先か、耐えきれなくなるのが先か。どちらになるか楽しみだねぇ。風の便りを楽しみに待ってるよ。あたしゃね」

 そしてやって来た時と同じように、忽然こつぜんと魔女は帰っていった。


 猶予は残されていない。俺に成すべき方法も残されていない様子。
 化け物になんてなりたくない。醜悪な獣に落ちるなんてごめんだ。

 それでも、この恋心は消せない。いくら振り払おうとしても、エルメスのあの顔が思い出される。

 最初に傷に触れた時の、事故のような接触。悲しそうに揺れる瞳は次の瞬間、驚きに溢れた。

『どうして……?』

 その時の「どうして」はずっと疑問だったが、この前の会話で判明した。あの傷痕が、彼を苦しめていた。それに触れる俺に彼は幻想を見たのだろうか?
 ありもしない、幻を。
 その感情の正体までは推測出来なかった。

 
 俺が彼の傷に触れられるのは、羨ましかったから。確かに古傷でだいぶ損なわれている外見だが、それでもエルメスは美しい。傷になんか負けないぐらい。その若さが、美貌が、俺は欲しい。手に届かないものを羨んでいるが故に、俺は触れられるのだ。
 実に邪な理由だと思う。俺だって、昔の俺なら他の人々と同様に、あの傷も嫌悪したかもしれない。彼を見もしないで遠ざけただろう。


 化け物になる前に、俺は覚悟を決めなければいけなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

アケミツヨウの幸福な生涯【本編完結】

リラックス@ピロー
BL
ごく普通の会社員として日々を過ごしていた主人公、ヨウはその日も普通に残業で会社に残っていた。 ーーーそれが運命の分かれ道になるとも知らずに。 仕事を終え帰り際トイレに寄ると、唐突に便器から水が溢れ出した。勢い良く迫り来る水に飲み込まれた先で目を覚ますと、黒いローブの怪しげな集団に囲まれていた。 彼らは自分を"神子"だと言い、神の奇跡を起こす為とある儀式を行うようにと言ってきた。 神子を守護する神殿騎士×異世界から召喚された神子

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...