愛の証明

月岡夜宵

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5◇忠告◇

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「そんな哀れな坊やに忠告さ。今から言うことをよくお聞き。賢い子なら助かるし、愚かな人なら助からない」

 魔女は再び鼻唄混じりに告げた。

「そののろいはね、好きな人に永遠に愛されなくなるまじないだよ。悪循環や負の連鎖ってのは知ってるかい? その呪いを受けた日から恋さえしなければアンタはそこまで老いることはなかった。逆に恋に落ちる程、相手がアンタを受け入れられなくなる容姿に変化していくのさ。最終的には――化け物になったっていう例もあるんだよ。いひひひ」

 つまり、この老化は、体を蝕む呪いは止まらないということか? 話なんてまともに聞くんじゃなかった。それじゃあ方法なんて無いに等しいじゃないか。

「おや? その顔……気付いたみたいだね。そうさ、軽はずみな恋ならそもそも呪いはそこまでの効果を発揮しない。本気である程に、呪いはアンタの生命力を奪って加速していくんだ。さぁ、楽しくなってきたじゃないか。化け物になるのが先か、耐えきれなくなるのが先か。どちらになるか楽しみだねぇ。風の便りを楽しみに待ってるよ。あたしゃね」

 そしてやって来た時と同じように、忽然こつぜんと魔女は帰っていった。


 猶予は残されていない。俺に成すべき方法も残されていない様子。
 化け物になんてなりたくない。醜悪な獣に落ちるなんてごめんだ。

 それでも、この恋心は消せない。いくら振り払おうとしても、エルメスのあの顔が思い出される。

 最初に傷に触れた時の、事故のような接触。悲しそうに揺れる瞳は次の瞬間、驚きに溢れた。

『どうして……?』

 その時の「どうして」はずっと疑問だったが、この前の会話で判明した。あの傷痕が、彼を苦しめていた。それに触れる俺に彼は幻想を見たのだろうか?
 ありもしない、幻を。
 その感情の正体までは推測出来なかった。

 
 俺が彼の傷に触れられるのは、羨ましかったから。確かに古傷でだいぶ損なわれている外見だが、それでもエルメスは美しい。傷になんか負けないぐらい。その若さが、美貌が、俺は欲しい。手に届かないものを羨んでいるが故に、俺は触れられるのだ。
 実に邪な理由だと思う。俺だって、昔の俺なら他の人々と同様に、あの傷も嫌悪したかもしれない。彼を見もしないで遠ざけただろう。


 化け物になる前に、俺は覚悟を決めなければいけなかった。
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