愛の証明

月岡夜宵

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ラスト◇真実の愛◇

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「貴方は僕の前から姿を消した。でも――今度は本当の姿で現れた。僕には最初どうしても受け入れられなかった。でも、貴方と、ルンガお坊ちゃまと過ごすうちに気付いたんです。そっくりというには貴方達は似すぎている、と」
「……っ」
 
 何の準備も出来ていないまま、俺はエルメスの温もりに捕まえられた。嘲って否定することも、怒って拒絶することも出来ないままに。

「ルンガお坊ちゃまは知らなかったでしょうが――僕はずっと貴方を観察していました。そのために、貴方のお母様の申し出を受け入れたんです。貴方が何者かを、突き止める為に」

 声が、出ない。

「ずっと、貴方の気が緩むのを待っていました。そしてその好機はついにやって来た。どうやらものの見事に罠にかかったようですね? 仕掛けたのは、僕ではなく、運命の神様でしょうか」

 動悸がする。俺は、うまく息継ぎも出来なくなっていた。

「お伽話のようには、うまくいきませんね。相手の姿が変っても、愛を貫き真実を見つけ出せる主人公やその周囲が羨ましいと思います。僕には最初に気付けなかった時点で、資格が無い。でも、それでも僕は貴方を愛したい。貴方を愛すこともダメだと禁じられますか? 答えを下さるまで僕は貴方を放しません。絶対に」

 答えられない。だって、俺は――。

「俺は、もうお前からは逃げないよ。いや、逃げられない、が正解か」
「ルンガ様?」
「なんでだろうな。かくれんぼの最中にみつかったような気持ちになるよ。気まずさと、ちょっとの喜び。そんなのがないぜにされた気分だ」
「……喜び?」
「ああ。俺は……――俺はどうやら思い違いをしていたらしい。常々つねづね悲しいとは思っていた。だけど寂しい気持ちだったことには気付けなかった。お前からの別れの言葉で、てっきりけじめはついたと思っていたさ。でも、まだこんなにも湧き上がる感情がある。俺は結局、お前にみつけてもらえなくて、ただ拗ねていただけだったんだな」

 そっと、背後にいるエルメスに視線を合わせる。ついでに、俺を抱き締める手に、そっと触れた。

「人を愛するのに、資格なんてない。また、誰にもそれを邪魔することは出来ない。愛の前にはどんな障害も無関係だから」
「じゃあ……僕は貴方を愛することが許されるんですか?」
「俺には分からない。ただ……その、出来れば、叶うなら、その愛を貫いて欲しい、と、そう俺は思う……ぞ?」
 
 そういえば、気付いたらエルメスの奴は泣いてない。代わりに、穏やかな笑みを浮かべている。

 俺は先ほどの台詞が照れくさくて、顔を伏せた。なんだろう。言ってからどんどん恥ずかしくなってきた。まるで自分から求めて……いるような、匂わせる煮え切らない態度。女々しくて仕方ない。

「僕の生涯を懸けて、貴方を愛することを誓います。いえ、誓わせてください、ルンガ様」










 おとぎ話の中じゃ、魔女は憎めない存在だ。だって彼女達の〝悪意〟からは――最後にかけがえのない幸福がもたらされるから。


 真実の愛を手にした俺は、健やかなる時も病める時も、争い合う時も、自身の持つ全ての日々を彼と過ごしていくのだった。かけがえのない幸福を感じながら。

「ルンガ様!」
「なんだ?」
「僕が一生お傍に付き添いますからね」
「…………勝手にしろ」

 赤面した頬を隠すようにそっぽを向く俺。その隣にはエルメスが。

 こうして、魔女の呪いから始まった恋は愛に変って幕を下ろすのだった。
 
 完
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