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前章 星降る夜(ニュイ・エトワレ)
公認の仲?2
たしかここ最近であったことといえば。
「ねえねえ、リュナちゃん。最近リュカ様となかよしさんねー」
そうだった、三日前、メイドさんたちに話しかけられたことがあったな。
「そうですか?」
僕は小首をかしげて答えた。
「ほんとほんと!」
「おばさんたちも安心したよ。やあっと仲直りしてくれたんだいね!」
微笑ましいだのよかったのと、昔の僕らの様子を思い出しながらメイドさんたちはいう。それはそれとして思い切り強く背中を叩かれて痛かった。
「みればわかるわよ。ふたりの変化。だってほら、顔に書いてある」
「ふひゃ!?」
驚いた。しかし。疎遠になった僕らの関係を腫れ物のようにそっとし、それでいて陰で見守ってくれていた彼女らの祝福ムード。僕もつい嬉しくなってしまった。
なんでもないですよ。
とは言ったものの細かく根掘り葉掘り聞かれてしまい、途中からは聞かれてもないことを話していた自覚はあった。だって嬉しくて仕方なかったし。しょうがないと僕は思って今の今まで片付けていたが……。
「でも結局、リュカぼっちゃんと何があったの?」
「それはその……ええっと……」
蒸気をあげてぷしゅーとうなるやかんのよう。ほてった顔のまま、僕は恥じらいながら答えた。
「パートナーになったんです。リュカ様と」
「なんだってえ!?」
どよめく屋敷内。僕が必死にシーと合図をしても彼女らは叫んでいる。とにかく驚いたようで心臓を抑える妙齢のメイドさん。慌ただしげに水を取りに向かった一人を除いて、みんなが僕を見てくる。
「これは一体何事です」
そこへ、執事長のゴーザさんと庭師のドミニクおじいちゃんが現れた。
彼らに向けて僕が話すまでもなく経緯を興奮げに語るメイドさんたち。おかげで事態を速やかに把握したゴーザさん。ところがその顔は渋いものであった。なんとドミニクおじいちゃんまで目頭を揉んでいる。
「おぼっちゃまと? それはまことですか、ルナ」
きれいに姿勢を変えて僕へと確認をとるゴーザさん。
「はい……」
僕は、なんだか急に悪いことをしている気分になって、ちいさくなって答えた。一応証拠に、街で買ったカラーをよく見えるように晒す。首元をしげしげとながめたゴーザさんは納得したようだが眉間のシワはますます深まる。
(なんで!?)
「ずいぶんおしゃれな首輪だねぇ」
「ばっか、こいつぁチョーカーだろ? まさかぼっちゃんに貰ったんかいな!?」
おばさんメイドは僕と同じように用途不明の輪っかをそう称する。ところが庭師のおじいちゃんは声を荒らげて驚く。興奮した様子で僕に詰め寄るおじいちゃんに、今度ははっきりと僕はうなずいた。
「こらぁたまげたわい……」
「ぴぇぇぇ!? なんで、なんで、ふたりともそんな意味深な反応なのお!?」
「「……」」
「え。現在進行系でなにかやっちゃってるー!?」
腰を抜かしたおじいちゃんと絶叫する僕を華麗に無視してゴーザさんは続けた。
「しかしなぜルナとおぼっちゃまがパートナー関係に? 失礼ながらここ数年そんな浮いた話はなかったかと。むしろ二人の中は冷え切っていたような……?」
(あ、やっぱりそんなに仲悪くみえたんだ……それはそれとしてショック……)
しかし落ち込んでもいられないと僕は理由を語る。
「じつはリュカ様、――……」
「だからみんなにも意見がほしくて。正直僕だけじゃ治療法なんてぜんぜん思いつかなくって……。ねえ、協力してくれる?」
僕は背の高いゴーザさんを中心に彼ら彼女らの顔を見上げて頼む。
みんなの空気が重い。
耐えきれなくて声を発しようとした僕。
そこへ落ちるのは、鬼の目にも涙、ではないゴーザさんの涙だった。
執事長として僕を教育する彼がおいおいと泣く姿にぽかんと口を開けていると、庭師のおじいちゃんに肩を叩かれた。反対の方ではメイドのルイーズねえエナ、新人のミナちゃんが僕に温かなことばをくれる。
「いや。そこまで治ったのはルナのおかげでしょう!? むしろ感謝してるわ」
「よくやったわリュナちゃん! さすが私が見込んだだけのかわいさはある!」
「ルナちゃんすごいです。わたしなんかではリュカ様の不調なんてとてもとても見抜けません」
「ああ、ぼっちゃん……おいたわしや…………」
ゴーザさんはついにはハンカチで鼻水も拭っていた。刺繍のおしゃれなハンカチーフについた汁だが汗だがなんだかわからない液体はともかく。涙ぐむ彼らからのエールで僕は自分がやってきたことが無駄ではなかったのかと改めて思えた。
ついでに、このときの僕にはわからなかったが、みんながみんな知り得なかった情報を得て、ひそかに株を上げているリュカ様であった。
「……しかしこれはどうしたものか」
「なにかありました?」
ゴーザさんが僕をみて頭を振る。まっすぐな目に射抜かれて居心地を悪くしていると、ゴーザさんは背後のみんなに向けて|箝口令《かんこうれい》をしいた。加えて、僕にもこの話をほかではしないようにと釘を刺す。黙ってうなずいた。
「これからはみんなでルナに協力し、おぼっちゃまの快適な睡眠時間を確保するために活動しましょう。リュカ様の快気を願って動く我々を仮に……そうですね、――と名付けましょう。屋敷外の人間にはこの組織名も含めて秘密ですよ。いいですね?」
ゴーザさんの提案を受け、ここに『リュカ坊ちゃまのすこやかなおやすみをお守りし隊』が結成されたのだった!
(そうだそうだ。大きな進展があったなあ)
なーんて、満足げだった僕がダメ出しされるまであと五秒前。
「ねえねえ、リュナちゃん。最近リュカ様となかよしさんねー」
そうだった、三日前、メイドさんたちに話しかけられたことがあったな。
「そうですか?」
僕は小首をかしげて答えた。
「ほんとほんと!」
「おばさんたちも安心したよ。やあっと仲直りしてくれたんだいね!」
微笑ましいだのよかったのと、昔の僕らの様子を思い出しながらメイドさんたちはいう。それはそれとして思い切り強く背中を叩かれて痛かった。
「みればわかるわよ。ふたりの変化。だってほら、顔に書いてある」
「ふひゃ!?」
驚いた。しかし。疎遠になった僕らの関係を腫れ物のようにそっとし、それでいて陰で見守ってくれていた彼女らの祝福ムード。僕もつい嬉しくなってしまった。
なんでもないですよ。
とは言ったものの細かく根掘り葉掘り聞かれてしまい、途中からは聞かれてもないことを話していた自覚はあった。だって嬉しくて仕方なかったし。しょうがないと僕は思って今の今まで片付けていたが……。
「でも結局、リュカぼっちゃんと何があったの?」
「それはその……ええっと……」
蒸気をあげてぷしゅーとうなるやかんのよう。ほてった顔のまま、僕は恥じらいながら答えた。
「パートナーになったんです。リュカ様と」
「なんだってえ!?」
どよめく屋敷内。僕が必死にシーと合図をしても彼女らは叫んでいる。とにかく驚いたようで心臓を抑える妙齢のメイドさん。慌ただしげに水を取りに向かった一人を除いて、みんなが僕を見てくる。
「これは一体何事です」
そこへ、執事長のゴーザさんと庭師のドミニクおじいちゃんが現れた。
彼らに向けて僕が話すまでもなく経緯を興奮げに語るメイドさんたち。おかげで事態を速やかに把握したゴーザさん。ところがその顔は渋いものであった。なんとドミニクおじいちゃんまで目頭を揉んでいる。
「おぼっちゃまと? それはまことですか、ルナ」
きれいに姿勢を変えて僕へと確認をとるゴーザさん。
「はい……」
僕は、なんだか急に悪いことをしている気分になって、ちいさくなって答えた。一応証拠に、街で買ったカラーをよく見えるように晒す。首元をしげしげとながめたゴーザさんは納得したようだが眉間のシワはますます深まる。
(なんで!?)
「ずいぶんおしゃれな首輪だねぇ」
「ばっか、こいつぁチョーカーだろ? まさかぼっちゃんに貰ったんかいな!?」
おばさんメイドは僕と同じように用途不明の輪っかをそう称する。ところが庭師のおじいちゃんは声を荒らげて驚く。興奮した様子で僕に詰め寄るおじいちゃんに、今度ははっきりと僕はうなずいた。
「こらぁたまげたわい……」
「ぴぇぇぇ!? なんで、なんで、ふたりともそんな意味深な反応なのお!?」
「「……」」
「え。現在進行系でなにかやっちゃってるー!?」
腰を抜かしたおじいちゃんと絶叫する僕を華麗に無視してゴーザさんは続けた。
「しかしなぜルナとおぼっちゃまがパートナー関係に? 失礼ながらここ数年そんな浮いた話はなかったかと。むしろ二人の中は冷え切っていたような……?」
(あ、やっぱりそんなに仲悪くみえたんだ……それはそれとしてショック……)
しかし落ち込んでもいられないと僕は理由を語る。
「じつはリュカ様、――……」
「だからみんなにも意見がほしくて。正直僕だけじゃ治療法なんてぜんぜん思いつかなくって……。ねえ、協力してくれる?」
僕は背の高いゴーザさんを中心に彼ら彼女らの顔を見上げて頼む。
みんなの空気が重い。
耐えきれなくて声を発しようとした僕。
そこへ落ちるのは、鬼の目にも涙、ではないゴーザさんの涙だった。
執事長として僕を教育する彼がおいおいと泣く姿にぽかんと口を開けていると、庭師のおじいちゃんに肩を叩かれた。反対の方ではメイドのルイーズねえエナ、新人のミナちゃんが僕に温かなことばをくれる。
「いや。そこまで治ったのはルナのおかげでしょう!? むしろ感謝してるわ」
「よくやったわリュナちゃん! さすが私が見込んだだけのかわいさはある!」
「ルナちゃんすごいです。わたしなんかではリュカ様の不調なんてとてもとても見抜けません」
「ああ、ぼっちゃん……おいたわしや…………」
ゴーザさんはついにはハンカチで鼻水も拭っていた。刺繍のおしゃれなハンカチーフについた汁だが汗だがなんだかわからない液体はともかく。涙ぐむ彼らからのエールで僕は自分がやってきたことが無駄ではなかったのかと改めて思えた。
ついでに、このときの僕にはわからなかったが、みんながみんな知り得なかった情報を得て、ひそかに株を上げているリュカ様であった。
「……しかしこれはどうしたものか」
「なにかありました?」
ゴーザさんが僕をみて頭を振る。まっすぐな目に射抜かれて居心地を悪くしていると、ゴーザさんは背後のみんなに向けて|箝口令《かんこうれい》をしいた。加えて、僕にもこの話をほかではしないようにと釘を刺す。黙ってうなずいた。
「これからはみんなでルナに協力し、おぼっちゃまの快適な睡眠時間を確保するために活動しましょう。リュカ様の快気を願って動く我々を仮に……そうですね、――と名付けましょう。屋敷外の人間にはこの組織名も含めて秘密ですよ。いいですね?」
ゴーザさんの提案を受け、ここに『リュカ坊ちゃまのすこやかなおやすみをお守りし隊』が結成されたのだった!
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なーんて、満足げだった僕がダメ出しされるまであと五秒前。
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