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風に揺られる花
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長谷川 隆一。それが俺の恋する相手。
高校二年の春、初めて俺は隆一と出会った。その出会いは衝撃的だった。人に言わせればただの一目惚れだろうが、同じクラスの中であいつだけが際立った存在感を放っていたのだ。いまだに記憶に新しい。
俺はサッカー部の一部員で、あいつはバスケ部のエース。運動部同士だが、種目が違うことで逆に気安い仲になった。ライバル関係になって教室内で争い、喧嘩に発展する……なんてこともなく。
勉強面だって頭のデキが違いすぎて争うどころか追いつくことすら難しい。むしろ丁寧に試験範囲の攻略法を教えてくれる隆一だから、尊敬こそして憎むはずなどない。
クラス内で仲良くなり、約束をしてよく一緒に帰った。休日には互いの家を行き来。県外まで遠出することも多々あった。実に楽しい高校生活は、隆一がいたから送れたといっても過言ではないと思う。
大学でも一緒に居たい一心で、必死で勉強した。教師からは志望校を変えるように何度も説得された。両親だってハラハラしながら見守っていた。無茶をただひたすら貫いた。ただただ隆一と同じ国立の大学に行きたくて。受験して、見事合格を勝ちとり、キャンパスライフも一緒に歩んだ。隣に座って講義を受ける時も、カフェで他愛ないトークに花を咲かせる時も、いつだって、俺の心の中心を占めていたのは隆一だった。その頃には、 本当に、気の置けない友人という立ち位置になっていた。それがこんなに、歯がゆいなんて。
そして現在。俺は社会人として勤めだして半年。ようやく社会の大変さとやらが身に染みて理解できるようになり、会社にも慣れた。俺は一介のサラリーマンで営業を担当している。今日も黒のスーツの上下にピカピカに磨いた革靴を履いて、勤め先から出立した。
俺は隆一に対して少女漫画の如き一目惚れをした。最初はそれと『恋』が上手く結びつかなかったが。だから最初は胸に花があっても、感情が、頭が、ついていかなかった。調べて恋花現象だと知り、どこかの女子に恋をしたのかな? なんて思った程だ。
世間一般で言う隆一のことが本当の意味で好きだと気付いたのは、俺に花が咲いて、体育の授業前の着替えでそれが見つかった時。
クラスの男連中にからかわれる中、あいつが庇ってくれたのがきっかけだった。しつこく相手が誰なのかと聞いてくるクラスメイト。彼らも悪気があったわけじゃないんだろうけど、俺は恋花の相手が分からず答えに窮していた。そんな俺の前に立ち塞がって、「いい加減にしろよ。誠にだって秘密にしたいことぐらいあって当然だろ!」と吠えた隆一。友達思いな姿。改めて惚れてしまったのは、その瞬間だった。
次には「大丈夫か?」なんて心配されて。どノーマルだったはずの俺だが、その言葉が本気で嬉しくて一気に恋に落ちた。そして泣いた。次第に募る思いを自覚して。ようやく隆一のことが好きなんだと理解したことで、腑に落ちた解答は。その頃には不毛な恋であることを痛感していたから。
――だって仕方ないじゃないか。この恋はどう足掻いたって報われない。
俺が好きになったのは男で、しかも格上の釣り合わない相手。
『同性婚』という言葉もある。それが可能な地域もこの国には存在する。だがまだまだ認められて数年しか経っていない法律だ。周囲で同性のカップルなんてものは見たことがない俺だった。実感の湧かない世界である。
俺はこの抱えている想いをいつか昇華してしまいたいと踏んでいた。粉々に消し去ってしまえたらどんなに楽だろうか、と。だが実際には叶わない。俺はこれを抱えているだけで手いっぱいだった。この思いを親友に告げることも、永遠に秘密にすることも、どっちも耐えられないと思う。決意の弱さに嘆くしかない。
あいつの目の前で暴露してしまいたい内心と、そんなのが原因で嫌われて縁を切られたら堪らないと思う内心。ひどく脆い俺の心中は、いつだって崩壊寸前であった。
高校二年の春、初めて俺は隆一と出会った。その出会いは衝撃的だった。人に言わせればただの一目惚れだろうが、同じクラスの中であいつだけが際立った存在感を放っていたのだ。いまだに記憶に新しい。
俺はサッカー部の一部員で、あいつはバスケ部のエース。運動部同士だが、種目が違うことで逆に気安い仲になった。ライバル関係になって教室内で争い、喧嘩に発展する……なんてこともなく。
勉強面だって頭のデキが違いすぎて争うどころか追いつくことすら難しい。むしろ丁寧に試験範囲の攻略法を教えてくれる隆一だから、尊敬こそして憎むはずなどない。
クラス内で仲良くなり、約束をしてよく一緒に帰った。休日には互いの家を行き来。県外まで遠出することも多々あった。実に楽しい高校生活は、隆一がいたから送れたといっても過言ではないと思う。
大学でも一緒に居たい一心で、必死で勉強した。教師からは志望校を変えるように何度も説得された。両親だってハラハラしながら見守っていた。無茶をただひたすら貫いた。ただただ隆一と同じ国立の大学に行きたくて。受験して、見事合格を勝ちとり、キャンパスライフも一緒に歩んだ。隣に座って講義を受ける時も、カフェで他愛ないトークに花を咲かせる時も、いつだって、俺の心の中心を占めていたのは隆一だった。その頃には、 本当に、気の置けない友人という立ち位置になっていた。それがこんなに、歯がゆいなんて。
そして現在。俺は社会人として勤めだして半年。ようやく社会の大変さとやらが身に染みて理解できるようになり、会社にも慣れた。俺は一介のサラリーマンで営業を担当している。今日も黒のスーツの上下にピカピカに磨いた革靴を履いて、勤め先から出立した。
俺は隆一に対して少女漫画の如き一目惚れをした。最初はそれと『恋』が上手く結びつかなかったが。だから最初は胸に花があっても、感情が、頭が、ついていかなかった。調べて恋花現象だと知り、どこかの女子に恋をしたのかな? なんて思った程だ。
世間一般で言う隆一のことが本当の意味で好きだと気付いたのは、俺に花が咲いて、体育の授業前の着替えでそれが見つかった時。
クラスの男連中にからかわれる中、あいつが庇ってくれたのがきっかけだった。しつこく相手が誰なのかと聞いてくるクラスメイト。彼らも悪気があったわけじゃないんだろうけど、俺は恋花の相手が分からず答えに窮していた。そんな俺の前に立ち塞がって、「いい加減にしろよ。誠にだって秘密にしたいことぐらいあって当然だろ!」と吠えた隆一。友達思いな姿。改めて惚れてしまったのは、その瞬間だった。
次には「大丈夫か?」なんて心配されて。どノーマルだったはずの俺だが、その言葉が本気で嬉しくて一気に恋に落ちた。そして泣いた。次第に募る思いを自覚して。ようやく隆一のことが好きなんだと理解したことで、腑に落ちた解答は。その頃には不毛な恋であることを痛感していたから。
――だって仕方ないじゃないか。この恋はどう足掻いたって報われない。
俺が好きになったのは男で、しかも格上の釣り合わない相手。
『同性婚』という言葉もある。それが可能な地域もこの国には存在する。だがまだまだ認められて数年しか経っていない法律だ。周囲で同性のカップルなんてものは見たことがない俺だった。実感の湧かない世界である。
俺はこの抱えている想いをいつか昇華してしまいたいと踏んでいた。粉々に消し去ってしまえたらどんなに楽だろうか、と。だが実際には叶わない。俺はこれを抱えているだけで手いっぱいだった。この思いを親友に告げることも、永遠に秘密にすることも、どっちも耐えられないと思う。決意の弱さに嘆くしかない。
あいつの目の前で暴露してしまいたい内心と、そんなのが原因で嫌われて縁を切られたら堪らないと思う内心。ひどく脆い俺の心中は、いつだって崩壊寸前であった。
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