2 / 45
肩の傷
しおりを挟む
アレックスが目を覚ましたのは、薬草の香りがする部屋のベッドの上だった。
「俺は確か・・・」
アレックスは、確かめる様に肩に手を当てた。
「いてっ・・・」
アレックスは、痛みに悶絶する。そして痛みが和らぐのを待ってから、深く息をついた。
「どうやら俺は、助かった様だな・・・」
アレックスは、自分の現状を素早く理解すると、ベットの中で脱力した。そして、自分がいるベットの周りに目をやる。
そこは、質素だが、よく整えられた部屋であった。
壁には、いくつもの棚と引き出しがあり、部屋の天井には、沢山の草花が吊るされている。部屋の中央には、机と椅子があった。机の上には、壺とすり鉢が乗っている。
「そう言えば、薬草の匂いがしていたな・・・」
アレックスは、ゆっくりと傷に響かないように体を起こし、ゆっくりと左肩に手を沿わし、視線を落とす。
「手当・・・?!」
負傷した左肩には、白い包帯が綺麗に巻かれていた。どうやら、誰かに助けられたらしいと、アレックスは悟った。
その時。
アレックスは、部屋の唯一の扉の向こうに気配を感じて身構えたが、それと同時に左肩に激痛が走る。
「っつう・・・」
その痛みで一瞬、意識が遠ざかりそうになったが、アレックスは何とか持ちこたえると、扉を睨む。
すると、扉の向こうから、
「やめてくれないか?その目は恩人に向けるものではない・・・」
と、若い娘の声が聞こえると、ゆっくりと軋んだ音と共に扉が開いた。
そこには、豊かな黒髪と猫の瞳の様にキラキラと蜜色に輝く瞳の娘が、静かに立っていた。
「君は・・・」
アレックスは、少し驚いた様に呟いた。
「私は、シェヘラ。マジェルスの森の入り口で薬草を取っていたところで、あんたが森から傷を負って出てきたのよ。それを私が村まで連れてきたのよ。」
シェヘラと名乗った娘は、部屋の中に入ってくると、椅子に座った。そして、アレックスをしげしげとみるなり、
「何故マジェルスの森から出てきたの?!」
と、言った。
その態度は、見かけによらず堂に行ったものだった。アレックスは、あまり話したく無いように見えた。しかし、シェヘラの無言の圧力たるや、凄まじいモノがあった。仕方なく、ベットの上に座ったまま、アレックスは口を開いた。
「俺はファントリアの皇太子アレックス。マジェルスの森に行ったのは、『黒い魔女』に会いに来たからだ・・・」
アレックスがそう言い切ると、シェヘラは、腹を抱えて笑い出した。
「『黒い魔女だって?! あんた、正気かい?」
アレックスは、シェヘラの笑いが落ち着くのを待つと、
「至って正気だ。」
と、呟いた。
「この度・・・兄帝から・・・勅命が、私に下されたのだ・・・」
アレックスが声を出すと、肩の傷がズキズキと痛み出す。しかし、日頃から鍛えていたお陰で、何とか話を続けられた。
「それには・・・『黒い魔女』から祝福を受け、その証拠を持ち帰れと・・・もちろん、魔の森から正気で戻れた者はいないと聞いている。それに『黒い魔女』に会った者が・・・いるなんて、聞いたことが無い。しかし、皇帝である兄上の・・・兄上の命に背く事は出来ない。それで、1人でマジェルスの森に入ったのだ。だが・・・森の中で、黒い獣に襲われて・・・」
アレックスは、そこまで言うと、一息ついた。
シェヘラは、その話を黙って聞いていた。そして、話を聞き終わると無表情のまま椅子から立ち上がり、アレックスの目の前まで近寄って来た。
「あんた、死にかけていたんだよ?」
そう言うと、アレックスの左肩に人差し指をつぃっと滑らせた。
「っあぁ・・・!?」
アレックスは、激痛に見舞われた。それを無表情にシェヘラは見つめた。
「この傷は、黒い獣の爪でやられたもの。私があそこであんたに出くわさなければ、あんた、死んでたんだよ?」
「確かに。君には感謝するよ・・・シェヘラ。俺もまだ、死にたい・・・訳では無いのでね・・・」
アレックスは、痛みを我慢しながら礼を言った。
すると、シェヘラはクルリと向きを変え、ゆっくりと元来た扉の前へと歩いて行った。そして、
「傷が癒えるまでは、ここで養生するがいいさ。もうすぐ、夕食だ。それまで横になってあるといい。」
そう言い残すと、シェヘラは、扉の向こうの部屋に行ってしまった。
そしてアレックスは、まるでシェヘラの目に見えない力から解放されたかの様に、ベッドに倒れこむと、そのまま意識を手放した。
「俺は確か・・・」
アレックスは、確かめる様に肩に手を当てた。
「いてっ・・・」
アレックスは、痛みに悶絶する。そして痛みが和らぐのを待ってから、深く息をついた。
「どうやら俺は、助かった様だな・・・」
アレックスは、自分の現状を素早く理解すると、ベットの中で脱力した。そして、自分がいるベットの周りに目をやる。
そこは、質素だが、よく整えられた部屋であった。
壁には、いくつもの棚と引き出しがあり、部屋の天井には、沢山の草花が吊るされている。部屋の中央には、机と椅子があった。机の上には、壺とすり鉢が乗っている。
「そう言えば、薬草の匂いがしていたな・・・」
アレックスは、ゆっくりと傷に響かないように体を起こし、ゆっくりと左肩に手を沿わし、視線を落とす。
「手当・・・?!」
負傷した左肩には、白い包帯が綺麗に巻かれていた。どうやら、誰かに助けられたらしいと、アレックスは悟った。
その時。
アレックスは、部屋の唯一の扉の向こうに気配を感じて身構えたが、それと同時に左肩に激痛が走る。
「っつう・・・」
その痛みで一瞬、意識が遠ざかりそうになったが、アレックスは何とか持ちこたえると、扉を睨む。
すると、扉の向こうから、
「やめてくれないか?その目は恩人に向けるものではない・・・」
と、若い娘の声が聞こえると、ゆっくりと軋んだ音と共に扉が開いた。
そこには、豊かな黒髪と猫の瞳の様にキラキラと蜜色に輝く瞳の娘が、静かに立っていた。
「君は・・・」
アレックスは、少し驚いた様に呟いた。
「私は、シェヘラ。マジェルスの森の入り口で薬草を取っていたところで、あんたが森から傷を負って出てきたのよ。それを私が村まで連れてきたのよ。」
シェヘラと名乗った娘は、部屋の中に入ってくると、椅子に座った。そして、アレックスをしげしげとみるなり、
「何故マジェルスの森から出てきたの?!」
と、言った。
その態度は、見かけによらず堂に行ったものだった。アレックスは、あまり話したく無いように見えた。しかし、シェヘラの無言の圧力たるや、凄まじいモノがあった。仕方なく、ベットの上に座ったまま、アレックスは口を開いた。
「俺はファントリアの皇太子アレックス。マジェルスの森に行ったのは、『黒い魔女』に会いに来たからだ・・・」
アレックスがそう言い切ると、シェヘラは、腹を抱えて笑い出した。
「『黒い魔女だって?! あんた、正気かい?」
アレックスは、シェヘラの笑いが落ち着くのを待つと、
「至って正気だ。」
と、呟いた。
「この度・・・兄帝から・・・勅命が、私に下されたのだ・・・」
アレックスが声を出すと、肩の傷がズキズキと痛み出す。しかし、日頃から鍛えていたお陰で、何とか話を続けられた。
「それには・・・『黒い魔女』から祝福を受け、その証拠を持ち帰れと・・・もちろん、魔の森から正気で戻れた者はいないと聞いている。それに『黒い魔女』に会った者が・・・いるなんて、聞いたことが無い。しかし、皇帝である兄上の・・・兄上の命に背く事は出来ない。それで、1人でマジェルスの森に入ったのだ。だが・・・森の中で、黒い獣に襲われて・・・」
アレックスは、そこまで言うと、一息ついた。
シェヘラは、その話を黙って聞いていた。そして、話を聞き終わると無表情のまま椅子から立ち上がり、アレックスの目の前まで近寄って来た。
「あんた、死にかけていたんだよ?」
そう言うと、アレックスの左肩に人差し指をつぃっと滑らせた。
「っあぁ・・・!?」
アレックスは、激痛に見舞われた。それを無表情にシェヘラは見つめた。
「この傷は、黒い獣の爪でやられたもの。私があそこであんたに出くわさなければ、あんた、死んでたんだよ?」
「確かに。君には感謝するよ・・・シェヘラ。俺もまだ、死にたい・・・訳では無いのでね・・・」
アレックスは、痛みを我慢しながら礼を言った。
すると、シェヘラはクルリと向きを変え、ゆっくりと元来た扉の前へと歩いて行った。そして、
「傷が癒えるまでは、ここで養生するがいいさ。もうすぐ、夕食だ。それまで横になってあるといい。」
そう言い残すと、シェヘラは、扉の向こうの部屋に行ってしまった。
そしてアレックスは、まるでシェヘラの目に見えない力から解放されたかの様に、ベッドに倒れこむと、そのまま意識を手放した。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる