蜜色の瞳のシェヘラ

よしき

文字の大きさ
22 / 45

蜜色の瞳

しおりを挟む
    アレックスが魔の森マジェスマルからファントリアの首都ブリリアント・シュロスへと帰還したのは、旅立ってから一年後の事である。
  既に、皇帝ファービヒトの戦争に明け暮れている祭り事に、人々は疲れ果てていた。
  そんな折、行方不明と噂されていたアレックスが魔の森マジェスマルから生還したと言う吉報が国中を駆け巡った。しかも驚くことに、アレックスが伝説の魔女『黒い魔女シュバルツ ヘクセ』を退け、神々より守護シュッツを与えられたと言う尾ひれまで付いた噂は、瞬く間にファントリアの各地の方の有力者のみならず、民達からも熱烈な支持を受けたのだ。
  始め、皇帝とそれを取り巻く有力貴族達は、アレックスを反逆者として扱おうと兵を招集したのだが。
守護シュッツを持つアレックス殿下こそ、神に選ばれし者』
と、ブリリアント・シュロスの大神殿においても神託がなされたため、有力貴族も次第にアレックスを認めるようになっていった。
  最終的には、皇帝であるファービヒトは、それまで自分のご機嫌伺いをしていた有力貴族達に謀反を起こされ、ブリリアント・シュロス近郊の離宮へと幽閉されてしまったのである。
  こうしてアレックスは、誰の血を流すことも、誰一人反対する者もなく新皇帝として迎えられたのである。
(ファービヒトは幽閉されていた離宮で流行病で呆気なく息を引き取った事が、小さな噂として流れた)
   アレックスは臨戦状態が続いていた隣国と和議を次々と結び、帝国内での祭り事も滞ることなく行った。その一貫として、隣国から妃を迎えた。アレックスは妃との間に2人の子を授かり、家族を大切にしたい。
  そして、彼の両手首に常にある守護と加護シュッツから国内だけでなく周辺国からも、『神愛帝』と呼ばれるようになっていった。

   
   そんなアレックスが45歳を迎えた日の事。
  皇帝の誕生日は、誰もが城に入り、アレックスの姿を間近で見る事になっていた。国内外は元より、帝国内の至る所から民がアレックスの姿を一目見ようと、毎年長蛇の列となる。アレックスは、城のバルコニーから人々に感謝と労いを込め手を振るのだ。
  毎年の様に、アレックスが歓声を受けながら人々に手を振っていたのだが。
  ふと、人々の中にいる、2人の男女に目が行った。
  1人は全身黒ずくめで、フードを目深にかぶった老婆。もう1人は、深緑色の長い髪に、スラッと背の高い若者であった。
  アレックスは、何故か2人から目を離すことが出来ずにいた。すると、フードの奥の老婆の目とアレックスの目が合った・・・
  蜜色の瞳
  アレックスは、バルコニーから身を乗り出し、
「シェヘラー?!」
アレックスは、呟いた。そして、ハッとして、大きな声で2人の男女の名を叫んだ。
シェヘラー!愛しい人シュテルネン リヒト星の輝き!!」
  まるで、夢でも見ている様に、人目も気にせず、群衆に向かってその名を叫び続ける。
  しかし、その声は多くの人々のざわめきでかき消されてしまった。
  しかし人々は、アレックスが何かを訴えている姿を見て、歓喜の声を上げる。
『陛下が我らを祝福してくださっている!』
  「シェヘラ!!愛しい人
  アレックスがそう叫ぶたび、大観衆の声がそれをかき消してしまう。
  その内、アレックスがあれほど会いたかった2人は、静かに背を向け、群衆の中へと消え去っていったのである。
シェヘラ!愛する人、シェヘラー!」
  アレックスは、声が枯れ果てるまでその名を叫び続けた。



  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...