褒美は変わった皇女様

よしき

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朝食で

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 サージャは、朝から頭が痛かった。
 何しろ、昨夜の事実 、などというものではなく、嫁の貰い手のないどうしようもない娘を押し付けるという事に気がついたのが遅すぎたからだ。

 すでにこの婚姻は成立しているし。まさかサージャから家督の上の、それも皇帝陛下に異を唱えるなどできるわけがない。
 まあ、貴族の結婚とはそういうものだから、シアをあのまま大切にしつつ、シアが文句を言わなければ言い訳で・・・
 しかし、美しくって。
 いやいや、そんなこと言っている場合ではない。何かあってからでは遅いのだ。どうしたものか・・・
 こんな事を一晩中考えていたら、眠れなかったのである。

 頭を抱えるサージャに無慈悲に時間は過ぎ、そのうち執事のマーリンがやってきた。マーリンの家は代々ジェットラム侯爵家に使える家柄である。
「旦那様、朝食の支度が整いました。奥様もお支度をすまされだとの事です。」
「あぁ、分かった。ありがとうマーリン」
 執事は軽く頭を下げて部屋を出る。
 それを見送ってから、
「さて、どうしたものか・・・」
と、サージャは、深い深いため息をついた。
 
 さて、サージャが朝食を食べに食堂へやって来くると、シアがケイティを連れてやってきたところだった。
 シアは、モスグリーンの素朴なドレスを身につけているが、金糸の髪と空色の瞳がとても映えて美しい。
「おはよう・・・」
 サージャは、昨日の自分の不甲斐なさを反省しつつそう声をかけた。
「サージャ、おはよう」
 シアは無表情のままサージャをその空色の瞳に写す。それから2人は、まるで初々しい一緒に席に着いた。
 サージャは、しばらくシアから目が離せなかったが、
「シア、その。あなたのドレスはとてもシンプルですが、とても似合っている。」
と、つい呟いてしまった。
 『しまった』と、サージャは思ったのだが、根が素直な性格なサージャは、つい言葉を発してしまったのだ。
 シアは今し方入れられたばかりのティーカップを手に取っているところだった。
「あぁ。これは母方の出身の、ターリャ国の衣装でな。城では、中々この格好では出歩けないから、自室でよく着ていたのだが。これの方が私は好みなのだ。」
 確かに、よく見ると布こそ最高級品だが。高貴な、特に年頃の皇女としては地味なドレスだ。ターリャ国とは、先帝の時に婚姻をもって和平を調停した国だ。それだけに、皇太子とアナスタシアは帝国とターリャ国との間では、人気もあるのも確かだ。サージャは、なるほどと、頷くしかなかった。
 すると、今度はシアが話しかけてきた。
「ところで、サージャ。私との結婚で、しばらく近衛を休むと聞いたが?」
「あぁ、一月程陛下より休暇を賜ったので。」
「それならば、ぜひジェットラム侯爵領を見に行きたいものだが?」
 サージャは、少々驚いたが快く快諾した。そして、少し落ち着いた2週間後にいく事が決まった。
 2人は簡単に昼食を終えると、別々の部屋へと下がっていった。

 
 
 
 


 






 
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