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自由貿易国家編
神の威光を見よ!!
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宿で準備を終えて、玄白はミハルと共に大空洞へと向かう。
彼が作り出した『魔物忌避剤』が染み込んだ鈴、これの効果がどれほどのものなのか、自分達で実証実験を行うために。
ちなみに玄白本人は、これが失敗作でないことを解体新書から確認済みであり、どこまでの効果を発揮するのか、少し不謹慎ではあるが楽しそうにしている。
そして、そんな玄白の気持ちなどつゆ知らないセッセリとミハルを伴って、大空洞入り口正門へと辿り着いた。
「まだマクシミリアンは来ていないようだけど。これからすぐに入る……なんてことは無いですよね?」
「流石にそれは無いぞ。まあ、とりあえず先に、二人には鈴を渡しておく。何処か身につけておくように」
解体新書から鈴を取り出し、セッセリとミハルに手渡す。
それを腰のベルトに結びつけて、軽く鳴らしてみる。
──リーン
綺麗な鈴の音が鳴り響き、二人はなんとも心地よい気持ちになってしまう。
そして玄白も鈴を結び付けてから、マクシミリアンが到着するのをじっと待っていた。
そして三人が正門に到着してから一時間後、ようやくマクシミリアンが冒険者ギルドの職員を連れて戻ってくる。
「お、おう、待たせた」
「構わん構わん。それで、そちらの方はどなたじゃ?」
玄白はマクシミリアンの後ろに立つ男性を指さし問いかける。
すると、その男が前に出て一言。
「この村の冒険者ギルドの統括を行なっているジェィソンだ。あんたがスギタとかいう治癒師だな?」
「その通りじゃが? わしに何か用事か?」
「マクシミリアンから魔物の忌避剤の話を聞かせてもらった。まあ、おいそれと信じることができなかったから、俺が直接、様子を見るためにやってきた。それでだが、本当に効くのか?」
まあ、これまで存在していなかった薬品が、いきなり作り出されたのである。
しかも、大暴走という絶妙なタイミングでの公表ということもあり、一部の冒険者やギルド職員からは玄白が詐欺まがいに金を稼ごうとしておるのではという話も出ておるのである。
それを確認するために、ジェイソン自らやってきたということになる。
「まあ、見ておるが良い」
「むむむ。自信満々か。よし、開けろ!!」
──ギィィィィィッ
正門がゆっくりと開き、大空洞へと続く洞窟がポッカリと口を開いている。
「さて、これはマクシミリアンの分じゃ、身につけておくが良い。それと、ジェイソン殿は、どうするのじゃ?」
「俺は、これを試させてもらう」
マクシミリアンが届けた魔物忌避剤を手に取り、ジェイソンは自身の体に軽く振りかける。
そして戦闘音の響く大空洞一層へと、足をすすめることにした。
………
……
…
──大空洞一層
すでに回廊の半分まで魔物たちが押し寄せている。
その進行を止めるべく、現在は大地系魔法を操るものたちが壁を生み出し、そこに魔力を注いで進行を可能な限り食い止めている。
それでも、あちこちの壁は破壊され、ゴブリンやコバルト、オーク、オーガと言った低級魔物たちが侵攻を続けようとしている。
それを冒険者たちが迎撃し、押し戻すという状態が続いている。
「すでに、かなり手前まで侵攻されていますが、本当に向かうのですか?」
「う~む。まあ、やるだけやってみるか」
やや及び腰のマクシミリアンだが、玄白は堂々と冒険者たちの隙間を縫うように前に出ると、破壊されて侵入を続けているゴブリンたちとの戦場近くにやってくる。
──リーン
そして鈴の音が響くと、それまで前線で猛威を振るっていたゴブリンたちの表情が曇りはじめる。
動きが鈍くなり、諤々と震えるものまで出てくると、冒険者たちもこのチャンスを逃すものかと、一気に攻勢にで始めた。
──リーン、リーン、リーン
その様子を見て、ミハルとマクシミリアン、セッセリも鈴を鳴らす。
すると今度は、後から逃れようと必死に破壊した穴に向かって走り出す魔物たちの姿が現れ始める。
「ほう、これは本物かよ」
魔物忌避剤を体に軽くふりかけたギルドマスターが、大剣を構えて走り出す。
すると、それまではなんとか耐えていたオーガでさえ、ギルドマスターの攻撃が届く範囲まで到着した瞬間、顔を顰めてえずきながら逃げ出した。
「ギ、ギルドマスター、これは一体」
「今のうちに体制を立て直せ、穴を塞いで奴等の侵入口を全てふざけ……って、そこ、スギタさん、何をしている!」
ゴブリンたちが逃げていった穴の近くに立ち、そこから外に出ようとする玄白一行だが。ギルドマスターとしては、彼らの持つ鈴の力を知ったがゆえに、彼らに先に進んでほしくはなかった。
この場で立ち止まり、鈴を鳴らし続けるだけで魔物たちが退いていく。
そんな便利な魔導具を持つものに、勝手なことをされると困るのである。
「なにって、わしらはこのまま回廊を進むだけじゃが?」
「勝手なことをされては困る、ここで魔物を食い止めつつ、先に進む必要があるのは理解できるだろうが」
「じゃから、忌避剤のレシピを錬金術ギルドに提供したのじゃろうが。ここから先は、わしらは協力せんからな」
「な、なんだと!!」
叫ぶものの、玄白たちは言うことを聞かずに先に進んでしまった。
しかも、その穴も塞がなくては、いつまた魔物がやってくるか判ったものでは無い。
「ギルドマスター、どうしますか?」
「ぐぬぬ……ええい、穴を塞いでしまえ!! 奴等がどうなろうと、すべて自己責任だ!」
その指示に従いつつ、冒険者たちは内側から防御陣営の強化を始める。
そして玄白たちは、灯りを灯しながら、目の前の暗い回廊に向かって歩みを進めはじめた。
彼が作り出した『魔物忌避剤』が染み込んだ鈴、これの効果がどれほどのものなのか、自分達で実証実験を行うために。
ちなみに玄白本人は、これが失敗作でないことを解体新書から確認済みであり、どこまでの効果を発揮するのか、少し不謹慎ではあるが楽しそうにしている。
そして、そんな玄白の気持ちなどつゆ知らないセッセリとミハルを伴って、大空洞入り口正門へと辿り着いた。
「まだマクシミリアンは来ていないようだけど。これからすぐに入る……なんてことは無いですよね?」
「流石にそれは無いぞ。まあ、とりあえず先に、二人には鈴を渡しておく。何処か身につけておくように」
解体新書から鈴を取り出し、セッセリとミハルに手渡す。
それを腰のベルトに結びつけて、軽く鳴らしてみる。
──リーン
綺麗な鈴の音が鳴り響き、二人はなんとも心地よい気持ちになってしまう。
そして玄白も鈴を結び付けてから、マクシミリアンが到着するのをじっと待っていた。
そして三人が正門に到着してから一時間後、ようやくマクシミリアンが冒険者ギルドの職員を連れて戻ってくる。
「お、おう、待たせた」
「構わん構わん。それで、そちらの方はどなたじゃ?」
玄白はマクシミリアンの後ろに立つ男性を指さし問いかける。
すると、その男が前に出て一言。
「この村の冒険者ギルドの統括を行なっているジェィソンだ。あんたがスギタとかいう治癒師だな?」
「その通りじゃが? わしに何か用事か?」
「マクシミリアンから魔物の忌避剤の話を聞かせてもらった。まあ、おいそれと信じることができなかったから、俺が直接、様子を見るためにやってきた。それでだが、本当に効くのか?」
まあ、これまで存在していなかった薬品が、いきなり作り出されたのである。
しかも、大暴走という絶妙なタイミングでの公表ということもあり、一部の冒険者やギルド職員からは玄白が詐欺まがいに金を稼ごうとしておるのではという話も出ておるのである。
それを確認するために、ジェイソン自らやってきたということになる。
「まあ、見ておるが良い」
「むむむ。自信満々か。よし、開けろ!!」
──ギィィィィィッ
正門がゆっくりと開き、大空洞へと続く洞窟がポッカリと口を開いている。
「さて、これはマクシミリアンの分じゃ、身につけておくが良い。それと、ジェイソン殿は、どうするのじゃ?」
「俺は、これを試させてもらう」
マクシミリアンが届けた魔物忌避剤を手に取り、ジェイソンは自身の体に軽く振りかける。
そして戦闘音の響く大空洞一層へと、足をすすめることにした。
………
……
…
──大空洞一層
すでに回廊の半分まで魔物たちが押し寄せている。
その進行を止めるべく、現在は大地系魔法を操るものたちが壁を生み出し、そこに魔力を注いで進行を可能な限り食い止めている。
それでも、あちこちの壁は破壊され、ゴブリンやコバルト、オーク、オーガと言った低級魔物たちが侵攻を続けようとしている。
それを冒険者たちが迎撃し、押し戻すという状態が続いている。
「すでに、かなり手前まで侵攻されていますが、本当に向かうのですか?」
「う~む。まあ、やるだけやってみるか」
やや及び腰のマクシミリアンだが、玄白は堂々と冒険者たちの隙間を縫うように前に出ると、破壊されて侵入を続けているゴブリンたちとの戦場近くにやってくる。
──リーン
そして鈴の音が響くと、それまで前線で猛威を振るっていたゴブリンたちの表情が曇りはじめる。
動きが鈍くなり、諤々と震えるものまで出てくると、冒険者たちもこのチャンスを逃すものかと、一気に攻勢にで始めた。
──リーン、リーン、リーン
その様子を見て、ミハルとマクシミリアン、セッセリも鈴を鳴らす。
すると今度は、後から逃れようと必死に破壊した穴に向かって走り出す魔物たちの姿が現れ始める。
「ほう、これは本物かよ」
魔物忌避剤を体に軽くふりかけたギルドマスターが、大剣を構えて走り出す。
すると、それまではなんとか耐えていたオーガでさえ、ギルドマスターの攻撃が届く範囲まで到着した瞬間、顔を顰めてえずきながら逃げ出した。
「ギ、ギルドマスター、これは一体」
「今のうちに体制を立て直せ、穴を塞いで奴等の侵入口を全てふざけ……って、そこ、スギタさん、何をしている!」
ゴブリンたちが逃げていった穴の近くに立ち、そこから外に出ようとする玄白一行だが。ギルドマスターとしては、彼らの持つ鈴の力を知ったがゆえに、彼らに先に進んでほしくはなかった。
この場で立ち止まり、鈴を鳴らし続けるだけで魔物たちが退いていく。
そんな便利な魔導具を持つものに、勝手なことをされると困るのである。
「なにって、わしらはこのまま回廊を進むだけじゃが?」
「勝手なことをされては困る、ここで魔物を食い止めつつ、先に進む必要があるのは理解できるだろうが」
「じゃから、忌避剤のレシピを錬金術ギルドに提供したのじゃろうが。ここから先は、わしらは協力せんからな」
「な、なんだと!!」
叫ぶものの、玄白たちは言うことを聞かずに先に進んでしまった。
しかも、その穴も塞がなくては、いつまた魔物がやってくるか判ったものでは無い。
「ギルドマスター、どうしますか?」
「ぐぬぬ……ええい、穴を塞いでしまえ!! 奴等がどうなろうと、すべて自己責任だ!」
その指示に従いつつ、冒険者たちは内側から防御陣営の強化を始める。
そして玄白たちは、灯りを灯しながら、目の前の暗い回廊に向かって歩みを進めはじめた。
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