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自由貿易国家編
強行作戦? 解決するとは話したが?
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大空洞で起きた、モンスターの大暴走。
それを阻止し沈静化するべく、村の冒険者ギルドからは次々と依頼を受けた冒険者たちが飛び出し、大空洞へと突入する。
現在、第一回廊の半分までが魔物の群れによっで占拠され、それを討伐するために集まった冒険者たちと一進一退の攻防を繰り広げている最中である。
その中、魔物の群れを避けるように、狩人のミハルが崖を駆け上がり、大空洞のあちこちにある小さな水溜まりの近くで『音鳴草』を採取している。
錬金術ギルドでも二束三文程度で取引される薬草で、低ランクの回復薬を作る『癒し草』の代用品として集められることが多く、普段なら誰も見向きもしない。
なぜならば?
音鳴草は蕾の時しか薬効成分が抽出できないことと、蕾の中に音を反響する空洞があり、採取する際にはそこから魔物を引き寄せる音が響き渡る。
これがまた厄介なものであり、小さな森程度なら、端から端まで音が響き、ゴブリンやコボルトが集まってくる。
「ほいほい、ほいっと!!」
ミハルはその音鳴草の茎を切断すると同時に、アイテムバッグに放り込んでいく。
一瞬の出来事ゆえに、音鳴草が反応するよりも早く仕舞ってしまうため、音が響くことはない。
これが二流の冒険者や駆け出しの新人なら、音を鳴らすだけでなく、この大暴走の魔物も引っ張ってしまうであろう。
「ええっと、必要な分は採取したから、急ぎ戻らないとね」
カバンを背負い直して、ミハルは崖の壁面を走り出す。
重力を無視したかのように壁を走るのは、ミハルが高ランクの狩人であること、『壁面走り』の加護のついた靴を使っているから。
そのまま眼下に広がる戦場を無視して、ミハルは街へと素早く戻っていった。
………
……
…
──錬金術ギルド
玄白はセッセリ、マクシミリアンと一緒に、錬金術ギルドにやってきている。
そこで調合ができる部屋を借り、ミハルが戻ってくるまでに新たな薬品の調合準備を始めている。
テーブルに並んでいる材料は、以前、【深淵をかるもの】と一緒に薬草採取に向かった時に取ってきたものや、ここの錬金術ギルドで購入したものばかり。
特に目新しい素材などどこにもない。
「スギタ先生、こんなので本当に良いのですか? そもそも、どんな薬を作る予定で?」
「まあまあ。細工は粒々、仕上げをご覧じろというてな。しばし待つがよいぞ」
薬研を使って素材を潰し、聖水を加えて溶かし込む。
それを幾度となく幾つもの素材で同じことをし、それぞれを布で濾しだす。
抽出した薬効成分が含まれた水は別の容器にとっておき、全てを解体新書の中に保存する。
時間が停止しているため、品質が低下することはない。
あとは、ミハルが最後の素材を取ってくるのを待つばかりである。
──ガチャッ
少ししてから、蜘蛛の巣やら埃やらをあちこちにつけたミハルが戻ってくると、そして玄白の前にあるテーブルの上に、音鳴草を取り出して並べた。
「……お待たせしました。猫の足音、取ってきました」
「おお、これか……」
テーブルの上の音鳴草、これに猫の足音を収めるために、ミハルは街の中の裏路地を奔走した。
そしてどうにか、昼寝中の猫を見つけてそっと近寄り、目が覚めて歩き出すのをじっと待っていたのである。
そして一時間ほどで猫が目を覚まし、ミハルなど気にするそぶりも見せずに歩いて去っていった。
その時の音が、この音鳴草の蕾の中に吸い込まれていったのである、
「では早速、加工を始めるとしようか」
先ほどの溶液を順番に並べ、音鳴草を漬け込んでいく。
一つ一つ漬け込む時間がちがうため、玄白は慎重に、そして丁寧に処理を開始する。
途中で何度も漬ける必要があるため、玄白以外では処理を手伝うことができなかった。
ただずっと、玄白の作業を見守ること三時間。
「……よし、完成したぞ」
玄白は完成してばかりの蕾を皆に見せる。
虹色に輝く蕾、それを加工して鈴を作り出したのである。
「これは?」
「これか? これは『魔除けの鈴』じゃな。魔物が嫌う音を響かせる鈴でな、これを身につけていると魔物が逃げていくのじゃよ。これさえあれば、大暴走の中でも、何も気にせずに進むことができる」
そう説明してから、玄白は軽く鈴を振る。
──リーン
心地よい音が響きわたり、ミハルやマクシミリアン、セッセリもうっとりとしてしまう。
「ハッ!! ちょっと待ってください。スギタ先生は、大暴走を止めるための魔導具を作っていたのではないのですか?」
「ん? なんでわしがそんなものを? そもそも、そんなもの作れるはずがないじゃろうが」
あっさりと言い切る玄白。
セッセリたちは、玄白が『大暴走を止める魔導具』を作り出すと思っていたのだが、玄白が作り出したのは『大暴走の中も自由に歩ける魔導具』である。
「え? 今回の大暴走の件も解決って話していましたよね?」
「じゃから、これで解決じゃろ? 天翔族の集落に先回りすることができるからな」
なるほどなと、ミハルが納得する。
そもそも、玄白は大暴走を止める気などない。
そんな大それた事をするための魔導具など、使ったこともないし解体新書にも載っていない。
今回の鈴も、『魔物用忌避剤』という薬品を作り出し、それを鈴に付与しただけ。
撒いて使うのなら、液体のままで十分である。
「「「そういう事ですか!!」」」
「なんじゃ? まさかわしが大暴走を止める魔導具を作るとても思っておったのか?」
「あの話し方なら、誰でもそう思いますよ」
マクシミリアンの突っ込みに、玄白も腕を組んで考える。
そして残った溶液を合成して、『魔物用忌避剤』を作り出すと、それのレシピを書き出してマクシミリアンに預けた。
「では、これを……冒険者ギルドに届けてくれるか? そして効果があるかどうか、錬金術ギルドの職員にも検証してもらってくれ。それで効果があるのなら、錬金術ギルドでも作れるはずじゃから」
「分かりました。では、先に話してきますので」
「そうしてくれると助かるな。ワシらも、今のうちに出発の準備をするか」
マクシミリアンが部屋を出てから、玄白たちは片付けを行う。
そしていつでも出発できるように準備をすると、マクシミリアンが戻ると同時に大空洞へと向かっていった。
それを阻止し沈静化するべく、村の冒険者ギルドからは次々と依頼を受けた冒険者たちが飛び出し、大空洞へと突入する。
現在、第一回廊の半分までが魔物の群れによっで占拠され、それを討伐するために集まった冒険者たちと一進一退の攻防を繰り広げている最中である。
その中、魔物の群れを避けるように、狩人のミハルが崖を駆け上がり、大空洞のあちこちにある小さな水溜まりの近くで『音鳴草』を採取している。
錬金術ギルドでも二束三文程度で取引される薬草で、低ランクの回復薬を作る『癒し草』の代用品として集められることが多く、普段なら誰も見向きもしない。
なぜならば?
音鳴草は蕾の時しか薬効成分が抽出できないことと、蕾の中に音を反響する空洞があり、採取する際にはそこから魔物を引き寄せる音が響き渡る。
これがまた厄介なものであり、小さな森程度なら、端から端まで音が響き、ゴブリンやコボルトが集まってくる。
「ほいほい、ほいっと!!」
ミハルはその音鳴草の茎を切断すると同時に、アイテムバッグに放り込んでいく。
一瞬の出来事ゆえに、音鳴草が反応するよりも早く仕舞ってしまうため、音が響くことはない。
これが二流の冒険者や駆け出しの新人なら、音を鳴らすだけでなく、この大暴走の魔物も引っ張ってしまうであろう。
「ええっと、必要な分は採取したから、急ぎ戻らないとね」
カバンを背負い直して、ミハルは崖の壁面を走り出す。
重力を無視したかのように壁を走るのは、ミハルが高ランクの狩人であること、『壁面走り』の加護のついた靴を使っているから。
そのまま眼下に広がる戦場を無視して、ミハルは街へと素早く戻っていった。
………
……
…
──錬金術ギルド
玄白はセッセリ、マクシミリアンと一緒に、錬金術ギルドにやってきている。
そこで調合ができる部屋を借り、ミハルが戻ってくるまでに新たな薬品の調合準備を始めている。
テーブルに並んでいる材料は、以前、【深淵をかるもの】と一緒に薬草採取に向かった時に取ってきたものや、ここの錬金術ギルドで購入したものばかり。
特に目新しい素材などどこにもない。
「スギタ先生、こんなので本当に良いのですか? そもそも、どんな薬を作る予定で?」
「まあまあ。細工は粒々、仕上げをご覧じろというてな。しばし待つがよいぞ」
薬研を使って素材を潰し、聖水を加えて溶かし込む。
それを幾度となく幾つもの素材で同じことをし、それぞれを布で濾しだす。
抽出した薬効成分が含まれた水は別の容器にとっておき、全てを解体新書の中に保存する。
時間が停止しているため、品質が低下することはない。
あとは、ミハルが最後の素材を取ってくるのを待つばかりである。
──ガチャッ
少ししてから、蜘蛛の巣やら埃やらをあちこちにつけたミハルが戻ってくると、そして玄白の前にあるテーブルの上に、音鳴草を取り出して並べた。
「……お待たせしました。猫の足音、取ってきました」
「おお、これか……」
テーブルの上の音鳴草、これに猫の足音を収めるために、ミハルは街の中の裏路地を奔走した。
そしてどうにか、昼寝中の猫を見つけてそっと近寄り、目が覚めて歩き出すのをじっと待っていたのである。
そして一時間ほどで猫が目を覚まし、ミハルなど気にするそぶりも見せずに歩いて去っていった。
その時の音が、この音鳴草の蕾の中に吸い込まれていったのである、
「では早速、加工を始めるとしようか」
先ほどの溶液を順番に並べ、音鳴草を漬け込んでいく。
一つ一つ漬け込む時間がちがうため、玄白は慎重に、そして丁寧に処理を開始する。
途中で何度も漬ける必要があるため、玄白以外では処理を手伝うことができなかった。
ただずっと、玄白の作業を見守ること三時間。
「……よし、完成したぞ」
玄白は完成してばかりの蕾を皆に見せる。
虹色に輝く蕾、それを加工して鈴を作り出したのである。
「これは?」
「これか? これは『魔除けの鈴』じゃな。魔物が嫌う音を響かせる鈴でな、これを身につけていると魔物が逃げていくのじゃよ。これさえあれば、大暴走の中でも、何も気にせずに進むことができる」
そう説明してから、玄白は軽く鈴を振る。
──リーン
心地よい音が響きわたり、ミハルやマクシミリアン、セッセリもうっとりとしてしまう。
「ハッ!! ちょっと待ってください。スギタ先生は、大暴走を止めるための魔導具を作っていたのではないのですか?」
「ん? なんでわしがそんなものを? そもそも、そんなもの作れるはずがないじゃろうが」
あっさりと言い切る玄白。
セッセリたちは、玄白が『大暴走を止める魔導具』を作り出すと思っていたのだが、玄白が作り出したのは『大暴走の中も自由に歩ける魔導具』である。
「え? 今回の大暴走の件も解決って話していましたよね?」
「じゃから、これで解決じゃろ? 天翔族の集落に先回りすることができるからな」
なるほどなと、ミハルが納得する。
そもそも、玄白は大暴走を止める気などない。
そんな大それた事をするための魔導具など、使ったこともないし解体新書にも載っていない。
今回の鈴も、『魔物用忌避剤』という薬品を作り出し、それを鈴に付与しただけ。
撒いて使うのなら、液体のままで十分である。
「「「そういう事ですか!!」」」
「なんじゃ? まさかわしが大暴走を止める魔導具を作るとても思っておったのか?」
「あの話し方なら、誰でもそう思いますよ」
マクシミリアンの突っ込みに、玄白も腕を組んで考える。
そして残った溶液を合成して、『魔物用忌避剤』を作り出すと、それのレシピを書き出してマクシミリアンに預けた。
「では、これを……冒険者ギルドに届けてくれるか? そして効果があるかどうか、錬金術ギルドの職員にも検証してもらってくれ。それで効果があるのなら、錬金術ギルドでも作れるはずじゃから」
「分かりました。では、先に話してきますので」
「そうしてくれると助かるな。ワシらも、今のうちに出発の準備をするか」
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