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自由貿易国家編
魔人化と治癒と、不死鳥の話
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どうにか無事に、マスカラス領にいるカネック王の孫娘を助けた。
彼女は魔人化の呪詛に蝕まれており、体内に魔人核まで形成され始めていたのを、玄白はエリクシールによる呪詛中和及び魔人核排出まで行い、このタイプの呪詛にはエリクシールが有効であることをあらためて認識することができた。
だが、このタイプの呪いを魔族な普通に使うことができる。
その事実が、玄白をさらなる苦悩へと導いてしまっていた。
「本当に助かりました。もう、娘はダメなのかと半ば諦めていたのですが……本当にありがとうございます」
「いや、治癒師としての仕事を行ったまでじゃよ。ちなみに礼はいらんぞ、カネック王から受け取っているからな」
「そ、それは困ります。あなた様は命の恩人です、それを何もお礼をせずに返したとあっては、領主としての面目も立ちません……お望みのものをお渡しします、お金ですか、それとも貴重な魔道具ですか?」
食い入るように話をする領主に、その場にいたマクシミリアンやミハルも思わず後ろに下がりそうになるが。
玄白は、腕を組んで考えてしまう。
「しかし、本当に欲しいもの……はないのじゃが」
「魔導具と言うことは、たとえば、人を癒すものとかはありますか?」
玄白が困っているところを、ミハルが手助けをする。
今の玄白の悩みの種の、少しでも何かヒントになればと思って問いかけたのだが。
さらにマクシミリアンもミハルに乗った。
「たとえば、死者を甦らせる秘術に関する資料とか文献とかは?」
「お主たち……わしのためにわざわざすまないのう。と言うことで、わしはとある事情で、大勢の人々を助けたいのじゃよ。そのような奇跡の技について、何かひんとになるようなものはないかの?」
「死者の蘇生。…となりますと、無いわけではありません。いや、それ自体は力を持ちませんけれど、そのヒントとやらになら……ちょっと席を外させてもらいます」
そう告げてから、領主が席を離れて部屋から出ていく。
「二人とも、すまないなぁ」
「いやいや、いいって事ですよ。こちらもスギタ先生にはさんにはいつも助けてもらっていますから
「そういうこと。勇者語録の中にある『情けは人の為ならず』っていう言葉だよ?」
「勇者語録か。フェイール商店の店主の愛読書じゃったな。そういえば、彼女の国にもいってみたいと思っていたが、まあ、先にやらねばならぬことが多すぎるなぁ」
そんなたあいない話に盛り上がっていると、ちょうど領主が小さな箱を持って部屋まで戻ってくる。
「お待たせしました。先ほどのお話ですが、こちらが助けになるかもしれません」
そう告げながら、箱をゆっくりと開く。
その中には、長さ30センチに近い炎のような羽根が一枚、納められていた。
「え、あ、あれ、まさかですよね?」
「これってひょっとして、不死鳥のはねですか?」
「不死鳥?」
マクシミリアンとミハルは興奮しつつ問いかけているので、玄白はそれをじっと眺めてみると、解体新書を取り出して該当するページを確認した。
『不死鳥の羽根……死者の完全蘇生を可能にする古代の|魔導遺物品(アーティファクト)に用いられる素材であり、それ単体でも一人ぐらいならば魂からの蘇生を行うことができる。なお、この羽はすでに力を失い、装飾品として作り直されている』
その解説を見て、玄白は前のめりになりつつ領主に話しかけた。
「これじゃよ、この死者蘇生。この羽はどこで手に入れたのじゃ?」
「これはですね。この先の大渓谷の上にあるヘスティア王国で見かけたものです。そもそもあの国の現在の国王であるトライアンフさまは幻獣種フェニックスの氏族、本来の神鳥フェニックスの加護を受けている幻獣たちの王です」
「では、これは国王の羽なのか?」
「いえ、さらに先代かと。今の国王は、己の再生のために羽を使い尽くしてしまっています。ですが、トライアンフ王ならば、神鳥フェニックスさまについて何か知っているかもしれません」
「なるほど……そうか、それは貴重な情報をありがとうございます。では、わしは先を急ぐので、これで失礼します……と待て待て」
立ち上がって頭を下げようとする玄白。
だが、孫娘の呪いを解き放ったとはいえ、その後の容態をまだ確認していない。
最低でも数日、七日ほどは様子を見ないとならない。
それほどまでに呪いの進行度合いが進み過ぎていたのである。
「わしらはこれから街に出て、宿をとりに行かねばならぬ。七日ほどはこの街に滞在して、娘さんの容態を見てあげようではないか」
「そ、それならば我が家の客間をお使いください。離れの建物になりますが、来客用にしっかりとした屋敷があります。そちらを自由に使って頂いても構いませんので!! 是非、そうなさってください」
グイグイと推してくる領主。
流石にここまでのお礼をしてくれると言うのならば、玄白も素直にその好意を受け取ることにし、明日からはアスカの容態を確認しつつ、不死鳥についての情報を探すことにした。
彼女は魔人化の呪詛に蝕まれており、体内に魔人核まで形成され始めていたのを、玄白はエリクシールによる呪詛中和及び魔人核排出まで行い、このタイプの呪詛にはエリクシールが有効であることをあらためて認識することができた。
だが、このタイプの呪いを魔族な普通に使うことができる。
その事実が、玄白をさらなる苦悩へと導いてしまっていた。
「本当に助かりました。もう、娘はダメなのかと半ば諦めていたのですが……本当にありがとうございます」
「いや、治癒師としての仕事を行ったまでじゃよ。ちなみに礼はいらんぞ、カネック王から受け取っているからな」
「そ、それは困ります。あなた様は命の恩人です、それを何もお礼をせずに返したとあっては、領主としての面目も立ちません……お望みのものをお渡しします、お金ですか、それとも貴重な魔道具ですか?」
食い入るように話をする領主に、その場にいたマクシミリアンやミハルも思わず後ろに下がりそうになるが。
玄白は、腕を組んで考えてしまう。
「しかし、本当に欲しいもの……はないのじゃが」
「魔導具と言うことは、たとえば、人を癒すものとかはありますか?」
玄白が困っているところを、ミハルが手助けをする。
今の玄白の悩みの種の、少しでも何かヒントになればと思って問いかけたのだが。
さらにマクシミリアンもミハルに乗った。
「たとえば、死者を甦らせる秘術に関する資料とか文献とかは?」
「お主たち……わしのためにわざわざすまないのう。と言うことで、わしはとある事情で、大勢の人々を助けたいのじゃよ。そのような奇跡の技について、何かひんとになるようなものはないかの?」
「死者の蘇生。…となりますと、無いわけではありません。いや、それ自体は力を持ちませんけれど、そのヒントとやらになら……ちょっと席を外させてもらいます」
そう告げてから、領主が席を離れて部屋から出ていく。
「二人とも、すまないなぁ」
「いやいや、いいって事ですよ。こちらもスギタ先生にはさんにはいつも助けてもらっていますから
「そういうこと。勇者語録の中にある『情けは人の為ならず』っていう言葉だよ?」
「勇者語録か。フェイール商店の店主の愛読書じゃったな。そういえば、彼女の国にもいってみたいと思っていたが、まあ、先にやらねばならぬことが多すぎるなぁ」
そんなたあいない話に盛り上がっていると、ちょうど領主が小さな箱を持って部屋まで戻ってくる。
「お待たせしました。先ほどのお話ですが、こちらが助けになるかもしれません」
そう告げながら、箱をゆっくりと開く。
その中には、長さ30センチに近い炎のような羽根が一枚、納められていた。
「え、あ、あれ、まさかですよね?」
「これってひょっとして、不死鳥のはねですか?」
「不死鳥?」
マクシミリアンとミハルは興奮しつつ問いかけているので、玄白はそれをじっと眺めてみると、解体新書を取り出して該当するページを確認した。
『不死鳥の羽根……死者の完全蘇生を可能にする古代の|魔導遺物品(アーティファクト)に用いられる素材であり、それ単体でも一人ぐらいならば魂からの蘇生を行うことができる。なお、この羽はすでに力を失い、装飾品として作り直されている』
その解説を見て、玄白は前のめりになりつつ領主に話しかけた。
「これじゃよ、この死者蘇生。この羽はどこで手に入れたのじゃ?」
「これはですね。この先の大渓谷の上にあるヘスティア王国で見かけたものです。そもそもあの国の現在の国王であるトライアンフさまは幻獣種フェニックスの氏族、本来の神鳥フェニックスの加護を受けている幻獣たちの王です」
「では、これは国王の羽なのか?」
「いえ、さらに先代かと。今の国王は、己の再生のために羽を使い尽くしてしまっています。ですが、トライアンフ王ならば、神鳥フェニックスさまについて何か知っているかもしれません」
「なるほど……そうか、それは貴重な情報をありがとうございます。では、わしは先を急ぐので、これで失礼します……と待て待て」
立ち上がって頭を下げようとする玄白。
だが、孫娘の呪いを解き放ったとはいえ、その後の容態をまだ確認していない。
最低でも数日、七日ほどは様子を見ないとならない。
それほどまでに呪いの進行度合いが進み過ぎていたのである。
「わしらはこれから街に出て、宿をとりに行かねばならぬ。七日ほどはこの街に滞在して、娘さんの容態を見てあげようではないか」
「そ、それならば我が家の客間をお使いください。離れの建物になりますが、来客用にしっかりとした屋敷があります。そちらを自由に使って頂いても構いませんので!! 是非、そうなさってください」
グイグイと推してくる領主。
流石にここまでのお礼をしてくれると言うのならば、玄白も素直にその好意を受け取ることにし、明日からはアスカの容態を確認しつつ、不死鳥についての情報を探すことにした。
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