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第一章・迷宮大氾濫と赤の黄昏編
第13話・ダンジョンを散策する……ええ、散策だそうです
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冒険者ギルドを後にして、レムリアはアイテムボックスから魔導馬を取り出して実体化させると、それに跨ってダンジョンのある方角を向く。
旧ダンジョンの位置は調査及びレンタル契約により確認しているのだが、新しいダンジョンについては、正確な位置は把握していない。
以前、契約不履行を起こした客を救出するため、エリオンの命令で移動したことはあったのだが、あの時はれたんる契約に基づく契約者の残存魔力を対象とした転移術式を用いたものであり、今回のように堂々と入り口から入るのは初めてのこと。
それゆえに、まずダンジョンへと向こうのが難しかった。
ということで蛇の道は蛇。
ここは冒険者ギルド入り口外ということで、出入りしている冒険者のり数も少なくはない。
なによりも、見たことがない金属製の馬にまたがる少女など、目立つことこの上ない。
この時代は、先史古代魔導具である魔導馬など現存するものはないといわれているのだから。
「おい、そこの女! その馬はなんだ? まさかゴーレムホースなのか?」
レムリアが冒険者に道を聞こうとしていた時、突然彼女を指さして叫ぶ男が現れた。
歳にして20代前半、服装からその男性が貴族もしくはその嫡男であろうと思われる。
傍らには護衛であろう軽装騎士が二人待機しており、男を護るべくし優位の様子をうかがっていた。
「そこの君。ダンジョンってどっちにあるの?」
レムリアはそんな貴族になど目もくれず、ギルドの入り口から出てきた冒険者に問いかける。
先ほどまでのレムリアと受付のやり取りを見ていた冒険者は、呆れたような顔をしつつも目の前の主街道の北を指さすと。
「ここから2リークほど進むと道が二手に分かれる。そこにも看板はあるが、西に進むと半リークほどで新ダンジョンに到着する。近くには小さい村が出来ているから、宿や買い物、素材の買取依頼などはそこでできるから……と、嬢ちゃんはアイテムボックス持ちで、素材解消が仕事だったよな、まあ、無理せず……というか、一気に根こそぎ討伐するのだけは勘弁してくれな。魔物や宝箱のリスポーンを待たなくてはならないから」
淡々と説明する冒険者に、レムリアはにっこりと笑いつつ頭を下げる。
ぶっきらぼうに方向だけとを指し示されるだけかと思っていたのだが、ここまで丁寧に説明してくれるとは思ってもいなかったから。
「わかった、目的階層までの宝箱には手をださない。そこから先も、素材調査用に倒すのと、目的の素材いを持つ魔物に集中する。これはお礼」
懐から一枚の理チケットを取り出すと、親切に教えてくれた冒険者に手渡す。
「これは? 割引券?」
「そう。魔導レンタルショップ・オールレントの割引券。魔法薬でも魔導具レンタルでも、どちらでも使えるから。それで、それを受け取ったあなたの魔力波長は登録されたから、他人には使えないし、それを奪われても悪用できない。そのかわり、貴方はオールレントに入ることができる。そこにあるの、見えるよね?」
レムリアがオールレントを指さす。
実はこの冒険者にはオールレントの存在は視認できていなかったのだが、レムリアから割引券を受け取った瞬間、その存在を把握することが出来るようになった。
「なるほどなぁ……そこにあって、分からない店……仲間が話していた意味が理解できたわ」
「それじゃあ、先を急ぐので……それに外野がうるさいから急ぐことにする」
「ちっょと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
レムリアが魔導馬の踵を返させたとき、後ろで叫び続けていた貴族がさらに大きく声を上げる。
最初の言葉に対しての返答を貰っていないことから、男はずっとレムリアに文句を言っている。
それどころか貴族の息子であることを笠にきて、魔導馬を謙譲しろとか言いたい放題。
経験上、そんな戯言は全て無視して冒険者と話していたのだから、貴族の息子も怒り心頭である。
「まだなにか?」
「き、貴様を不敬罪として拘束する。その魔導馬は没収だ。リオレーヌ、バッカス、その女を捕らえろ」
そう叫ぶ貴族の馬鹿息子に対して、レムリアは一言。
「貴族がその権力を振るえるのは、陞爵した本人のみ。加えて、その妻となるものは一階級下の貴族相当として扱うこと。その子息および子女は貴族相当権力を所有しない。つまり、私があなたに対してバーガバーカと話しても不敬にはあたらない。なお、貴族の子女が庶民から恐れられているのは、都合のいいこと悪いことを貴族である父に夢生氏付けられ。その権力を振るわれるのが怖いから。つまりあなたには権力なんてないし、その証拠に護衛は理解しているから動かない」
そうレムリアが告げると、ぼんくら息子はハッとして左右の護衛を見る。
「そうなのか?」
「ええ、おっしゃる通りです。私たちの仕事はあくまでも護衛。そちらのお嬢さんの言葉は、貴族院法によって制定されています」
「そ、それにしてもだ、このことを俺が父上に話したら、お前を不経済で捕まえることはできるだろうが。そうれたくなかったら」
「貴方の父上の貴族階位は? わたしはこれ、魔導銀の資格所有者で貴族的には公爵相当級の権力を行使できる。これはエッゾ諸島連合での話だけれど、この国の貴族は他国の最上位貴族に対して一方的に権力を行使できるの?」
「そ、そんな……うっそだろ?」
「いえ……どうやら本当のようです」
そう護衛のリオレーヌがつぶやくと、今までの一部始終を窓から眺めていた冒険者たちがニヤニヤと笑っている。
「お、おまえたち、帰るぞ」
「ハッ!」
ここにいては恥をかくだけ。
そう判断したぼんくら息子は急ぎその場を離れる。
そしてそれを見届けてから、レムリアはダンジョンへと向かうと、そのまま手続きを終えて内部へと入っていった。
〇 〇 〇 〇 〇
レムリアは、のんびりとダンジョンを散策中。
以前は任務のため攻略速度を最優先していたが、今はそれほど時間に追われているわけではない。
入り口から第三層までは、あちこちの空洞で冒険者たちが魔物と戦闘を繰り広げているが、レムリアはそれには興味が内容なそぶりをして、先に進む。
途中で魔物に襲われ、逃げてきた人たちを助けたりもするが、お礼を受け取ることもせずにどんどんと進んでいく。
素材の回収任務ではあるが、最速でという指定はない。
つまりエリオンにとっては在庫が切れたから暇つぶし程度に素材を集めてきて、程度の依頼なのである。
「エリオンなら、魔法薬が作れないなら別のものを作っているはず。今回必要な素材は、魔法薬にしか使えないものだから」
暗いダンジョンの中を、ランタンを頼りに進んでいく。
ここは自然洞型とよばているタイプであり、内壁や天井床全てがごつごつとした岩によって形成されている。
人口型ならば松明などで内部は照らされているのだが、ここは自然発生したヒカリゴケによって薄明るい程度、5メルト先は暗く先を見通すことはできない。
ゆえに、レムリアは魔導灯というランタンを腰から下げ、明かりを確保していた。
足元も不安定であること、時折水が染み出していたぬかるんでいたりと戦闘になったら危険極まりない。
4層辺りに到着すると、空気が綴ん重くなってくる。
途中途中に自然にできたらしい部屋のような空洞では、ここまでで疲弊した冒険者たちが体を休めていたり、怪我の治療などを行っている。
「ふふ。ここで魔法薬の出張販売をしたら儲かるかも。でも、そのためには従業員を増やす必要がある……それはダメだから、やっばりお客には店まで買いに来てもらわないと困る」
歩きつつ、突然前方に出現したトロールを手にした剣で分断。
同時に素材はアイテムボックスへと自動回収。
そのまま素材として処理され、使えない部分は全てあとからに廃棄する。
慌てることなく表情一つかえず。
レムリアは最短コースで素材のある階層へと進んでいった。
………
……
…
第五層、第六層と進むにつれて、冒険者たちの姿も減ってくる。
ゲームのような世界とは異なり、ここでは自分の実力を数値化して判断するようなシステムは【一般的には】存在しない。
先史古代魔導具にある鑑定のメガネ、これを用いることで対象者の能力をある程度数値化できるということらしいが、それも伝承やおとぎ話の世界でしかない。
「……レッサーデーモンを確認。野良地物がここに発生しているとは驚き」
前方に霧が発生し、そこから現れた四つ手の魔族を見てレムリアが表情を変えずに呟く。
この地に来て最初にレムリアが戦った魔物であるが、今、目の前にいる存在はあれよりもさらに格下。
「有瘴気濃度は3.6。ダンジョンランクDでこの程度の魔物が現れるのは驚き。これで今日の驚きは二つ目」
レムリアは両手剣を片手だけで構え、刀身に魔力を形成する。
魔物の持つ有瘴気濃度は、その体内にある魔石の純度をあらわす。
どれだけダンジョンから瘴気を受けて生まれたのかを示す指針でもあり、先に説明した鑑定のメガネによる魔物の脅威度をしめす数値でもある。
これは回収した魔石をギルドで解析することで知ることが出来、大一層あたりを根城としているゴブリンやコボルトなら0.2~0.5程度、保有魔石の純度はせいぜいが1、それも魔石片と呼ばれるものばかり。
しっかりとした魔石を回収するのなら、最低でも有瘴気濃度1.5以上の魔物でなくてはならない。
レムリアはすばやくレッサーデーモンとの間合いを詰めると、そのまま魔術詠唱を開始したデーモンを十字に切り裂く。
たった二撃、それだけでレッサーデーモンは灰燼へと帰し、魔石を一つ残して散っていった。
「純度1.1の魔石……まあ、私の臨時収入」
アイテムボックスに魔石を放り込み、さらに進む。
すると奥から、激しい戦闘音が聞こえてきた。
『ロイは左に回ってレイスを牽制、スパーダは前方のスケルトンソルジャーを足止めしてくれ。メルディ、浄化の術式はまだか!!』
『……聖なる力よ、我が前に集え……さまよえる魂を、神の元へと届けたまえ……浄化の刃っ』
そのような叫び声が聞こえてくる。
そのためレムリアも少しだけ速度を上げて、戦闘が行われているらしい前方の大空洞へと飛び込んでいくと。
「モンスターハウス……部屋全体の有瘴気濃度が7.5……」
一瞬で大空洞の内部状況をレムリアは理解した。
床のあちこちに散らばっているのは大量の冒険者たち。
その奥、下層に繋がる階段のようなものが見えていることから、この場所は6層のボス部屋。
だが、大抵のダンジョンではボス部屋は固く分厚い壁など手阻まれ、行き来するためには結界によって封じられている扉を通り抜けなくてはならない。
だが、この階層のボス部屋には扉などなく、部屋のあちこちに魔物が発生する黒霧が生まれていた。
さらに奥には、黒いローブをきた骸骨姿の魔導師……リッチロードが両手を広げ、アンデットの軍勢を生み出していたのである。
「た、助けてくれ……」
「俺たちは、そこの冒険者に貸し出された荷物運びなんだ、戦う力なんかない、ここから逃がしてくれ」
二人の奴隷がレムリアに叫ぶ。
犯罪奴隷などは、拘束術式を使うことで冒険者などに荷物運びとして有償で貸し出されることがある。
今、目の前で震えている二人も、このパーティに貸し出されたのであろうとレムリアは理解した。
貸出奴隷は、パーティーリーダーと同じ階層から出ることが出来ない。
それが拘束術式として刻み込まれているから。
「無理、貴方たちの隷属術式も拘束術式も、私は解けない……訂正、いまは道具がないから無理、主人たちがこの場を切り抜けられるように祈って」
「そ、そんなぁぁぁぁ」
「せめて、あいつらの手助けを頼む! どう見ても不利なことは目に見えてわかるだろうが!!」
そう哀願する奴隷だが。
「無理。ここはボス部屋なので、今私が手助けをすると横殴りになる。パーティーからの正式な要請がない限りは、私たち冒険者はボス部屋での横殴りは固く禁じられているから」
あっさりと一言呟く。
ただし、この時の言葉は前の方で戦っているパーティの耳に届くように、大きく叫んだ。
するとその言葉を理解したパーティーのリーダーが、背後にいるであろうレムリアに一言。
「援護要請!!」
「承諾。パーティーリーダーの援護要請を受諾。殲滅モードで戦闘状態に移行する」
ゴキゴキと腕を回しつつ左右に一本ずつ両手剣を携えると、レムリアは一直線にリッチロードへ向かって突進していった。
旧ダンジョンの位置は調査及びレンタル契約により確認しているのだが、新しいダンジョンについては、正確な位置は把握していない。
以前、契約不履行を起こした客を救出するため、エリオンの命令で移動したことはあったのだが、あの時はれたんる契約に基づく契約者の残存魔力を対象とした転移術式を用いたものであり、今回のように堂々と入り口から入るのは初めてのこと。
それゆえに、まずダンジョンへと向こうのが難しかった。
ということで蛇の道は蛇。
ここは冒険者ギルド入り口外ということで、出入りしている冒険者のり数も少なくはない。
なによりも、見たことがない金属製の馬にまたがる少女など、目立つことこの上ない。
この時代は、先史古代魔導具である魔導馬など現存するものはないといわれているのだから。
「おい、そこの女! その馬はなんだ? まさかゴーレムホースなのか?」
レムリアが冒険者に道を聞こうとしていた時、突然彼女を指さして叫ぶ男が現れた。
歳にして20代前半、服装からその男性が貴族もしくはその嫡男であろうと思われる。
傍らには護衛であろう軽装騎士が二人待機しており、男を護るべくし優位の様子をうかがっていた。
「そこの君。ダンジョンってどっちにあるの?」
レムリアはそんな貴族になど目もくれず、ギルドの入り口から出てきた冒険者に問いかける。
先ほどまでのレムリアと受付のやり取りを見ていた冒険者は、呆れたような顔をしつつも目の前の主街道の北を指さすと。
「ここから2リークほど進むと道が二手に分かれる。そこにも看板はあるが、西に進むと半リークほどで新ダンジョンに到着する。近くには小さい村が出来ているから、宿や買い物、素材の買取依頼などはそこでできるから……と、嬢ちゃんはアイテムボックス持ちで、素材解消が仕事だったよな、まあ、無理せず……というか、一気に根こそぎ討伐するのだけは勘弁してくれな。魔物や宝箱のリスポーンを待たなくてはならないから」
淡々と説明する冒険者に、レムリアはにっこりと笑いつつ頭を下げる。
ぶっきらぼうに方向だけとを指し示されるだけかと思っていたのだが、ここまで丁寧に説明してくれるとは思ってもいなかったから。
「わかった、目的階層までの宝箱には手をださない。そこから先も、素材調査用に倒すのと、目的の素材いを持つ魔物に集中する。これはお礼」
懐から一枚の理チケットを取り出すと、親切に教えてくれた冒険者に手渡す。
「これは? 割引券?」
「そう。魔導レンタルショップ・オールレントの割引券。魔法薬でも魔導具レンタルでも、どちらでも使えるから。それで、それを受け取ったあなたの魔力波長は登録されたから、他人には使えないし、それを奪われても悪用できない。そのかわり、貴方はオールレントに入ることができる。そこにあるの、見えるよね?」
レムリアがオールレントを指さす。
実はこの冒険者にはオールレントの存在は視認できていなかったのだが、レムリアから割引券を受け取った瞬間、その存在を把握することが出来るようになった。
「なるほどなぁ……そこにあって、分からない店……仲間が話していた意味が理解できたわ」
「それじゃあ、先を急ぐので……それに外野がうるさいから急ぐことにする」
「ちっょと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
レムリアが魔導馬の踵を返させたとき、後ろで叫び続けていた貴族がさらに大きく声を上げる。
最初の言葉に対しての返答を貰っていないことから、男はずっとレムリアに文句を言っている。
それどころか貴族の息子であることを笠にきて、魔導馬を謙譲しろとか言いたい放題。
経験上、そんな戯言は全て無視して冒険者と話していたのだから、貴族の息子も怒り心頭である。
「まだなにか?」
「き、貴様を不敬罪として拘束する。その魔導馬は没収だ。リオレーヌ、バッカス、その女を捕らえろ」
そう叫ぶ貴族の馬鹿息子に対して、レムリアは一言。
「貴族がその権力を振るえるのは、陞爵した本人のみ。加えて、その妻となるものは一階級下の貴族相当として扱うこと。その子息および子女は貴族相当権力を所有しない。つまり、私があなたに対してバーガバーカと話しても不敬にはあたらない。なお、貴族の子女が庶民から恐れられているのは、都合のいいこと悪いことを貴族である父に夢生氏付けられ。その権力を振るわれるのが怖いから。つまりあなたには権力なんてないし、その証拠に護衛は理解しているから動かない」
そうレムリアが告げると、ぼんくら息子はハッとして左右の護衛を見る。
「そうなのか?」
「ええ、おっしゃる通りです。私たちの仕事はあくまでも護衛。そちらのお嬢さんの言葉は、貴族院法によって制定されています」
「そ、それにしてもだ、このことを俺が父上に話したら、お前を不経済で捕まえることはできるだろうが。そうれたくなかったら」
「貴方の父上の貴族階位は? わたしはこれ、魔導銀の資格所有者で貴族的には公爵相当級の権力を行使できる。これはエッゾ諸島連合での話だけれど、この国の貴族は他国の最上位貴族に対して一方的に権力を行使できるの?」
「そ、そんな……うっそだろ?」
「いえ……どうやら本当のようです」
そう護衛のリオレーヌがつぶやくと、今までの一部始終を窓から眺めていた冒険者たちがニヤニヤと笑っている。
「お、おまえたち、帰るぞ」
「ハッ!」
ここにいては恥をかくだけ。
そう判断したぼんくら息子は急ぎその場を離れる。
そしてそれを見届けてから、レムリアはダンジョンへと向かうと、そのまま手続きを終えて内部へと入っていった。
〇 〇 〇 〇 〇
レムリアは、のんびりとダンジョンを散策中。
以前は任務のため攻略速度を最優先していたが、今はそれほど時間に追われているわけではない。
入り口から第三層までは、あちこちの空洞で冒険者たちが魔物と戦闘を繰り広げているが、レムリアはそれには興味が内容なそぶりをして、先に進む。
途中で魔物に襲われ、逃げてきた人たちを助けたりもするが、お礼を受け取ることもせずにどんどんと進んでいく。
素材の回収任務ではあるが、最速でという指定はない。
つまりエリオンにとっては在庫が切れたから暇つぶし程度に素材を集めてきて、程度の依頼なのである。
「エリオンなら、魔法薬が作れないなら別のものを作っているはず。今回必要な素材は、魔法薬にしか使えないものだから」
暗いダンジョンの中を、ランタンを頼りに進んでいく。
ここは自然洞型とよばているタイプであり、内壁や天井床全てがごつごつとした岩によって形成されている。
人口型ならば松明などで内部は照らされているのだが、ここは自然発生したヒカリゴケによって薄明るい程度、5メルト先は暗く先を見通すことはできない。
ゆえに、レムリアは魔導灯というランタンを腰から下げ、明かりを確保していた。
足元も不安定であること、時折水が染み出していたぬかるんでいたりと戦闘になったら危険極まりない。
4層辺りに到着すると、空気が綴ん重くなってくる。
途中途中に自然にできたらしい部屋のような空洞では、ここまでで疲弊した冒険者たちが体を休めていたり、怪我の治療などを行っている。
「ふふ。ここで魔法薬の出張販売をしたら儲かるかも。でも、そのためには従業員を増やす必要がある……それはダメだから、やっばりお客には店まで買いに来てもらわないと困る」
歩きつつ、突然前方に出現したトロールを手にした剣で分断。
同時に素材はアイテムボックスへと自動回収。
そのまま素材として処理され、使えない部分は全てあとからに廃棄する。
慌てることなく表情一つかえず。
レムリアは最短コースで素材のある階層へと進んでいった。
………
……
…
第五層、第六層と進むにつれて、冒険者たちの姿も減ってくる。
ゲームのような世界とは異なり、ここでは自分の実力を数値化して判断するようなシステムは【一般的には】存在しない。
先史古代魔導具にある鑑定のメガネ、これを用いることで対象者の能力をある程度数値化できるということらしいが、それも伝承やおとぎ話の世界でしかない。
「……レッサーデーモンを確認。野良地物がここに発生しているとは驚き」
前方に霧が発生し、そこから現れた四つ手の魔族を見てレムリアが表情を変えずに呟く。
この地に来て最初にレムリアが戦った魔物であるが、今、目の前にいる存在はあれよりもさらに格下。
「有瘴気濃度は3.6。ダンジョンランクDでこの程度の魔物が現れるのは驚き。これで今日の驚きは二つ目」
レムリアは両手剣を片手だけで構え、刀身に魔力を形成する。
魔物の持つ有瘴気濃度は、その体内にある魔石の純度をあらわす。
どれだけダンジョンから瘴気を受けて生まれたのかを示す指針でもあり、先に説明した鑑定のメガネによる魔物の脅威度をしめす数値でもある。
これは回収した魔石をギルドで解析することで知ることが出来、大一層あたりを根城としているゴブリンやコボルトなら0.2~0.5程度、保有魔石の純度はせいぜいが1、それも魔石片と呼ばれるものばかり。
しっかりとした魔石を回収するのなら、最低でも有瘴気濃度1.5以上の魔物でなくてはならない。
レムリアはすばやくレッサーデーモンとの間合いを詰めると、そのまま魔術詠唱を開始したデーモンを十字に切り裂く。
たった二撃、それだけでレッサーデーモンは灰燼へと帰し、魔石を一つ残して散っていった。
「純度1.1の魔石……まあ、私の臨時収入」
アイテムボックスに魔石を放り込み、さらに進む。
すると奥から、激しい戦闘音が聞こえてきた。
『ロイは左に回ってレイスを牽制、スパーダは前方のスケルトンソルジャーを足止めしてくれ。メルディ、浄化の術式はまだか!!』
『……聖なる力よ、我が前に集え……さまよえる魂を、神の元へと届けたまえ……浄化の刃っ』
そのような叫び声が聞こえてくる。
そのためレムリアも少しだけ速度を上げて、戦闘が行われているらしい前方の大空洞へと飛び込んでいくと。
「モンスターハウス……部屋全体の有瘴気濃度が7.5……」
一瞬で大空洞の内部状況をレムリアは理解した。
床のあちこちに散らばっているのは大量の冒険者たち。
その奥、下層に繋がる階段のようなものが見えていることから、この場所は6層のボス部屋。
だが、大抵のダンジョンではボス部屋は固く分厚い壁など手阻まれ、行き来するためには結界によって封じられている扉を通り抜けなくてはならない。
だが、この階層のボス部屋には扉などなく、部屋のあちこちに魔物が発生する黒霧が生まれていた。
さらに奥には、黒いローブをきた骸骨姿の魔導師……リッチロードが両手を広げ、アンデットの軍勢を生み出していたのである。
「た、助けてくれ……」
「俺たちは、そこの冒険者に貸し出された荷物運びなんだ、戦う力なんかない、ここから逃がしてくれ」
二人の奴隷がレムリアに叫ぶ。
犯罪奴隷などは、拘束術式を使うことで冒険者などに荷物運びとして有償で貸し出されることがある。
今、目の前で震えている二人も、このパーティに貸し出されたのであろうとレムリアは理解した。
貸出奴隷は、パーティーリーダーと同じ階層から出ることが出来ない。
それが拘束術式として刻み込まれているから。
「無理、貴方たちの隷属術式も拘束術式も、私は解けない……訂正、いまは道具がないから無理、主人たちがこの場を切り抜けられるように祈って」
「そ、そんなぁぁぁぁ」
「せめて、あいつらの手助けを頼む! どう見ても不利なことは目に見えてわかるだろうが!!」
そう哀願する奴隷だが。
「無理。ここはボス部屋なので、今私が手助けをすると横殴りになる。パーティーからの正式な要請がない限りは、私たち冒険者はボス部屋での横殴りは固く禁じられているから」
あっさりと一言呟く。
ただし、この時の言葉は前の方で戦っているパーティの耳に届くように、大きく叫んだ。
するとその言葉を理解したパーティーのリーダーが、背後にいるであろうレムリアに一言。
「援護要請!!」
「承諾。パーティーリーダーの援護要請を受諾。殲滅モードで戦闘状態に移行する」
ゴキゴキと腕を回しつつ左右に一本ずつ両手剣を携えると、レムリアは一直線にリッチロードへ向かって突進していった。
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