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第一章・夢から少し遠い場所~イベント設営業~
穴があったら入りたい……いえ、テントはありますけれど
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突発的に始まったアルバイト、それも当日スタッフとして音響関係の補助という夢にまで見ていた6割想定外4割という事態に、どうしていいか全く分からないまま時間は経過していきます。
すでにステージでは旭川カラオケ教室のイベントが進み、私たちは音響設備の収められているテントの中で、のんびりと待機中。
「あの、工藤さん、本当に私たちの出番はないのですね」
「まあ、ね。うちのレンタルした音響はステージで使われるものが主体だけれど、カラオケ大会とかになると、それ専門のレンタル業者がスタッフを送ってくるからさ。ほら、あれだって業務用貸し出し専用の機材なんだよね。こういったイベントで一日いくらで貸し出している奴だからさ」
明桜レンタリースの貸し出した機材は一時的に配線を変更し、そのカラオケ機材に切り替えられています。
このあとはYOSAKOIソーランナイト用にまた設定を変更することになるため、もう一台の音響設備を用意しなくてはならないとか。
そのために、広崎さんが札幌まで機材受け取りに走っているそうなのです。
「ははぁ、つまり私の出番はもうないと思っていいのですか」
「そうだね。まあ、時間いっぱいまではここにいてもらうことになるんだけどね。どうせ明後日の朝には撤去作業になるんだけど……御子柴さんは撤去のメンバーに入っている?」
「いえ、特にスケジュールは組んでいませんよ。私、帰省中ですから」
「そうだったね、まあ、今日は助かりましたよ」
「いえいえ」
そのままのんびりと待機時間は続きます。
テントの中までカラオケの音が響いてきますし、工藤さんは途中で食べ物を買いに出かけてしまうし。
そんなこんなでのんびりとしていますと、16時30分のアラームが鳴り響きました。
「あ、工藤さん、時間です」
「了解。本日はありがとうございました。あとはのんびりと楽しんできてください」
「はい、お疲れ様でした」
頭を下げて挨拶。
そしてスタッフジャンバーを工藤さんに返却して、ようやくテントから外に出ることが出来ました。
「う~ん。この後はお父さんたちと合流かぁ。どこで待ち合わせしようかな。一旦帰らないとならないかも……」
――ピピピッピピピッピピピッピピピツ
ラインメッセージの音が響きます。
スマホを開いて確認すると、お母さんからのメッセージが。
『今、お父さんと会場にいます。仕事が終わったら合流するように』
「はいはいっと。もう仕事は終わりましたよ、今はどこにいますか……と」
ポチっとメッセージを返信します。
するとすぐに既読が付いて……。
「優香の後ろよ。おつかれさま」
「おっと、お父さんも一緒だったのですね」
「ん……まあ、色々と言いたいこともあるか……とりあえず、何か食べようか?」
「もうお腹が減って大変だよ。がっつりとスタミナのつくものを食べたいなぁ」
どうせお父さんの奢りなんだから、普段は食べられないものを。
ということで、お寿司か焼き肉……と思ったのだけど、やっばりお祭りだから、露店で色々な食べ物を購入して、有料席に移動して。
「さて。優香、昼のケーブルテレビで見たのだが、一体何のアルバイトをしているんだ?」
――ドキッ
まさかあれを見ていたのですか。
いや、私は別に恥ずかしい仕事をしていたわけではないのですけれど。
「イベントの設営だけど? 今日はスタッフが足りないから臨時でお手伝いだよ。まあ、予定外にステージに立つことになったけれど、普段は設営がメインだからさ」
「それならそれで構わないが……いきなり画面にお前の顔がアップで移ったときは驚いたぞ」
「いやぁ、お恥ずかしい限りです……はい」
そのまま他愛のないことを話しつつ、いつのまにかYOSAKOIステージも始まりました。
基本的には地元のチームが登場するのですけれど、その年の優勝チームを招待することもあるそうで。
今年は無理だったらしく、地元の小学生のチームとかが会場で踊りまくっています。
「大人と子供の混成チームかぁ……」
「なんだ? 優香は今年は見に行っていなかったのか?」
「仕事ですよ、し、ご、と」
「……ちゃんと勉強しているんだよな?」
「していますって、ご安心ください」
はあ、本当に心配性ですこと。
そのままYOSAKOIが終わるころには私たちも帰宅。
バスに揺られてのんびりと自宅に戻ると、ちょうど澪からメッセージが届きました。
「今日はもう出かける予定がないから、何か用事があるなら明日にしてもらおうっと」
そう呟きつつメッセージの確認。
『ステージを見た。ばら撒かれたくなければ、明日のお昼をよろしく』
というメッセージと、私がステージでマイクパフォーマンスならぬマイクテストをしていた時の写メと動画が添付されているのですが。
「……どう見ても、澪はこの時ステージ下にいたよね。こんなにはっきりと撮れているなんて……」
ばら撒かれたくはないような、でも仕事だって言い切ってしまえば怖くないような。
うん、開き直ろう。
「『昼は奢らないけれど、明日もどこかにいく?』と。送信っ!!」
――ピッ
まあ、すぐには返事は来ないだろうけれど。
今のうちにシャワーでも浴びてきますか。
明日は、どこに行くのだろうなぁ……。
あのテントの撤去は明後日だろうから、明日は臨時のアルバイトはないよねぇ。
すでにステージでは旭川カラオケ教室のイベントが進み、私たちは音響設備の収められているテントの中で、のんびりと待機中。
「あの、工藤さん、本当に私たちの出番はないのですね」
「まあ、ね。うちのレンタルした音響はステージで使われるものが主体だけれど、カラオケ大会とかになると、それ専門のレンタル業者がスタッフを送ってくるからさ。ほら、あれだって業務用貸し出し専用の機材なんだよね。こういったイベントで一日いくらで貸し出している奴だからさ」
明桜レンタリースの貸し出した機材は一時的に配線を変更し、そのカラオケ機材に切り替えられています。
このあとはYOSAKOIソーランナイト用にまた設定を変更することになるため、もう一台の音響設備を用意しなくてはならないとか。
そのために、広崎さんが札幌まで機材受け取りに走っているそうなのです。
「ははぁ、つまり私の出番はもうないと思っていいのですか」
「そうだね。まあ、時間いっぱいまではここにいてもらうことになるんだけどね。どうせ明後日の朝には撤去作業になるんだけど……御子柴さんは撤去のメンバーに入っている?」
「いえ、特にスケジュールは組んでいませんよ。私、帰省中ですから」
「そうだったね、まあ、今日は助かりましたよ」
「いえいえ」
そのままのんびりと待機時間は続きます。
テントの中までカラオケの音が響いてきますし、工藤さんは途中で食べ物を買いに出かけてしまうし。
そんなこんなでのんびりとしていますと、16時30分のアラームが鳴り響きました。
「あ、工藤さん、時間です」
「了解。本日はありがとうございました。あとはのんびりと楽しんできてください」
「はい、お疲れ様でした」
頭を下げて挨拶。
そしてスタッフジャンバーを工藤さんに返却して、ようやくテントから外に出ることが出来ました。
「う~ん。この後はお父さんたちと合流かぁ。どこで待ち合わせしようかな。一旦帰らないとならないかも……」
――ピピピッピピピッピピピッピピピツ
ラインメッセージの音が響きます。
スマホを開いて確認すると、お母さんからのメッセージが。
『今、お父さんと会場にいます。仕事が終わったら合流するように』
「はいはいっと。もう仕事は終わりましたよ、今はどこにいますか……と」
ポチっとメッセージを返信します。
するとすぐに既読が付いて……。
「優香の後ろよ。おつかれさま」
「おっと、お父さんも一緒だったのですね」
「ん……まあ、色々と言いたいこともあるか……とりあえず、何か食べようか?」
「もうお腹が減って大変だよ。がっつりとスタミナのつくものを食べたいなぁ」
どうせお父さんの奢りなんだから、普段は食べられないものを。
ということで、お寿司か焼き肉……と思ったのだけど、やっばりお祭りだから、露店で色々な食べ物を購入して、有料席に移動して。
「さて。優香、昼のケーブルテレビで見たのだが、一体何のアルバイトをしているんだ?」
――ドキッ
まさかあれを見ていたのですか。
いや、私は別に恥ずかしい仕事をしていたわけではないのですけれど。
「イベントの設営だけど? 今日はスタッフが足りないから臨時でお手伝いだよ。まあ、予定外にステージに立つことになったけれど、普段は設営がメインだからさ」
「それならそれで構わないが……いきなり画面にお前の顔がアップで移ったときは驚いたぞ」
「いやぁ、お恥ずかしい限りです……はい」
そのまま他愛のないことを話しつつ、いつのまにかYOSAKOIステージも始まりました。
基本的には地元のチームが登場するのですけれど、その年の優勝チームを招待することもあるそうで。
今年は無理だったらしく、地元の小学生のチームとかが会場で踊りまくっています。
「大人と子供の混成チームかぁ……」
「なんだ? 優香は今年は見に行っていなかったのか?」
「仕事ですよ、し、ご、と」
「……ちゃんと勉強しているんだよな?」
「していますって、ご安心ください」
はあ、本当に心配性ですこと。
そのままYOSAKOIが終わるころには私たちも帰宅。
バスに揺られてのんびりと自宅に戻ると、ちょうど澪からメッセージが届きました。
「今日はもう出かける予定がないから、何か用事があるなら明日にしてもらおうっと」
そう呟きつつメッセージの確認。
『ステージを見た。ばら撒かれたくなければ、明日のお昼をよろしく』
というメッセージと、私がステージでマイクパフォーマンスならぬマイクテストをしていた時の写メと動画が添付されているのですが。
「……どう見ても、澪はこの時ステージ下にいたよね。こんなにはっきりと撮れているなんて……」
ばら撒かれたくはないような、でも仕事だって言い切ってしまえば怖くないような。
うん、開き直ろう。
「『昼は奢らないけれど、明日もどこかにいく?』と。送信っ!!」
――ピッ
まあ、すぐには返事は来ないだろうけれど。
今のうちにシャワーでも浴びてきますか。
明日は、どこに行くのだろうなぁ……。
あのテントの撤去は明後日だろうから、明日は臨時のアルバイトはないよねぇ。
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