イベントへ行こう!

呑兵衛和尚

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第一章・夢から少し遠い場所~イベント設営業~

設営だけかと思ったら……え? 売り子?

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 なんだかんだと作業は順調。

 一通りのシステムのくみ上げは終わり、今は四隅のブースに冷蔵庫を搬入する作業。
 ちなみに私は、各ブースの上に設置する看板を作っている最中です。
 『出力』と呼ばれている、発泡スチロールの板に印刷した看板を書くブース後ろのシステム上端にぶら下げる作業……なのですけれど、私は背が低いので上端まで手が届きまく戦。
 だから、先に看板にプラスチックの金具を設置して並べておくだけ。
 あとは背の高い伊藤さんや大川さんにお任せして。

「この名前って、有名な食品メーカーですよね? こういうイベントにも出てくるのですか」
「まあ、大手は必ず来るみたいだからさ。だから入り口側のブースって大きいでしょう? それだけ展示物が多いから場所も大きく取っているらしくてさ……」
「へぇ。凄いですね。こういうのって誰でも参加できるのですか? いえ、販売じゃなくてお客としてきて、いろいろと話が聞けたらなぁと」

 ちょっと興味がありますよね。
 秋の新商品の商談会、つまの明日、ここに並ぶ商品は全て新商品じゃないですか。
 そういうのって、興味がありますよね。

「あはは、ここにきて商談できるのは大体が食品関係の仕事をしている人たちだからね。あとは個人経営している飲食店の人とかが、ここにきて色々と話を聞くはずだよ」
「なるほど……それは私には無理ですよね……ってあれ?」

 一つ一つ看板を仕上げて。
 道内の銘品コーナーの看板を作っていますと、見たことのある看板が。

『旭川・御子柴銘菓店』

 あっれ?
 どうしてうちの実家の名前がここに?

「あの、これって旭川のお店ですよね?」
「そうだね。道内の銘品コーナーっていうことは、地元に古くからある老舗で選ばれたっていうところじゃないかな。ミコシーちゃんと同じ名前だよね」
「あははぁ。偶然って凄いですね、それじゃあとっとと仕上げてしまいますか」

 さ、さあ、気を取り直して作業再開、あとは一気に看板を設置してまもなく作業は完了です。
 すると階段側や後ろの搬入用エレベーターからざわざわと人の声が聞こえてきました。

「ふう、どうにか時間以内で間に合った感じか。それじゃあウィルプラスさんはこれで作業終了です、おつかれさまでした」
「ありがとうございました」×9

 東尾レントオールの責任者の方の声で、本日の作業は終了。
 さて、とっとと帰りますかとエレベーターに乗って一階へ。
 そして外に出て、もう一度最後のミーティング。

「明日の撤去は17時からなので、16時40分までにこのエレベーター前に集合で。あとからメールも入れておきますので」
「はい」
「それではおつかれさまでした」

――ビクッ
 あとは自宅に戻って……。
 って、あれ? 見覚えのあるライトバンがエレベーター前に止まっていますけれど。
 扉に『御子柴銘菓』という名前と電話番号、後ろの扉が開いて荷物を下ろしているお父さんたち。
 うん、私は何も見て今せんよ~。
 とっとと帰って、明日のために英気を養わないとなりませんからね。

「……あれ? ひょっとして優香?」

――ドッキィィィィン
 や、やばい、見つかったかも。

「本当だ、なんでこんなところにいるんだ?」

 お父さんとお母さんに見つかった。
 これはごまかすのは無理ですよ。

「あ、お父さんたち、どうしてこんなところに?」
「どうしてもなにも、明日、ここの地下で行われる食品のイベントに出店するんだよ。そうだ優香、明日暇か?」

 はい、昼間は暇ですよ。
 そりゃあ、とっても。

「ま、まあ、夕方までなら暇だけれど」
「それなら明日の朝、8時までにここに来てくれるか? 売り子担当の立花さんが風を引いてしまってな、売り子が足りないんだわ。うちの商品の試食を用意して、歩いているお客さんに声をかけ食べてもらうだけだから」
「あとはお父さんが話をしてくれるから、頼めないかい?」

 ぐっ。
 そんな話を聞いたら、断れるはずがないじゃないですか。

「はぁ。夕方までならね。明日は17時からアルバイトがあるから」
「そんなにかからないよ。試食用の商品が切れたら、あとは優香は帰っても大丈夫だから。そのアルバイト先って、ここから遠いのかい?」
「いや……ま、まあ。明日のアルバイトって、ここの地下のシステムの撤去だから……」
「なんだ、それならギリギリまでいても大丈夫か。ちゃんとアルバイト代は払うから、頼まれてくれるか?」

 はい、明日は売り子からのシステム撤去作業が確定しました。

「はぁ……16時半、それがタイムリミットだからね」
「オッケー。それじゃあ。、そっちの荷物の搬入をするから手伝ってくれ」
「はぁ!!」

 そう突っ込みたい私を無視して、お父さんたちは台車に荷物を載せてエレベーターを待っています。 
 そして到着したエレベーターが開くと、東尾レントオールの人たちが降りてきました。

「あれ? 御子柴さん、何か忘れ物ですか?」
「いえ、今からあるブースの設営助手です……」
「掛け持ちとはまた。うん、無理しないでね」
「はい、大丈夫です。それではお疲れ様でした」

 そのまま頭を下げて東尾レントオールの皆さんを見送って。
 次は御子柴銘菓の設営作業の開始です。
 はぁ、これじゃあ休む暇なんてないじゃないですか。
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