機動戦艦から始まる、現代の錬金術師

呑兵衛和尚

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第一部・アマノムラクモ降臨

第28話・協力体制と見返りと

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 アメリカ・国防総省。

 この日、国防総省へ届かられた信じられないメッセージは、パワード大統領の元へ速やかに届けられた。
 
『アマノムラクモにて、治療難度の高い患者の受け入れおよび魔術的治癒を行う準備ができている。貴国にて、そのような患者はいるかどうか?』

 ただ、これだけのメッセージが国防総省へとダイレクトに届いたときほ、どこの国がアマノムラクモを語り冗談を伝えて来たのかと疑ってしまった。
 だが、衛星を用いての電波の送信元が太平洋上、アマノムラクモの領海内であることが確認できた時、すぐさまホワイトハウスへとメッセージは届けられたのである。

「……これはどう言う意図があると思うかな?」

 ホワイトハウスの大統領執務室にて、呼び出された国防長官をはじめとする責任者たちに、パワード大統領が問いかける。
 あまりにも簡単な、それでいて魅力的なメッセージ。
 寧ろ、その裏に隠されている意図を考える必要があると判断された。
 
「恐れながら。地球の医療技術の水準を知りたいのではないかと思われます。現在、医療技術においてトップを走るのはアメリカ、次いで日本であると我々は自負しています。その代表たるアメリカでさえも治療不可能な患者はいるのかという問いかけ。ある意味では宣戦布告とも取れかねませんが」
「だが、もしもそうならば、我々はどうすべきだ? 速やかにアマノムラクモへ患者を引き渡すのか? それも患者の安全を考慮せず、アマノムラクモの医療技術を鵜呑みにして。その結果、アマノムラクモの医療水準が我々よりも高いとしたら?」

 アマノムラクモが敵対国家ではないことは、ミサキ・テンドウの演説により明らか。だが、それを認めたくない幾つかの国家は、アマノムラクモを太平洋上に存在する不確定な兵装組織としか見ていないという。
 故に実力で排除し、その技術を手に入れることが目的であるのだから、国家として認めることはできないのである。

 万が一にもアマノムラクが国家であると認めたならば、それは国家間戦争ということになる。さらにはアマノムラクモと平和協定なり通商条約を結んだ国家に攻められるのは確実。
 それ故に、先進国諸国もまた、アマノムラクモへの対応については慎重であるといえよう。

「今後の、アマノムラクモとの交渉に使える素材が減る。軍事だけでなく医療水準でさえ、この地球上のどこでも価値あることができないとなると。かの女帝ミサキ・テンドウが我々に何を欲するか……いや、それはまた、後日考えるとしよう。この提案、表面上の言葉通りに受けるべきかどうか」

 パワード大統領の問いかけ。
 この答えによって、今後のミサキ・テンドウの対応も変化する。
 アメリカに最初に話をもたらしたのなら、もしもことわりの言葉なり非協力的な態度をとった場合、おそらくは次に他国へと話を持っていくのは簡単に予想がつく。

「これは、受けるべきでしょう。さらに、治療行為については、アメリカからも医師団を派遣し、彼らの立ち会いのもとで、治療行為を確認させてもらう。そうでなければ、患者の安全を確保することができません……国益も大切でありますが、何よりも人命は尊い。そこを履き違えなければよろしいかと」

 カマラ・アダムス副大統領が、パワード大統領に提案する。
 すでにロイド・マーチン国防長官や側近たちも同意見であり、ここでアメリカの懐の大きさを強調し、手を組んでおくべきだという意見で一致している。

「それと、可能であればこの機会に、以前話のあった在天アメリカ大使館の設営も申請するのがよろしいかと思います。これも我が国の国民を守るため、そう説明すれば納得していただからかと思いますが」
「カマラの言葉は、いつも正しいな……アマノムラクモから届けられたらメッセージについての返信。『我が国はいつでも、帰国の提案を受け入れる。それらについての外交的交渉の場を設けたい』以上だ」

──ザッ
 その場の全員が背筋を伸ばし、パワードに敬礼する。
 そしてすぐさま、国防総省を通じてアマノムラクモへの返信が行われた。

………
……


──太平洋上・アマノムラクモ
 アメリカ・国防総省からの通信を受けたヴァルトラウデは、すぐさまオクタ・ワンにメッセージ内容を通達。
 それをミサキに直接伝えて良いものかと、確認を取っていた。

「いや、確認するのは構わないけどさ、俺も艦橋にいるのを忘れていないか? しかも隠すことなく堂々とオクタ・ワンに聞いているのは、何か意図があるのか?」
『ピッ……様式美です。やはり他の勢力圏からの通達については、内部監査ののち責任者に通達するというのがお約束ではないかと?』
「なんで最後は疑問系なんだよ。それで?」
「はい、ではこちらを」

 だからさ、なんでわざわざ通信内容を印刷して、俺の元まで手渡しに来るのか説明してくれる? モニターを浮かべて映して終わりじゃないのか?

「はぁ~。これもオクタ・ワン曰くの様式美ってやつかよ……って、へぇ、なるほどね」

 受け取った連絡書には、アメリカからの通信の後ろでの会話まで、全てが書き留められている。
 おそらく向こうは無音の場所から送ったんだろうけれど、ほんのごく僅か、通信の向こうでの会話までオクタ・ワンが拾っていた。

『まずはアマノムラクモに大使館を設立する。そのための計画の一歩であることを……と……で、全てはアメリカのために……』

 うん、いくつか聞き取れない部分があったようだが、普通に考えておかしいからな? 録音とはいえそれを分析し、後ろの本当に小さな音を拾うってどれだけのテクノロジーだよ。

「それで、医療使節団の受け入れと大使館の設営、そのための会談を希望する……か。それじゃあ、敢えて目立ったことでもしますかね?」
『ピッ……アメリカに対して主砲を向けたのち、空砲を一撃。そして降伏か死か? なるほど外道ですな』
「分解されたいのかよ。それで、俺の意図は組めたのか?」
『ピッ……マーギア・リッターにてホワイトハウスに直接赴き、そこで話し合いに参加する。というところですか。今回はこちらからの提案故に、会談場所へ赴く必要がある。その場所はこちらが指定し、主戦力を持って向かうと』

 う~ん。
 そこまで考えていなかったんだけどなぁ。

「正解だ。ということだから、会談については了承する、場所はこちらが指定した場所、我々はマーギア・リッターにて向かうため、航空機による誘導を頼みたいと伝えてくれるか?」
『ピッ……24時間後にお願いします。すぐに返答すると、こちらに時間がないように感じられてしまい、向こうに有利な話に持ち込まれかねません。こういう時は、焦らし戦法が有効です』
「……なあ、本当に中に人はいないんだろうな?」

 オクタ・ワンの中に人がいて、中から話をしているようにも感じてくるわ。
 そうなると、中にいる奴は人間ではないということになるので、恐らくは神かその眷属。

『ピッ……そう言われると、だんだんと不安になります。しばし確認のお時間を』
「待て待て、それもいつもの冗談だよな?」
『ピッ……はい。揺らぎというものが必要ですから』

 はぁ。
 この俺とオクタ・ワンのやり取りを見て、ヒルデガルドたちもくすくすと笑っているよ。
 全く、よく出来た魔導頭脳とサーバントたちだよ、本当に。
 
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