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第二十六話・奇跡は起こすためにある? いえ、お膳立てはオッケーです。
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魔導騎士同好会と魔導騎士部による、全国大会北海道予選参加枠を賭けての、校内予選会。
ここまで一勝一敗の五分と五分。
まさかの銀河の敗北から始まった校内予選は、ニ回戦の秋穂波の完勝によりスコアをイーブンに戻した。
そしてこれが最後、大将戦がいよいよ始まる。
「あうあうあう」
うわぁ、星野先輩が天井を見てアウアウしている。
気持ちはわかりますよ、うんうん。
いきなり負けた俺がいう事じゃないが、ここまでくると、少しは欲が出てしまう。
「星野さん、悪くてもイーブン、引き分けまで持ち込んでください。あとは私が十六夜君が、どうにかしますわ」
「まあ、こっちは急ぎで調整しているから。これでなんとかできるようにするわ」
万が一の場合を考慮して、
俺は、切り札の用意を始める。
ちなみに俺の切り札は、市販タイプの量産機。
小さい時に使ってから、親父たちからは絶対に使うなと言われていた市販品だけど、今回はそれをカスタマイズしている。
なんで使うなと言われたのか、今となってはなにも思い出せないけれど、もうそんなことを言っている場合じゃない。
「そっちは星野さんが大将か。大方あれだな、十六夜と秋穂波さんで二勝して終わらす予定だったんだろう?」
現在の魔導騎士部の部長である八反龍が、愛機『ドラグーン』をバトルリングにセットしている。
まあ、図星なんだよなぁ。
「その通りですよ、先輩‼︎」
「堂々と勝利宣言しておいて、負けるとはなぁ……」
「いや、今回は俺も勉強になりましたよ。という事で、我が同好会最強の星野先輩が、お相手ですよ」
「そんなフリはいりませんよぉ‼︎」
そう反射的に突っ込みつつも、星野先輩もリングに魔導騎士をセットする。
【魔導騎士マーギア・ギアセット。機体コードAT12ハンター。ギアネーム・ネヴュラ】
大型モニターに、星野先輩のネヴュラが映し出される。
女性型で外見はエルフ。
背中に弓を矢筒を装備し、腰からショートソードと左手のバックラーという、重装型の機体である。
この機体紹介が行われた時、観客席がザワザワしているのは、おそらくネヴュラの機体コードのせいだろう。
俺のブレイザーと同じATナンバー機、まさか現存しているとは誰も思っていないだろう。
博物館送りになってもおかしくないほど、ロートル機であるから。
【魔導騎士セット。機体コードMD00596MM、ギアネーム・ドラグーン】
かたや龍先輩の機体は重装騎士。
タワーシールドにハルバード、明らかに引き分け狙いがよくわかる機体だ。
「それじゃあ、最後のお楽しみといきましょうか。君たちは、来年になってから世界を目指し給え」
「で、では、貴方は大学選手権で頑張ってください」
「うはぁ、星野さん、言うねぇ……それじゃあ、お手柔らかに」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
◾️◾️◾️◾️BATTLE START ■◾️◾️◾️
──ゴゥゥゥゥゥゥ
最終戦も、公式ルールに則り闘技場がバトルステージ。
開始線の前で、腰を低くしたドラグーンと、半身に立って身構えるネヴュラが、お互いを睨むように見つめている。
「かかって来ないのかい?」
「まだ、そのタイミングではありませんので」
冷静に言葉を返す星野だが、八反もまた、一歩も動かずに周辺を確認している。
「特に、何かを飛ばしている形跡はない……か、それじゃあ、グッバイ‼︎」
──ダッ‼︎
ドラグーンがタワーシールドを構えて突っ込んでくる。
俗に言うシールドバッシュ、巨大なタワーシールドでの体当たり攻撃である。
──ヒュン
だが、ネヴュラはそれをあっさりと回避すると、再び間合いを取る。
──チャキッ
すかさず山を取り出して矢を番えると、ギリリとドラグーン目掛けて一射‼︎
──ドシュッ
狙いは悪くない。
ただ、ドラグーンが一歩だけ上。
飛んできた角度から着弾点を計算し、最低限の動きで交わして。
──ドッゴォォォォォォン
矢が軌道を変えて、ドラグーンの盾を破壊した。
その爆発の勢いにより、ドラグーンにダメージ1のチェックが入った。
「なっ、なんだそりゃ‼︎」
「あ、この矢、矢の形してますがミサイルですので」
「は、はぁ? 弓の意味がないだろうが‼︎」
「エルフですから、弓は必要です‼︎」
──ギリリ
再び矢を番えると、今度は的確にドラグーンを狙う。
だが、先程とは違い、ドラグーンは全力で走り出して飛んでくる矢を躱していた。
「同じ手が、二度も通用するかよ‼︎」
「そ、そんなぁ!」
──ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ
次々と矢を打ち出しているが、残念ながらどれも命中しない。
そして。
「はぁぁぁぁ、矢が切れました」
背中の矢筒の中には、もうミサイルアローは一本も残っていない。
それならばと、ネヴュラは高速で走りだし、ドラグーンから間合いをどんどん離していく。
「八反、ポイントを取らないと時間切れに持ち込まれるぞ‼︎」
「やっべ、そんじゃ行きますわ‼︎」
──ゴゥゥゥゥゥゥ
ドラグーンの脚部脹脛の部分が展開し、大型ノズルが現れる。
そこから圧縮空気を噴き出しながら、ドラグーンが高速でネヴュラに向かって飛び込んでいった‼︎
「ごめんね‼︎」
「うそ、そんなに早く動けるなんて‼︎」
──斬‼︎
力強く振りかぶり、そのまま一刀両断。
刀身に魔力を薄く展開しているので、切断力は格段である。
一撃でネヴュラの左肩から切断し、左腕が地面に落ちる。
──ビビビッ
この一発で、ダメージゲージが半分も削られている。
「な、なんだって? 紙装甲かよ‼︎」
「紙じゃありません。強いて言うなら、神装甲‼︎」
反射的に言い返してから、ネヴュラはパックジャンプで間合いを取る。
このままでは、時間切れ引き分けに持ち込むことは不可能。
「そんじゃ、あとは逃げさせてもらいますからね‼︎」
そう宣言してから、ドラグーンが両腕をクロスしたまま後方にホバーダッシュ。
一気に間合いを取ると、回避運動を開始した。
「こ、このままではまずいです‼︎」
素早く走り込んで、残った右手でショートソードを構えるものの、バランスが崩れているので思うように振り回すことができない。
──ギン、ガギン
その貧弱な攻撃を、あえて正面から受け入れるドラグーン。
ネヴュラのショートソードの軌跡に合わせてハルバードを振るい、柄の部分で受け止め、流す。
さらに隙を見てハルバードの一撃を叩き込むが、流石に今回は警戒されていたので、ネヴュラも必死になって交わしている。
そのまま一進一退の攻防が繰り広げられるが、ふと気がつくと、試合時間はあと三分。
「それじゃあ、あとは諦めてね」
すかさず間合いを取り、ホバーブースターで高速移動を開始するドラグーン。
明らかに逃げの一手であるのだが、公式戦ではこれは反則には当たらない。
まあ、観客やファンは正面からの戦闘を楽しみにしているものが多いため、このような逃げの一手はブーイングが出てもおかしくはないのだが、これは校内予選。
「まあ、汚い手だっていうのは理解しているけどさ。ここで正面からやり合って、変にラッキーパンチを貰うわけにはいかないんだよ」
「そ、そこまで考えていたのですか‼︎」
「まぁね。だから、こんな汚い手だからこそ、俺自身がやっただけさ。他の部員には、楽しく戦ってもらいたいからね」
八反がそう告げると、星野も覚悟を決めた。
「そ、そうですよね。勝つためには、非情にならないとならないのですよね」
ゆっくりと後退を始めるネヴュラ。
まもなく試合カウントは一分を切る。
そして、最初の戦闘区域に戻っていくと、ネヴュラは切断されて落ちている腕を掴む。
「……まあ、試合後に回収するよりも、先にって事?」
「いえ、実は、こういうことができまして」
切断された肩部の傷口を合わせる。
「ハイヒール‼︎」
──プシュゥゥゥゥゥ
傷口が輝き、腕が接合する。
──ウォォォオオォォォォ
これには観客も総立ち状態。
明らかにポイント優勢であったドラグーンだが、まさかの回復技には驚愕するしかなかった。
「ちっ、またポイントの取り直しかよ‼︎」
時間は間も無く終わりを告げる。
だが、まさかの状態に八反は冷静さを欠いてしまった。
「もう一撃入れれば、こっちの勝ちだろうがあ」
「そのタイミングを待っていました‼︎」
背中から弓を取り出して構える。
「マジックアロー‼︎」
──シュゥゥゥゥ
引き絞った蔓の先に、魔力で形成された矢が生み出される。
「シュートっ‼︎」
──シュパァァァァ
ネヴュラから放たれたマジックアローは、間髪入れずにドラグーンの胴体に突き刺さる‼︎
『タイムアウト‼︎』
ここで無慈悲なタイムアウトコール。
ダメージゲージでは、最後のネヴュラが放った矢が有効となり、僅か1ポイント差でネヴュラの勝利が確定した‼︎
◾️◾️◾️◾️GAME OVER ■◾️◾️◾️
「嘘だろ、あんな回復技が許されるなんてよ‼︎」
「ジャッジ‼︎ 最後のネヴュラの機体再生は反則じゃないのか‼︎」
魔導騎士部のメンバーがジャッジの五百万石に詰め寄るが、結果は覆らない。
「ネヴュラの使用した『機体修復技』については、世界大会においてスイス代表が使用したこともあり、レギュレーションとしても問題はない‼︎」
「でも、ダメージゲージまで回復されたら、その技を知らない奴らが不利じゃないか!」
「ん? ダメージゲージは回復していないぞ?」
「「「「「はぁ?」」」」」
慌てて八反がバトルリングのモニターを確認する。
たしかに、ネヴュラのハイヒールによる回復では、ダメージゲージは回復していない。
ただ機体が修復しただけであり、それでダメージゲージが回復したと勘違いした八反のミスである。
「そ、そんなぁ‼︎」
「まあ、戦闘中に機体が修復するシーンなんて、初めて見ただろうからなぁ。スイス代表は、複合装甲の下で同じように回復技を使っているから、傍目には見えないんだ」
「八反のアホぉぉぉぉ」
ジャッジの宣言を聞いて、その場に座り込む八反。
これで、今年度の北広島西高等学校代表が、魔導騎士同好会に決定してのである。
「……勝ったわ……十六夜君、勝ったのよ‼︎」
「ホンヒョハ、ハカッテマフワ」
嬉しさのあまり両手をあげて叫ぶ秋穂波と、自分の頬を力一杯引っ張る銀河。
「ゲームセット。ゲームアカウント2:1で、魔導騎士同好会の勝利‼︎」
ジャッジの宣言で、両チームがお互いに挨拶する。
これで魔導騎士部三年の、最後の戦いは終わりを告げる。
そして、勝利した魔導騎士同好会は、来週から始まる南北海道大会のために、この短期間で様々な準備をしなくてはならなかった。
ここまで一勝一敗の五分と五分。
まさかの銀河の敗北から始まった校内予選は、ニ回戦の秋穂波の完勝によりスコアをイーブンに戻した。
そしてこれが最後、大将戦がいよいよ始まる。
「あうあうあう」
うわぁ、星野先輩が天井を見てアウアウしている。
気持ちはわかりますよ、うんうん。
いきなり負けた俺がいう事じゃないが、ここまでくると、少しは欲が出てしまう。
「星野さん、悪くてもイーブン、引き分けまで持ち込んでください。あとは私が十六夜君が、どうにかしますわ」
「まあ、こっちは急ぎで調整しているから。これでなんとかできるようにするわ」
万が一の場合を考慮して、
俺は、切り札の用意を始める。
ちなみに俺の切り札は、市販タイプの量産機。
小さい時に使ってから、親父たちからは絶対に使うなと言われていた市販品だけど、今回はそれをカスタマイズしている。
なんで使うなと言われたのか、今となってはなにも思い出せないけれど、もうそんなことを言っている場合じゃない。
「そっちは星野さんが大将か。大方あれだな、十六夜と秋穂波さんで二勝して終わらす予定だったんだろう?」
現在の魔導騎士部の部長である八反龍が、愛機『ドラグーン』をバトルリングにセットしている。
まあ、図星なんだよなぁ。
「その通りですよ、先輩‼︎」
「堂々と勝利宣言しておいて、負けるとはなぁ……」
「いや、今回は俺も勉強になりましたよ。という事で、我が同好会最強の星野先輩が、お相手ですよ」
「そんなフリはいりませんよぉ‼︎」
そう反射的に突っ込みつつも、星野先輩もリングに魔導騎士をセットする。
【魔導騎士マーギア・ギアセット。機体コードAT12ハンター。ギアネーム・ネヴュラ】
大型モニターに、星野先輩のネヴュラが映し出される。
女性型で外見はエルフ。
背中に弓を矢筒を装備し、腰からショートソードと左手のバックラーという、重装型の機体である。
この機体紹介が行われた時、観客席がザワザワしているのは、おそらくネヴュラの機体コードのせいだろう。
俺のブレイザーと同じATナンバー機、まさか現存しているとは誰も思っていないだろう。
博物館送りになってもおかしくないほど、ロートル機であるから。
【魔導騎士セット。機体コードMD00596MM、ギアネーム・ドラグーン】
かたや龍先輩の機体は重装騎士。
タワーシールドにハルバード、明らかに引き分け狙いがよくわかる機体だ。
「それじゃあ、最後のお楽しみといきましょうか。君たちは、来年になってから世界を目指し給え」
「で、では、貴方は大学選手権で頑張ってください」
「うはぁ、星野さん、言うねぇ……それじゃあ、お手柔らかに」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
◾️◾️◾️◾️BATTLE START ■◾️◾️◾️
──ゴゥゥゥゥゥゥ
最終戦も、公式ルールに則り闘技場がバトルステージ。
開始線の前で、腰を低くしたドラグーンと、半身に立って身構えるネヴュラが、お互いを睨むように見つめている。
「かかって来ないのかい?」
「まだ、そのタイミングではありませんので」
冷静に言葉を返す星野だが、八反もまた、一歩も動かずに周辺を確認している。
「特に、何かを飛ばしている形跡はない……か、それじゃあ、グッバイ‼︎」
──ダッ‼︎
ドラグーンがタワーシールドを構えて突っ込んでくる。
俗に言うシールドバッシュ、巨大なタワーシールドでの体当たり攻撃である。
──ヒュン
だが、ネヴュラはそれをあっさりと回避すると、再び間合いを取る。
──チャキッ
すかさず山を取り出して矢を番えると、ギリリとドラグーン目掛けて一射‼︎
──ドシュッ
狙いは悪くない。
ただ、ドラグーンが一歩だけ上。
飛んできた角度から着弾点を計算し、最低限の動きで交わして。
──ドッゴォォォォォォン
矢が軌道を変えて、ドラグーンの盾を破壊した。
その爆発の勢いにより、ドラグーンにダメージ1のチェックが入った。
「なっ、なんだそりゃ‼︎」
「あ、この矢、矢の形してますがミサイルですので」
「は、はぁ? 弓の意味がないだろうが‼︎」
「エルフですから、弓は必要です‼︎」
──ギリリ
再び矢を番えると、今度は的確にドラグーンを狙う。
だが、先程とは違い、ドラグーンは全力で走り出して飛んでくる矢を躱していた。
「同じ手が、二度も通用するかよ‼︎」
「そ、そんなぁ!」
──ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ
次々と矢を打ち出しているが、残念ながらどれも命中しない。
そして。
「はぁぁぁぁ、矢が切れました」
背中の矢筒の中には、もうミサイルアローは一本も残っていない。
それならばと、ネヴュラは高速で走りだし、ドラグーンから間合いをどんどん離していく。
「八反、ポイントを取らないと時間切れに持ち込まれるぞ‼︎」
「やっべ、そんじゃ行きますわ‼︎」
──ゴゥゥゥゥゥゥ
ドラグーンの脚部脹脛の部分が展開し、大型ノズルが現れる。
そこから圧縮空気を噴き出しながら、ドラグーンが高速でネヴュラに向かって飛び込んでいった‼︎
「ごめんね‼︎」
「うそ、そんなに早く動けるなんて‼︎」
──斬‼︎
力強く振りかぶり、そのまま一刀両断。
刀身に魔力を薄く展開しているので、切断力は格段である。
一撃でネヴュラの左肩から切断し、左腕が地面に落ちる。
──ビビビッ
この一発で、ダメージゲージが半分も削られている。
「な、なんだって? 紙装甲かよ‼︎」
「紙じゃありません。強いて言うなら、神装甲‼︎」
反射的に言い返してから、ネヴュラはパックジャンプで間合いを取る。
このままでは、時間切れ引き分けに持ち込むことは不可能。
「そんじゃ、あとは逃げさせてもらいますからね‼︎」
そう宣言してから、ドラグーンが両腕をクロスしたまま後方にホバーダッシュ。
一気に間合いを取ると、回避運動を開始した。
「こ、このままではまずいです‼︎」
素早く走り込んで、残った右手でショートソードを構えるものの、バランスが崩れているので思うように振り回すことができない。
──ギン、ガギン
その貧弱な攻撃を、あえて正面から受け入れるドラグーン。
ネヴュラのショートソードの軌跡に合わせてハルバードを振るい、柄の部分で受け止め、流す。
さらに隙を見てハルバードの一撃を叩き込むが、流石に今回は警戒されていたので、ネヴュラも必死になって交わしている。
そのまま一進一退の攻防が繰り広げられるが、ふと気がつくと、試合時間はあと三分。
「それじゃあ、あとは諦めてね」
すかさず間合いを取り、ホバーブースターで高速移動を開始するドラグーン。
明らかに逃げの一手であるのだが、公式戦ではこれは反則には当たらない。
まあ、観客やファンは正面からの戦闘を楽しみにしているものが多いため、このような逃げの一手はブーイングが出てもおかしくはないのだが、これは校内予選。
「まあ、汚い手だっていうのは理解しているけどさ。ここで正面からやり合って、変にラッキーパンチを貰うわけにはいかないんだよ」
「そ、そこまで考えていたのですか‼︎」
「まぁね。だから、こんな汚い手だからこそ、俺自身がやっただけさ。他の部員には、楽しく戦ってもらいたいからね」
八反がそう告げると、星野も覚悟を決めた。
「そ、そうですよね。勝つためには、非情にならないとならないのですよね」
ゆっくりと後退を始めるネヴュラ。
まもなく試合カウントは一分を切る。
そして、最初の戦闘区域に戻っていくと、ネヴュラは切断されて落ちている腕を掴む。
「……まあ、試合後に回収するよりも、先にって事?」
「いえ、実は、こういうことができまして」
切断された肩部の傷口を合わせる。
「ハイヒール‼︎」
──プシュゥゥゥゥゥ
傷口が輝き、腕が接合する。
──ウォォォオオォォォォ
これには観客も総立ち状態。
明らかにポイント優勢であったドラグーンだが、まさかの回復技には驚愕するしかなかった。
「ちっ、またポイントの取り直しかよ‼︎」
時間は間も無く終わりを告げる。
だが、まさかの状態に八反は冷静さを欠いてしまった。
「もう一撃入れれば、こっちの勝ちだろうがあ」
「そのタイミングを待っていました‼︎」
背中から弓を取り出して構える。
「マジックアロー‼︎」
──シュゥゥゥゥ
引き絞った蔓の先に、魔力で形成された矢が生み出される。
「シュートっ‼︎」
──シュパァァァァ
ネヴュラから放たれたマジックアローは、間髪入れずにドラグーンの胴体に突き刺さる‼︎
『タイムアウト‼︎』
ここで無慈悲なタイムアウトコール。
ダメージゲージでは、最後のネヴュラが放った矢が有効となり、僅か1ポイント差でネヴュラの勝利が確定した‼︎
◾️◾️◾️◾️GAME OVER ■◾️◾️◾️
「嘘だろ、あんな回復技が許されるなんてよ‼︎」
「ジャッジ‼︎ 最後のネヴュラの機体再生は反則じゃないのか‼︎」
魔導騎士部のメンバーがジャッジの五百万石に詰め寄るが、結果は覆らない。
「ネヴュラの使用した『機体修復技』については、世界大会においてスイス代表が使用したこともあり、レギュレーションとしても問題はない‼︎」
「でも、ダメージゲージまで回復されたら、その技を知らない奴らが不利じゃないか!」
「ん? ダメージゲージは回復していないぞ?」
「「「「「はぁ?」」」」」
慌てて八反がバトルリングのモニターを確認する。
たしかに、ネヴュラのハイヒールによる回復では、ダメージゲージは回復していない。
ただ機体が修復しただけであり、それでダメージゲージが回復したと勘違いした八反のミスである。
「そ、そんなぁ‼︎」
「まあ、戦闘中に機体が修復するシーンなんて、初めて見ただろうからなぁ。スイス代表は、複合装甲の下で同じように回復技を使っているから、傍目には見えないんだ」
「八反のアホぉぉぉぉ」
ジャッジの宣言を聞いて、その場に座り込む八反。
これで、今年度の北広島西高等学校代表が、魔導騎士同好会に決定してのである。
「……勝ったわ……十六夜君、勝ったのよ‼︎」
「ホンヒョハ、ハカッテマフワ」
嬉しさのあまり両手をあげて叫ぶ秋穂波と、自分の頬を力一杯引っ張る銀河。
「ゲームセット。ゲームアカウント2:1で、魔導騎士同好会の勝利‼︎」
ジャッジの宣言で、両チームがお互いに挨拶する。
これで魔導騎士部三年の、最後の戦いは終わりを告げる。
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