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第4章・北方諸国漫遊と、契約の精霊と
第196話・対不死者の道具とは?
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型録通販のシャーリィ。
これは異世界の商品を取り寄せることができるという、精霊女王の加護によって生み出された魔導書。
ロシマカープ王国王都へ侵攻してきた魔族の軍勢。
それも、不死王率いるアンデットの軍勢となると、普通の冒険者や騎士では太刀打ちすることもできません。
聖職者、それも上位の方々の浄化魔法や聖属性付与といった魔法ならば効果はあるかと思います。
それらの秘技は聖女様が降臨したヴェルディーナ王国が管理していたのですが、そのヴェルディーナも魔族の襲撃により滅んでしまいました……。
「クリスティナさま!!」
「私はもう大丈夫です、柚月さんのサポートか結界の中に避難してきた人たちの治癒をお願いします!」
「かしこまりました」
ノワールさんはすぐさま怪我人を集めて、回復魔術を発動しています。
彼女は聖職者としての回復魔術は使えませんけど、竜魔法という幻獣種竜族にしか使えない魔法があるそうです。
「柚月さん、魔力は大丈夫ですか?」
「あ~しなら大丈夫だし。回復しながら魔法を持続するから、クリスっちはできることをするし!!」
──ボリッ
柚月さんはポケットから取り出した薄茶色の棒状の駄菓子、それを咥えて噛み砕きました。
すると消耗した魔力が少しずつ回復しています。
「そ、それはサライのお祭りの売れ残り!!」
「魔力の持続回復効果付きの、ココアシガレットだし!」
あ~、ありましたね。
回復量が少ないのと、そもそも魔術師が港町のお祭りにやってくるとは思わなかったので在庫が余っていましたね。
それじゃあ、私にできることを探しましょう。
シャーリィの魔導書が、私の意思に反応して高速でページを巡っています。
そしてあるページに辿り着くと、そのまま止まりました。
「このページは、対魔族戦の切り札でも……お彼岸?」
異世界のお彼岸用商品。
供物とか儀式に必要な道具が並んでいます。
「そうか、お彼岸ですね!!」
前に見かけた時、ものは試しに購入したお彼岸用の道具。
これを使えということなのですね?
「この説明によりますと、仏様への供養に必要な五供が必要なのですね」
お線香は、あります。
まず、アイテムボックスからお線香を取り出して火を付け、香炉にそれをお供えしなくてはなりません。
でも、香炉なんてないので今はパス、火をつけて結界の真ん中に供えます。
すると、結界の中に香りが漂いはじめ、やがて外へと流れて行きました。
──スゥゥゥゥゥッ
心なしか、結界の中の人々の体もほんのりと光始めます。
「これは浄化の術式だし!! クリスっち、何をしたし」
「お、お線香を焚きました。心が穏やかに、正常な気持ちになります」
「聖属性が付与されたし!!」
「ええええええ!!」
ちょ、ちょっと待ってください。
お線香を鑑定して……。
『ピッ、対アンデット効果を付与』
あ、間違いではありませんね。
しかも、結界から溢れるお線香の香りが苦手なのか、アンデットの群れが少し離れはじめました。
遠巻きに武器を構え威嚇していますが、やはりお線香の香りの範囲には近寄ってきません。
「クリスティナさま、他にはありませんか?」
「他にって……ええ、蝋燭?」
「それも灯すし」
は、はい。
今度は先に鑑定して。
『ピッ、対アンデット効果を付与』
「また分かりづらいですよぉ!」
急いで蝋燭を取り出したら火をつけます。
そして地面に溶けた蝋を垂らしてそこに蝋燭を固定しますと。
あ、心なしか気分も落ち着いてきます。
結界に逃げてきた人たちの表情も、心なしか落ち着いて穏やかになっているように感じます。
しかも、結界の外で私たちに牽制していたアンデットたちの手も収まり始め、どことなく蝋燭を眺めているかのように思われます。
「柚月さま、この効果は何ですか!!」
「ノワっち、あ~しもオバァか聞いたことしか知らないし。でも、お線香は『安穏と清浄』を与え、蝋燭は『闇を照らす道標、自らを燃やして周りを浄化する』っていうことしか知らないし。だから、お彼岸には俺ちゃんと五供を備えるって話していたし」
「ゴクウですか……対アンデット用の最強兵器といいますか、なんといいますか」
「ゴクウは、心の安らぎだし」
ゴクウ、流石です。
それはともかく、効果があると分かったのなら、これを結界のあちこちに設置しましょう。
すでにアンデットは結界から離れ、一部はチリのように散っています。
これが浄化の力なのでしょうか。
結界の中心では、周囲のアンデットの動きを見て安全だと判断したのか、柚月さんが消えゆくアンデットに手を合わせています。
「柚月さん、それは?」
「合掌だし。アンデットってつまり、死ぬことができない彷徨える魂や、無念のままに散った人たちだから。これで、ようやく落ち着いてくれると思うから、お見送りするだけだし。だから、合掌」
そう告げてから、柚月さんが目を閉じて祈りはじめます。
「そっか。アンデットは浄化されなかった魂ですか……」
私も静かに手を合わせます。
魔族によって操られた魂が、せめて安らかに眠りにつきますようにと。
そしてふと気がつくと、避難してきた人たちも、散りゆく魂へ手を合わせていました。
やがて、私たちの祈りが届いたのか、結界の周りに集まっていた不死者たちの姿は全て消えていました。
これは異世界の商品を取り寄せることができるという、精霊女王の加護によって生み出された魔導書。
ロシマカープ王国王都へ侵攻してきた魔族の軍勢。
それも、不死王率いるアンデットの軍勢となると、普通の冒険者や騎士では太刀打ちすることもできません。
聖職者、それも上位の方々の浄化魔法や聖属性付与といった魔法ならば効果はあるかと思います。
それらの秘技は聖女様が降臨したヴェルディーナ王国が管理していたのですが、そのヴェルディーナも魔族の襲撃により滅んでしまいました……。
「クリスティナさま!!」
「私はもう大丈夫です、柚月さんのサポートか結界の中に避難してきた人たちの治癒をお願いします!」
「かしこまりました」
ノワールさんはすぐさま怪我人を集めて、回復魔術を発動しています。
彼女は聖職者としての回復魔術は使えませんけど、竜魔法という幻獣種竜族にしか使えない魔法があるそうです。
「柚月さん、魔力は大丈夫ですか?」
「あ~しなら大丈夫だし。回復しながら魔法を持続するから、クリスっちはできることをするし!!」
──ボリッ
柚月さんはポケットから取り出した薄茶色の棒状の駄菓子、それを咥えて噛み砕きました。
すると消耗した魔力が少しずつ回復しています。
「そ、それはサライのお祭りの売れ残り!!」
「魔力の持続回復効果付きの、ココアシガレットだし!」
あ~、ありましたね。
回復量が少ないのと、そもそも魔術師が港町のお祭りにやってくるとは思わなかったので在庫が余っていましたね。
それじゃあ、私にできることを探しましょう。
シャーリィの魔導書が、私の意思に反応して高速でページを巡っています。
そしてあるページに辿り着くと、そのまま止まりました。
「このページは、対魔族戦の切り札でも……お彼岸?」
異世界のお彼岸用商品。
供物とか儀式に必要な道具が並んでいます。
「そうか、お彼岸ですね!!」
前に見かけた時、ものは試しに購入したお彼岸用の道具。
これを使えということなのですね?
「この説明によりますと、仏様への供養に必要な五供が必要なのですね」
お線香は、あります。
まず、アイテムボックスからお線香を取り出して火を付け、香炉にそれをお供えしなくてはなりません。
でも、香炉なんてないので今はパス、火をつけて結界の真ん中に供えます。
すると、結界の中に香りが漂いはじめ、やがて外へと流れて行きました。
──スゥゥゥゥゥッ
心なしか、結界の中の人々の体もほんのりと光始めます。
「これは浄化の術式だし!! クリスっち、何をしたし」
「お、お線香を焚きました。心が穏やかに、正常な気持ちになります」
「聖属性が付与されたし!!」
「ええええええ!!」
ちょ、ちょっと待ってください。
お線香を鑑定して……。
『ピッ、対アンデット効果を付与』
あ、間違いではありませんね。
しかも、結界から溢れるお線香の香りが苦手なのか、アンデットの群れが少し離れはじめました。
遠巻きに武器を構え威嚇していますが、やはりお線香の香りの範囲には近寄ってきません。
「クリスティナさま、他にはありませんか?」
「他にって……ええ、蝋燭?」
「それも灯すし」
は、はい。
今度は先に鑑定して。
『ピッ、対アンデット効果を付与』
「また分かりづらいですよぉ!」
急いで蝋燭を取り出したら火をつけます。
そして地面に溶けた蝋を垂らしてそこに蝋燭を固定しますと。
あ、心なしか気分も落ち着いてきます。
結界に逃げてきた人たちの表情も、心なしか落ち着いて穏やかになっているように感じます。
しかも、結界の外で私たちに牽制していたアンデットたちの手も収まり始め、どことなく蝋燭を眺めているかのように思われます。
「柚月さま、この効果は何ですか!!」
「ノワっち、あ~しもオバァか聞いたことしか知らないし。でも、お線香は『安穏と清浄』を与え、蝋燭は『闇を照らす道標、自らを燃やして周りを浄化する』っていうことしか知らないし。だから、お彼岸には俺ちゃんと五供を備えるって話していたし」
「ゴクウですか……対アンデット用の最強兵器といいますか、なんといいますか」
「ゴクウは、心の安らぎだし」
ゴクウ、流石です。
それはともかく、効果があると分かったのなら、これを結界のあちこちに設置しましょう。
すでにアンデットは結界から離れ、一部はチリのように散っています。
これが浄化の力なのでしょうか。
結界の中心では、周囲のアンデットの動きを見て安全だと判断したのか、柚月さんが消えゆくアンデットに手を合わせています。
「柚月さん、それは?」
「合掌だし。アンデットってつまり、死ぬことができない彷徨える魂や、無念のままに散った人たちだから。これで、ようやく落ち着いてくれると思うから、お見送りするだけだし。だから、合掌」
そう告げてから、柚月さんが目を閉じて祈りはじめます。
「そっか。アンデットは浄化されなかった魂ですか……」
私も静かに手を合わせます。
魔族によって操られた魂が、せめて安らかに眠りにつきますようにと。
そしてふと気がつくと、避難してきた人たちも、散りゆく魂へ手を合わせていました。
やがて、私たちの祈りが届いたのか、結界の周りに集まっていた不死者たちの姿は全て消えていました。
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