5 / 22
五卦・貴妃・紫瑞妃と瘴気病い
しおりを挟む
後宮の敷地は広く、まるで街が一つ入っているのではと思うほどの大きさがある。
その中でも四方に建てられた一際大きい屋敷が、四皇貴妃の住まう屋敷『宮』であり、その近くには中級妃たちの住まう屋敷と、その区画を纏めて世話をしている女官・下女たちの住まいが理路整然と立ち並んでいる。
「ええっと、後宮中央にある庭園の横には、東廠と六尚の建物が並び,この二つの屋敷で後宮の管理全般を行なわれています。特に東廠の責任者である洪氏は、先帝に仕えていた洪家の後継という噂がありまして……」
白梅相手に、淡々と後宮の説明をしつつ建物を紹介する女官。
たまたま白梅が道に迷っていたところを、皇貴妃の元に使いに出ていた彼女が通りかかり、道案内も兼ねて建物や施設の説明を行っている最中であった。
「へぇ。東廠は分かるけれど、六尚ってなんでしょうか? まだここにはきたばかりなので、それほど詳しくはないのですが」
「六尚は……ええっと、後宮の管理を行っているのが東廠であることはご存知ですよね? 六尚はその外局のようなものでして、帳簿を管理する尚宮局、儀礼全般を管理する尚儀局、衣服と儀仗、あと備品の管理をしている尚宮局と……」
一つ一つを指折り数えつつ説明する女官。
村で師父たちから一般的な教養は詰め込まれたものの、宮中に関する知識については皆無であった白梅は、彼女の言葉を一つ一つ、しっかりと頭の中に記憶していく。
時折り、女官が熱い視線を送って来るのは気のせいだと思いつつ、白梅は初めてみる後宮の姿に心を躍らせていた。
「帝の寝所や寝具の管理をしている尚寝局、ここはこの庭園の管理も行なっていますね。あとは……医局と食事を統括する尚食局で、最後は尚功局という、衣類関係の管理を行なっている局があります。ここは会計も担当していまして、一番頭の硬くて無愛想な宦官が働いているのですよ?」
「あはは。まあ、それだけ責任重大っていうことですよね。色々と知ることができて助かりました」
「どういたしまして。といういう事で、この辺りがちょうど、六尚に努める下女たちの住まいです。ちなみに私の仕事場は尚宮局ですので、何かお困りのことがありましたら、いつでもお声をかけてください」
広い後宮を、土地勘もない白梅が散策するということは即ち、迷子になるということ。
特に目印もなく立て看板もない後宮においては、自分たちの勤め先と六尚、東廠の屋敷の場所さえわかっているのなら、それほど困ることはない。
目印となる中央大庭園、そこに向かえば大抵はなんとかなるのだが、白梅は物珍しさに惹かれて、東門近くまでウロウロとやってきていた。
そこでは偶然出会った女官の一人に道を尋ね、ようやく中庭まで辿り着くことができたのである。
ただ、この女官は白梅を宦官と見たらしく、白梅を新しく配属された宦官だと勘違いして、丁寧な物腰で彼女に後宮についての説明をしてくれた。
そして懇切丁寧に話をしながら歩いていたのだが、白梅はふと、彼女の肩に瘴気が薄く張り付いていることに気がついた。
「はい、ありがとうございます。それはそうと、最近、肩が凝ったりしていませんか? 宜しければ見てあげますよ?」
「本当? 先日から、ちょっと張っているような感じなのですよね。医局でも軟膏を調薬してもらったのですけれど、今ひとつ効きが良くないような気がして」
近くの椅子に女官を座らせると、白梅は背後に周り両肩にそっと触れる。
すると、白梅の手から逃げるように瘴気が肩から首へとゆっくりと移動を始めたので、服の袖から小さな竹の短刀を取り出して左手に構え、それを瘴気に向けてから右手で印を組んだ。
すると、音もなく瘴気が首筋から離れ、霧のように散っていく。
「あら? なんだろう? いきなり肩が軽くなった感じがするわ。それに変な疲れみたいなものも取れたし。貴方って、尚食局に勤めているの?」
「あはは。私は東廠に勤めていますから、もしもまた調子を壊したら、庭園中央の四阿頂の近くに来てください。その横手にある建物が、私の勤め先なので」
「そうね、その時はまた、お願いしますね」
そのまま他愛無い話をしながら、東廠のある区画へと歩いているのだが、白梅はあちこちの建物の影、軒下、縁台の下あたりに蠢く瘴気に気がついた。
「それにしても……予想以上に瘴気が漂っているなぁ。これは体調を崩した妃たちも多いんじゃない?」
「え? 瘴気って? まあ、確かに体調を壊して寝込んだ妃たちもいらっしゃいますよ。帝の声掛けもなく、日々を暗い屋敷で悶々と過ごす方もいらっしゃいますし、見目綺麗な下女相手に女色に耽る方もいますからね」
「まあ、色恋を拗らせた負の気っていうところか。その程度なら体がだるくなったりする程度で、命に別状はないだろうからなぁ。あとで洪氏さまにも、説明しておきますか」
──パシッ!!
洪氏の名が出た瞬間、女官が白梅の両手を握りしめる。
「あ、貴方は洪氏さまと親しいのですか?」
「ええ、まあ……直属の上司……に当たるのかなぁ」
「ぜ、是非、東廠にて女官に御用の際は、玲花《レイファ》をご指名くださいませ!! ああ、洪氏さまぁ」
頬を染め、クネクネと身をくねらせている玲花をみて、やはりお前もかと白梅はため息を吐く。
東廠にて執務を行なっている宦官は、不思議と麗人が少ない。
その理由は、妃たちが帝以外の男性に対して情欲を持たないようにするためであり、宦官故に褥に呼びこまれても子をなすことは叶わない。
そのような場所故に、洪氏のような麗人は帝の声がけの無い下女や女官たちにとっては憧れであり、心をときめかせるには十分である。
なお、白地の長袍《チャンパオ》に袖を通している白梅も、男装の麗人といういで立ちに変化しているため、下女や女官たちからは熱い視線を送られている。
「はぁ、まあ、あまり迂闊なことを話して血袋にならないようにお気をつけください」
「誰が、女官を血袋になどするものが……ああ、君が白梅を連れてきてくれたのだね、ご苦労さま」
「ふぁ、ふぁい!!」
ふと、東廠の前に辿り着いた白梅と玲花の前に、ちょうど屋敷から出てきた洪氏が声を掛ける。
それだけで玲花は舞い上がり、幾度も頭を下げてはフラフラと雲の上を歩くかのようにその場から立ち去っていった。
「はぁ。女殺しもいいところですね、洪氏さま」
「そういう気は全くないのだけれど。まあ、それよりもそろそろ約束の時間だ。まずは紫瑞妃さまの元に向かいましょうか」
「紫瑞妃というと……ああ、貴妃様ですか」
「そう、後宮の妃の中でも序列一位、最も皇后に近いと言われている方だ。まあ、ちょっと癖があるけれど、それさえ気にしなければ大丈夫だから」
癖……ねぇ。
このような場所に住まう妃ゆえ、癖が少なく垢抜けている女性など存在しないと白梅は考える。
そうして洪氏と共に後宮の北側にある、紫瑞妃の住まう紫瑞宮へとやって来ると、そのまますぐに紫瑞妃に御目通りを行なったのだが。
「これは洪氏さま、この紫瑞宮までようこそ。そちらの方が、木簡に書かれていた相談役なのですね?」
紫の羅紗に銀糸の装飾、翡翠の髪飾りをつけた、ややきつい目線の女性。
そして体全体を覆うような瘴気。
それが、白梅から見た紫瑞妃の第一印象である。
一目見ただけで、彼女がどれほど羨望の目に晒され、多くの妃の嫉妬や妬み、怨みをかっているのかよくわかった。
「初めまして、紫瑞妃さま。東廠の相談役を拝命しました、白梅と申します」
揖礼で挨拶を行うと、紫瑞妃は軽く微笑んで頷く。
「はい、これからよろしくお願いしますね。木簡では女性と記されていましたが……」
「ええ。女性に間違いはありません。仕事柄、男装している方が都合がいいものでして」
淡々と説明する白梅に、紫瑞妃も頷く。
「わかったわ、まあ、貴方のことについては、あまり細かく聞くこともないでしょうから。それはそうと、貴方は相談役といいましたけれど、どのような相談でも大丈夫なのかしら?」
「はい。師父より占いについては一通りの知識を授かりました。また、多くの師範より様々な叡智を授かっています」
にっこりと微笑む白梅に、紫瑞妃も満足したのだろう。
先ほどよりも穏やかな表情になると、近くにある椅子に手をかける。
「そう……ちょっと座らせてもらうわね。どうも最近、足腰が痛み出して……医局の疾医《しつい》に薬を頂いたのですが、あまりよろしくなくて……こういう悩みも、相談にのってくれるのかしら?」
ちょっとだけ挑発的に感じるものの、心底から困っているのは白梅の目にもはっきりと分かる。
紫瑞妃の腰と足には、瘴気が塊のように張り付いていたのである。
漂い纏わりつく瘴気とは異なり、コブのように塊ができるとなると、それは明らかな怨恨。それも命を奪いかねない怨嗟に、紫瑞妃が蝕まれているのである。
「そうですね。根本的解決にはなりませんが、一時的には痛みを消すことは可能です」
「そんな出鱈目を言わないで頂戴!! 紫瑞妃さまは本当に困っているのよ? 疾医の薬でも治らなかったのに、たかが相談役の貴方に何ができるっていうのよ?」
「そうよそうよ」
「どこの家の方か分かりませんが、そんなに軽々しく紫瑞妃さまに出来るだなんて言わないで頂戴」
「これ、そのようなことをおっしゃってはいけません。白梅さん、下女たちが大変失礼しました
紫瑞妃の左に立つ下女が、白梅を見下すように呟くが、すぐに紫瑞妃がそれを諫める。
だが、彼女をはじめとする下女たちの身体から瘴気が溢れ、その一部が紫瑞妃の足に絡みついているのを白梅は見逃していない。
「はぁ……なんとなく原因も判ってきましたが……私は普通の相談役とは少し異なりますが。こちらの机をお借りして構いませんか?」
紫瑞妃の座る席の向かい、綺麗な花の彫刻が施された黒檀の円卓の前に回り込むと、白梅は懐から木札を取り出す。
「ええ、どうぞ。それで、何を占ってくれるのでしょう?」
「まあ、そうですね……」
木札を裏返し、ゆっくりと混ぜる。
それを束にして傍に置くと、白梅は窓の外を眺めて。
「昼下がりか。まあ、どうとでもなりますか」
彼女の仙術が真骨頂に達するのは月下。
それゆえ、今は魔逆に力が大きく削がれているものの、これだけ要因となるものがはっきりと判っていると、それほど力は必要としない。
「では、これより紫瑞妃さまの身体の痛み、その原因を調べ取り除いてみます」
そのように一言呟くと、木札を上から一枚一枚表向きにし、机の上に並べる。
「花の精、月下の盃、嫦娥《じょうが》の悲しみ、太極の夜……」
一つ一つの札を読み上げていると、その場の誰もが固唾を飲んで白梅の言葉に耳を傾ける。
先ほど白梅に苦言を呈した下女でさえ、白梅の手の動き、木札の絵柄と彼女の言葉に心を奪われそうになっていた。
白梅の口から占いの際に零れる言葉、それ自体にも仙気が含まれているため、彼女に対して嫌悪するものでさえ、今は黙って彼女のやりとりを見ているしかなかった。
「そして五枚目が瑞鳥。ええ、簡単ですよ。ちょっと失礼して構いませんか?」
左袖から竹の剣を取り出し、それを左手に構える。
そして右手で木札の一枚、花の精を手に取ると、それを紫瑞妃に向かって掲げ、素早く木札を真っ二つに切り裂く。
──ストン
音もなく竹の剣で切り裂かれた木札が床に落ちると、紫瑞妃の体、特に腰と足のあたりから黒い霧が立ち込め、切り裂かれた木札の中に吸い込まれていく。
その光景は、その場にいる紫瑞妃と洪氏、そして下女たちにもはっきりと見て取れた。
「な、なに、これはなんなの?」
「紫瑞妃さま、これは怨嗟の霧です。負の瘴気が凝り固まったものであり、紫瑞妃様を妬み恨む者たちの執念が集まったもので、これにより紫瑞妃さまの体調はおかしくなりました。でも、もう大丈夫です」
紫瑞妃の体から溢れた黒い霧の全てを吸い込むと、木札は静かに燃え上がる。
「これで、紫瑞妃さまの腰と足は元通り。どうですか?」
「え、あ、あら?」
紫瑞妃が恐る恐る立ち上がるが、先程までの辛さも痛みも何も無い。
寧ろ、今まで以上に腰が軽く、足取りもしっかりしている。
「嘘でしょ!! こんなに簡単に治るものなの?」
「はい。私は疾医ではありませんので、調薬による病の改善はできません。瘍医《ようい》のように悪い患部を切除して治療することもできませんし、食医のように体に良い食べ物を知っているわけではありませんが……人の心から生み出される瘴気、それによる病なら癒すことはできます」
にこりと笑う白梅。
すると紫瑞妃は彼女の手を取り、大きく頷いた。
「ね、ねぇ、貴方、うちの下女にならない? 洪氏さま、白梅を紫瑞宮付きの下女に頂けませんか?」
「ふぇ?」
「あはは。彼女は東廠のもの故、特定の宮に仕えることはできないのですよ。何卒、ご了承ください」
「あ、あら、あらあら、そうなの……うん、それなら仕方ないわね」
洪氏に諭され、やむなく諦める紫瑞妃。
だが、その彼女の左右の下女たちが、先ほどから腰や足を押さえ始めている。
「そうそう、紫瑞妃さまに纏わりついていた怨嗟の気ですが、今は一時的に切り離し浄化したに過ぎません。今一度、紫瑞妃さまを妬むものがあれば、また瘴気は凝り固まり体を蝕みます……なので」
──スッ
左袖から一枚の木札を取り出し、それを紫瑞妃に手渡す。
「これは、瘴気除けの霊符です。蓬莱山の清水にて摺り上げた朱墨にて記してあります。まあ、それでも駄目な時は、今一度私をお呼びください。手遅れでなければ、たちどころに解きほぐしてごらんに見せますので」
「わかったわ、ありがとう……ひとつ聞いてもいいかしら?」
「はぁ、まだなにか?」
ひょっとして、瘴気払いは自分の腕を試すためだったのかと勘ぐってしまう白梅だが、次の紫瑞妃の言葉に力が抜けていく。
「私にまとわりついていた瘴気って、つまり、誰かの恨みや妬みなのよね? それが解されたということは」
「ええ。瘴気返しもおこなってあります。東洋の島国の諺に、『人を呪わば穴二つ』というものがありまして。呪いはそれを解除されると、自身の元に戻ってくる、それを踏まえて恨みなさい……だったかな? まあ、そんな感じですので、紫瑞妃を呪っていたり恨みを持っていた方々は、ここ数日以内に足腰に耐えられないほどの痛みが伴うかと思いますので」
チラリと紫瑞妃の左右にいる下女たちを見ると、今の言葉に心当たりがあるのか真っ青な顔で立ちすくんでいる。
「そうなのね。まあ、恐らくは他の宮の女官や下女かも知れないわね。紫瑞宮の下女に、そのような不届きものはいないと信じていますから、では、ほんとうにありがとう」
嬉しそうに霊符を抱きしめて、紫瑞妃が礼の言葉を返す。
その表情に納得しつつ、その左右で必死に痛みに耐えようとしている下女に冷たい視線を送ると、白梅は揖礼をおこない頭を下げる。
「では、これで失礼します」
「はい、頑張ってね。洪氏さまも、わざわざありがとうございました」
「いえいえ。それでは私もこれで失礼します」
「はい、お勤め、お疲れ様でした」
そう告げて白梅と洪氏を見送ろうとする紫瑞妃だが、ふと、白梅はあることを思い出し、そのまま彼女の近くに歩み寄る。
「紫瑞妃さま、ちょっとお耳をお貸し頂きますか? これは人には聞かれたくない案件ですので」
「ええ、どうしたのかしら?」
そう問いかけつつ、頭を傾げて白梅に耳を預ける紫瑞妃だが。
白梅が耳元で呟いた一言に、顔中が真っ赤になる。
「では、これにて……くれぐれもお体、ご自愛ください」
「あ、ありがとう」
白梅が最後に、紫瑞妃に呟いた一言。
『帝の下で腰を突き上げるように振るのは、少し控えた方がよろしいかと』
瘴気による痛み以外にも、紫瑞妃の性豪さも腰痛の要因の一つであったとか。
その中でも四方に建てられた一際大きい屋敷が、四皇貴妃の住まう屋敷『宮』であり、その近くには中級妃たちの住まう屋敷と、その区画を纏めて世話をしている女官・下女たちの住まいが理路整然と立ち並んでいる。
「ええっと、後宮中央にある庭園の横には、東廠と六尚の建物が並び,この二つの屋敷で後宮の管理全般を行なわれています。特に東廠の責任者である洪氏は、先帝に仕えていた洪家の後継という噂がありまして……」
白梅相手に、淡々と後宮の説明をしつつ建物を紹介する女官。
たまたま白梅が道に迷っていたところを、皇貴妃の元に使いに出ていた彼女が通りかかり、道案内も兼ねて建物や施設の説明を行っている最中であった。
「へぇ。東廠は分かるけれど、六尚ってなんでしょうか? まだここにはきたばかりなので、それほど詳しくはないのですが」
「六尚は……ええっと、後宮の管理を行っているのが東廠であることはご存知ですよね? 六尚はその外局のようなものでして、帳簿を管理する尚宮局、儀礼全般を管理する尚儀局、衣服と儀仗、あと備品の管理をしている尚宮局と……」
一つ一つを指折り数えつつ説明する女官。
村で師父たちから一般的な教養は詰め込まれたものの、宮中に関する知識については皆無であった白梅は、彼女の言葉を一つ一つ、しっかりと頭の中に記憶していく。
時折り、女官が熱い視線を送って来るのは気のせいだと思いつつ、白梅は初めてみる後宮の姿に心を躍らせていた。
「帝の寝所や寝具の管理をしている尚寝局、ここはこの庭園の管理も行なっていますね。あとは……医局と食事を統括する尚食局で、最後は尚功局という、衣類関係の管理を行なっている局があります。ここは会計も担当していまして、一番頭の硬くて無愛想な宦官が働いているのですよ?」
「あはは。まあ、それだけ責任重大っていうことですよね。色々と知ることができて助かりました」
「どういたしまして。といういう事で、この辺りがちょうど、六尚に努める下女たちの住まいです。ちなみに私の仕事場は尚宮局ですので、何かお困りのことがありましたら、いつでもお声をかけてください」
広い後宮を、土地勘もない白梅が散策するということは即ち、迷子になるということ。
特に目印もなく立て看板もない後宮においては、自分たちの勤め先と六尚、東廠の屋敷の場所さえわかっているのなら、それほど困ることはない。
目印となる中央大庭園、そこに向かえば大抵はなんとかなるのだが、白梅は物珍しさに惹かれて、東門近くまでウロウロとやってきていた。
そこでは偶然出会った女官の一人に道を尋ね、ようやく中庭まで辿り着くことができたのである。
ただ、この女官は白梅を宦官と見たらしく、白梅を新しく配属された宦官だと勘違いして、丁寧な物腰で彼女に後宮についての説明をしてくれた。
そして懇切丁寧に話をしながら歩いていたのだが、白梅はふと、彼女の肩に瘴気が薄く張り付いていることに気がついた。
「はい、ありがとうございます。それはそうと、最近、肩が凝ったりしていませんか? 宜しければ見てあげますよ?」
「本当? 先日から、ちょっと張っているような感じなのですよね。医局でも軟膏を調薬してもらったのですけれど、今ひとつ効きが良くないような気がして」
近くの椅子に女官を座らせると、白梅は背後に周り両肩にそっと触れる。
すると、白梅の手から逃げるように瘴気が肩から首へとゆっくりと移動を始めたので、服の袖から小さな竹の短刀を取り出して左手に構え、それを瘴気に向けてから右手で印を組んだ。
すると、音もなく瘴気が首筋から離れ、霧のように散っていく。
「あら? なんだろう? いきなり肩が軽くなった感じがするわ。それに変な疲れみたいなものも取れたし。貴方って、尚食局に勤めているの?」
「あはは。私は東廠に勤めていますから、もしもまた調子を壊したら、庭園中央の四阿頂の近くに来てください。その横手にある建物が、私の勤め先なので」
「そうね、その時はまた、お願いしますね」
そのまま他愛無い話をしながら、東廠のある区画へと歩いているのだが、白梅はあちこちの建物の影、軒下、縁台の下あたりに蠢く瘴気に気がついた。
「それにしても……予想以上に瘴気が漂っているなぁ。これは体調を崩した妃たちも多いんじゃない?」
「え? 瘴気って? まあ、確かに体調を壊して寝込んだ妃たちもいらっしゃいますよ。帝の声掛けもなく、日々を暗い屋敷で悶々と過ごす方もいらっしゃいますし、見目綺麗な下女相手に女色に耽る方もいますからね」
「まあ、色恋を拗らせた負の気っていうところか。その程度なら体がだるくなったりする程度で、命に別状はないだろうからなぁ。あとで洪氏さまにも、説明しておきますか」
──パシッ!!
洪氏の名が出た瞬間、女官が白梅の両手を握りしめる。
「あ、貴方は洪氏さまと親しいのですか?」
「ええ、まあ……直属の上司……に当たるのかなぁ」
「ぜ、是非、東廠にて女官に御用の際は、玲花《レイファ》をご指名くださいませ!! ああ、洪氏さまぁ」
頬を染め、クネクネと身をくねらせている玲花をみて、やはりお前もかと白梅はため息を吐く。
東廠にて執務を行なっている宦官は、不思議と麗人が少ない。
その理由は、妃たちが帝以外の男性に対して情欲を持たないようにするためであり、宦官故に褥に呼びこまれても子をなすことは叶わない。
そのような場所故に、洪氏のような麗人は帝の声がけの無い下女や女官たちにとっては憧れであり、心をときめかせるには十分である。
なお、白地の長袍《チャンパオ》に袖を通している白梅も、男装の麗人といういで立ちに変化しているため、下女や女官たちからは熱い視線を送られている。
「はぁ、まあ、あまり迂闊なことを話して血袋にならないようにお気をつけください」
「誰が、女官を血袋になどするものが……ああ、君が白梅を連れてきてくれたのだね、ご苦労さま」
「ふぁ、ふぁい!!」
ふと、東廠の前に辿り着いた白梅と玲花の前に、ちょうど屋敷から出てきた洪氏が声を掛ける。
それだけで玲花は舞い上がり、幾度も頭を下げてはフラフラと雲の上を歩くかのようにその場から立ち去っていった。
「はぁ。女殺しもいいところですね、洪氏さま」
「そういう気は全くないのだけれど。まあ、それよりもそろそろ約束の時間だ。まずは紫瑞妃さまの元に向かいましょうか」
「紫瑞妃というと……ああ、貴妃様ですか」
「そう、後宮の妃の中でも序列一位、最も皇后に近いと言われている方だ。まあ、ちょっと癖があるけれど、それさえ気にしなければ大丈夫だから」
癖……ねぇ。
このような場所に住まう妃ゆえ、癖が少なく垢抜けている女性など存在しないと白梅は考える。
そうして洪氏と共に後宮の北側にある、紫瑞妃の住まう紫瑞宮へとやって来ると、そのまますぐに紫瑞妃に御目通りを行なったのだが。
「これは洪氏さま、この紫瑞宮までようこそ。そちらの方が、木簡に書かれていた相談役なのですね?」
紫の羅紗に銀糸の装飾、翡翠の髪飾りをつけた、ややきつい目線の女性。
そして体全体を覆うような瘴気。
それが、白梅から見た紫瑞妃の第一印象である。
一目見ただけで、彼女がどれほど羨望の目に晒され、多くの妃の嫉妬や妬み、怨みをかっているのかよくわかった。
「初めまして、紫瑞妃さま。東廠の相談役を拝命しました、白梅と申します」
揖礼で挨拶を行うと、紫瑞妃は軽く微笑んで頷く。
「はい、これからよろしくお願いしますね。木簡では女性と記されていましたが……」
「ええ。女性に間違いはありません。仕事柄、男装している方が都合がいいものでして」
淡々と説明する白梅に、紫瑞妃も頷く。
「わかったわ、まあ、貴方のことについては、あまり細かく聞くこともないでしょうから。それはそうと、貴方は相談役といいましたけれど、どのような相談でも大丈夫なのかしら?」
「はい。師父より占いについては一通りの知識を授かりました。また、多くの師範より様々な叡智を授かっています」
にっこりと微笑む白梅に、紫瑞妃も満足したのだろう。
先ほどよりも穏やかな表情になると、近くにある椅子に手をかける。
「そう……ちょっと座らせてもらうわね。どうも最近、足腰が痛み出して……医局の疾医《しつい》に薬を頂いたのですが、あまりよろしくなくて……こういう悩みも、相談にのってくれるのかしら?」
ちょっとだけ挑発的に感じるものの、心底から困っているのは白梅の目にもはっきりと分かる。
紫瑞妃の腰と足には、瘴気が塊のように張り付いていたのである。
漂い纏わりつく瘴気とは異なり、コブのように塊ができるとなると、それは明らかな怨恨。それも命を奪いかねない怨嗟に、紫瑞妃が蝕まれているのである。
「そうですね。根本的解決にはなりませんが、一時的には痛みを消すことは可能です」
「そんな出鱈目を言わないで頂戴!! 紫瑞妃さまは本当に困っているのよ? 疾医の薬でも治らなかったのに、たかが相談役の貴方に何ができるっていうのよ?」
「そうよそうよ」
「どこの家の方か分かりませんが、そんなに軽々しく紫瑞妃さまに出来るだなんて言わないで頂戴」
「これ、そのようなことをおっしゃってはいけません。白梅さん、下女たちが大変失礼しました
紫瑞妃の左に立つ下女が、白梅を見下すように呟くが、すぐに紫瑞妃がそれを諫める。
だが、彼女をはじめとする下女たちの身体から瘴気が溢れ、その一部が紫瑞妃の足に絡みついているのを白梅は見逃していない。
「はぁ……なんとなく原因も判ってきましたが……私は普通の相談役とは少し異なりますが。こちらの机をお借りして構いませんか?」
紫瑞妃の座る席の向かい、綺麗な花の彫刻が施された黒檀の円卓の前に回り込むと、白梅は懐から木札を取り出す。
「ええ、どうぞ。それで、何を占ってくれるのでしょう?」
「まあ、そうですね……」
木札を裏返し、ゆっくりと混ぜる。
それを束にして傍に置くと、白梅は窓の外を眺めて。
「昼下がりか。まあ、どうとでもなりますか」
彼女の仙術が真骨頂に達するのは月下。
それゆえ、今は魔逆に力が大きく削がれているものの、これだけ要因となるものがはっきりと判っていると、それほど力は必要としない。
「では、これより紫瑞妃さまの身体の痛み、その原因を調べ取り除いてみます」
そのように一言呟くと、木札を上から一枚一枚表向きにし、机の上に並べる。
「花の精、月下の盃、嫦娥《じょうが》の悲しみ、太極の夜……」
一つ一つの札を読み上げていると、その場の誰もが固唾を飲んで白梅の言葉に耳を傾ける。
先ほど白梅に苦言を呈した下女でさえ、白梅の手の動き、木札の絵柄と彼女の言葉に心を奪われそうになっていた。
白梅の口から占いの際に零れる言葉、それ自体にも仙気が含まれているため、彼女に対して嫌悪するものでさえ、今は黙って彼女のやりとりを見ているしかなかった。
「そして五枚目が瑞鳥。ええ、簡単ですよ。ちょっと失礼して構いませんか?」
左袖から竹の剣を取り出し、それを左手に構える。
そして右手で木札の一枚、花の精を手に取ると、それを紫瑞妃に向かって掲げ、素早く木札を真っ二つに切り裂く。
──ストン
音もなく竹の剣で切り裂かれた木札が床に落ちると、紫瑞妃の体、特に腰と足のあたりから黒い霧が立ち込め、切り裂かれた木札の中に吸い込まれていく。
その光景は、その場にいる紫瑞妃と洪氏、そして下女たちにもはっきりと見て取れた。
「な、なに、これはなんなの?」
「紫瑞妃さま、これは怨嗟の霧です。負の瘴気が凝り固まったものであり、紫瑞妃様を妬み恨む者たちの執念が集まったもので、これにより紫瑞妃さまの体調はおかしくなりました。でも、もう大丈夫です」
紫瑞妃の体から溢れた黒い霧の全てを吸い込むと、木札は静かに燃え上がる。
「これで、紫瑞妃さまの腰と足は元通り。どうですか?」
「え、あ、あら?」
紫瑞妃が恐る恐る立ち上がるが、先程までの辛さも痛みも何も無い。
寧ろ、今まで以上に腰が軽く、足取りもしっかりしている。
「嘘でしょ!! こんなに簡単に治るものなの?」
「はい。私は疾医ではありませんので、調薬による病の改善はできません。瘍医《ようい》のように悪い患部を切除して治療することもできませんし、食医のように体に良い食べ物を知っているわけではありませんが……人の心から生み出される瘴気、それによる病なら癒すことはできます」
にこりと笑う白梅。
すると紫瑞妃は彼女の手を取り、大きく頷いた。
「ね、ねぇ、貴方、うちの下女にならない? 洪氏さま、白梅を紫瑞宮付きの下女に頂けませんか?」
「ふぇ?」
「あはは。彼女は東廠のもの故、特定の宮に仕えることはできないのですよ。何卒、ご了承ください」
「あ、あら、あらあら、そうなの……うん、それなら仕方ないわね」
洪氏に諭され、やむなく諦める紫瑞妃。
だが、その彼女の左右の下女たちが、先ほどから腰や足を押さえ始めている。
「そうそう、紫瑞妃さまに纏わりついていた怨嗟の気ですが、今は一時的に切り離し浄化したに過ぎません。今一度、紫瑞妃さまを妬むものがあれば、また瘴気は凝り固まり体を蝕みます……なので」
──スッ
左袖から一枚の木札を取り出し、それを紫瑞妃に手渡す。
「これは、瘴気除けの霊符です。蓬莱山の清水にて摺り上げた朱墨にて記してあります。まあ、それでも駄目な時は、今一度私をお呼びください。手遅れでなければ、たちどころに解きほぐしてごらんに見せますので」
「わかったわ、ありがとう……ひとつ聞いてもいいかしら?」
「はぁ、まだなにか?」
ひょっとして、瘴気払いは自分の腕を試すためだったのかと勘ぐってしまう白梅だが、次の紫瑞妃の言葉に力が抜けていく。
「私にまとわりついていた瘴気って、つまり、誰かの恨みや妬みなのよね? それが解されたということは」
「ええ。瘴気返しもおこなってあります。東洋の島国の諺に、『人を呪わば穴二つ』というものがありまして。呪いはそれを解除されると、自身の元に戻ってくる、それを踏まえて恨みなさい……だったかな? まあ、そんな感じですので、紫瑞妃を呪っていたり恨みを持っていた方々は、ここ数日以内に足腰に耐えられないほどの痛みが伴うかと思いますので」
チラリと紫瑞妃の左右にいる下女たちを見ると、今の言葉に心当たりがあるのか真っ青な顔で立ちすくんでいる。
「そうなのね。まあ、恐らくは他の宮の女官や下女かも知れないわね。紫瑞宮の下女に、そのような不届きものはいないと信じていますから、では、ほんとうにありがとう」
嬉しそうに霊符を抱きしめて、紫瑞妃が礼の言葉を返す。
その表情に納得しつつ、その左右で必死に痛みに耐えようとしている下女に冷たい視線を送ると、白梅は揖礼をおこない頭を下げる。
「では、これで失礼します」
「はい、頑張ってね。洪氏さまも、わざわざありがとうございました」
「いえいえ。それでは私もこれで失礼します」
「はい、お勤め、お疲れ様でした」
そう告げて白梅と洪氏を見送ろうとする紫瑞妃だが、ふと、白梅はあることを思い出し、そのまま彼女の近くに歩み寄る。
「紫瑞妃さま、ちょっとお耳をお貸し頂きますか? これは人には聞かれたくない案件ですので」
「ええ、どうしたのかしら?」
そう問いかけつつ、頭を傾げて白梅に耳を預ける紫瑞妃だが。
白梅が耳元で呟いた一言に、顔中が真っ赤になる。
「では、これにて……くれぐれもお体、ご自愛ください」
「あ、ありがとう」
白梅が最後に、紫瑞妃に呟いた一言。
『帝の下で腰を突き上げるように振るのは、少し控えた方がよろしいかと』
瘴気による痛み以外にも、紫瑞妃の性豪さも腰痛の要因の一つであったとか。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる