発達障害の女、獣医師として生きる。

ひよく

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今日子の恋人

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今日子はその病院で働きながら、35歳になっていた。
時折、他のスタッフの力を借りながらであるが、仕事にも慣れていった。

その頃、今日子に初めての恋人ができた。
出会いは今日子の参加していた文芸サークルのオフ会だった。
そのサークルは、発達障害者向けのものではないが、そのような障害を持つメンバーが多かった。
通常のコミュニケーションで伝えられない自分を、文章で伝えようとする人間が集まったのかもしれない。
普段は他人と上手く話せない今日子だが、不思議とそのサークル内ではリラックスして会話を楽しむ事ができた。

そこに彼がいた。

彼は発達障害者ではないが、身体に障害があった。
難病があり、目と肺が悪かった。
だが、あまり気にならなかった。

彼と話しているうちに、帰りの方角が同じである事がわかった。
自然と一緒に帰る事となり、その際、今度は2人で食事に行こうと誘われた。

彼は外見的には、決してモテるタイプではないだろう。
彼の患う難病も、異性との交際から彼を縁遠くしていた。
しかし、今日子は彼とは合うと感じた。
彼が「空気を読む」「察して動く」という事を求めないタイプだったからだろう。

初めて2人で食事に行った時も、楽しかった。
会う度に、次の約束をした。
その次は遊園地、その次は地元の花火大会、その次は海水浴。

そして告白は、海辺であった。

「結婚を前提に付き合ってほしい」
と彼は今日子に申し出た。

正直、‘結婚’の2文字に、今日子は気後れした。
今日子は一生独身で過ごすものと、自分で思っていたからである。
だが、その告白は彼の誠意の表れであった。
彼は真剣だった。
今日子はその告白を、戸惑いながらも、喜んで受け入れた。
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