俺のオヤジはビジュアル系です。

ひよく

文字の大きさ
38 / 68

将太

しおりを挟む
オヤジが仕事復帰した。

生死を彷徨う大怪我の後だというのに、特に後遺症も残さず、しかも思ったよりも早くに復帰できた。
喜ばしい事だ。

そうして、今は深夜0時。
オヤジはまだ帰ってこない。

俺は勉強に全く手がつかないでいた。

オヤジの帰りが遅い事なんて、珍しいわけじゃない。
そもそも何時に帰るかなんて、聞いていない。

親に早く帰ってきて欲しくて、そわそわしているなんて、自分がガキみたいで認めたくなかった。
でも、どうしても落ち着かない。

俺は頼介のスマホに何度も電話したが、全く繋がらなかった。
何故かGINJIさんも繋がらない。
GINJIさんと一緒なのかと思ったが、佐久間さんに電話したら、今日、オヤジは1人で帰ったという。

俺は居ても立っても居られず、馬鹿みたいに何度もオヤジのスマホに発信していた。

結局、一睡もできずに朝を迎えた。
登校時間になっても、頼介は帰って来なかった。

学校に行く気にもなれず、昨日の夕飯も食っていないのに、朝飯を食う気にもなれず、リビングで1人ぼんやりとしていた。

その時、玄関の開く音がした。

頼介はリビングまで来て、俺がいた事に驚いたようだ。
「あれ?将太、学校は?」
と、いつもの間の抜けた声を出す。
しかも、どうやら飲んでいるようだ。

「こんな時間まで飲んでたのかよ!?遅くなるなら、連絡くらい入れるのが常識だろう!」
俺は怒鳴り散らしていた。
さっきまで泣きそうだったのに、頭に一気に血が上って、自分が抑えきれなくなっていた。

「いや、だって、今まではお前、そんな事言わなかったじゃん。」
「着信も無視しやがって!」

「え?」
頼介は慌ててスマホを確認し、ギョッとした顔をした。
そりゃ、引くだろうな。
俺からの着信、100件近く入れたから。

でも頼介は、ようやく俺のイライラの原因に気付いたようだ。

「…。ごめん。」
と、小さな声で謝ってきた。

それなのに、俺は自分を抑える事が出来なくなっていた。

気付いた時には、頼介をボコボコに殴っていた。

頼介は俺にされるがまま、何の抵抗もしなかった。
殴って殴って、さすがにヤバイと思って手を止めた時には、頼介は動かなくなっていた。

「おい、頼介!」
自分で殴ったくせに、身動きしなくなった頼介を見て、俺は真っ青になった。

「ごめん!ごめん!」
倒れた身体を抱き起して、泣きながら謝った。

頼介は一応、意識はあった。
「俺の方こそ、ごめんな…。」
そう言って、手を伸ばし、俺の頭を撫でてくれた。

だけど、このまま放っておける状態じゃなさそうだった。
「頼介、病院に行こう!」
俺はそう言ったが、
「ダメだ!」
と言われてしまった。

「だって、このままじゃ…。」
「いいから!」

そう言って、強引に立ち上がろうとしたが、上手く立てずにふらついている。
慌てて支えて、とにかく頼介の部屋のベッドまで連れて行った。

ベッドに寝かせたが、やはりキツそうだ。

確かに、こんな明らかに殴られた傷で、病院にかかったら、警察に通報されてしまうかもしれない。
でも、俺は仕方ないと思っていた。
自分でやった事だし。
それよりも、頼介の身体の方が心配だった。

俺はそっと部屋を出て、スマホを取り出した。

『どうしたんだ?将太君。』
電話をかけた相手は、すぐに出てくれた。

「俺…。」
俺は泣きながら、GINJIさんにすべてを話した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

処理中です...