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蓮介
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その日は平日だったが、俺の仕事は休みで、部屋でボンヤリと過ごしていた。
頭に浮かぶのは頼介の事ばかり。
退院したという連絡は受けていたが、回復しているわけではないらしい。
頼介が退院してからは、銀司からの連絡はめっきり減った。
頼介から目が離せず、電話する余裕もないという。
傍に居られない俺は、銀司にすべてを託すしかない。
それこそ、祈るような気持ちだった。
そんな時、玄関をノックする音が聞こえた。
将太が学校から帰るには、まだ早い。
新聞か宗教の勧誘かと思ったが、一応、
「どちら様ですか?」
と、声をかけた。
すると、
「俺だ。」
と、聞き馴染んだ声が返ってきた。
俺は慌てて玄関のドアを開けた。
「銀司!?」
そこに立っていた銀司は、まるで幽霊のように生気がなかった。
青白い顔で、目の下には濃いクマを作って…。
とにかく銀司を部屋の中に入れた。
「お前、一体どうしたんだ!?」
車で来たのだろうが、駐車場からここまでは傘もささずに来たらしい。
外は土砂降りで、全身びしょ濡れだった。
「将太くんは学校か?」
「あぁ、学校だ。それより、服を脱いで身体を拭け。俺の服を貸してやるから着替えろ。」
銀司は言われた通りに着替えだした。
だが、俺は銀司の左腕の赤く血を吸ったタオルに気が付いた。
「これは…どうしたんだ!?」
「頼介と揉み合っているうちにちょっとな。頼介に怪我はない。今は信頼できる人に任せてあるから、心配ない。」
「酷い出血だ。病院に行った方がいい。」
俺はそう言ったが、
「イヤ、今はいい。それより、休ませてくれ。眠りたいんだ。」
と、銀司はそう言った。
俺は布団を敷いてやった。
銀司は倒れ込むようにそこに横になると
「2時間…2時間だけ眠らせてくれ。2時間経ったら、頼介の所に帰るから…。」
と、それだけ言って、すぐに眠りに落ちていった。
俺は眠った銀司の左腕のタオルを外した。
思ったよりも深い傷だった。
応急的な手当てしかできないが、とにかく消毒して包帯を巻いた。
これは頼介にやられたのか?
頼介は時折、興奮するとは言っていたが、銀司すら傷付けるような暴れ方をするのか?
頼介を全面的に銀司に任せた事を、初めて後悔した。
しばらくして、将太が帰ってきた。
部屋で寝ている銀司の姿を見て、驚いたようだが、俺は人差し指を口元に持っていき、声を出すなと合図した。
将太は物音を立てないように注意しながら、部屋の中に入ってきた。
「なんでGINJIさんが、こんな所に?」
囁くような声で、将太は訊いてきた。
「余程、疲れていたらしい。頼介は別の人間が看ているというから、今は寝かせてやろう。」
結局、2時間経っても銀司は目覚めなかった。
だが、俺は敢えて起こさなかった。
ただ、左腕の傷は心配だったから、医者を呼んだ。
医者は傷口を5針ほど縫合し、抗生物質を処方して、帰って行った。
その間も、銀司は眠ったままだった。
その時、銀司のスマホが鳴った。
発信者は、‘佐久間’となっている。
「将太、誰だかわかるか?」
放置するのも気になって、将太に訊いてみた。
「頼介のマネージャーさん。もしかすると、今、頼介を看ているのって、佐久間さんかも。」
「じゃあ、お前が出てやれ。急用だとマズイ。」
そう言われて、戸惑いながら将太は電話に出た。
その佐久間って人も、銀司の怪我が気になっていたようだ。
俺は将太から電話を代わって、状況を説明した。
頼介の方は、目が覚めて銀司が居ない事でパニックになりかけたそうだが、今は何とか落ち着いて、大人しくしているという。
銀司が怪我した事については、頼介は気付いていないようなので、佐久間さんもまだ言っていないらしい。
俺もまだ伝えないでいてほしいと頼んだ。
「弟の事、任せきりにしてしまって、本当に申し訳ありません。銀司は一晩こちらでお預かりします。疲れ切っているようなので、銀司にも休養が必要でしょう。」
そう言って、通話を終了した。
頼介の事は心配だが、今の銀司に任せるわけにはいかない。
少なくとも、充分に休養を取らせないと、頼介の所には帰せない。
俺と将太は、死人のような顔で眠る銀司を、ただ見つめていた。
頭に浮かぶのは頼介の事ばかり。
退院したという連絡は受けていたが、回復しているわけではないらしい。
頼介が退院してからは、銀司からの連絡はめっきり減った。
頼介から目が離せず、電話する余裕もないという。
傍に居られない俺は、銀司にすべてを託すしかない。
それこそ、祈るような気持ちだった。
そんな時、玄関をノックする音が聞こえた。
将太が学校から帰るには、まだ早い。
新聞か宗教の勧誘かと思ったが、一応、
「どちら様ですか?」
と、声をかけた。
すると、
「俺だ。」
と、聞き馴染んだ声が返ってきた。
俺は慌てて玄関のドアを開けた。
「銀司!?」
そこに立っていた銀司は、まるで幽霊のように生気がなかった。
青白い顔で、目の下には濃いクマを作って…。
とにかく銀司を部屋の中に入れた。
「お前、一体どうしたんだ!?」
車で来たのだろうが、駐車場からここまでは傘もささずに来たらしい。
外は土砂降りで、全身びしょ濡れだった。
「将太くんは学校か?」
「あぁ、学校だ。それより、服を脱いで身体を拭け。俺の服を貸してやるから着替えろ。」
銀司は言われた通りに着替えだした。
だが、俺は銀司の左腕の赤く血を吸ったタオルに気が付いた。
「これは…どうしたんだ!?」
「頼介と揉み合っているうちにちょっとな。頼介に怪我はない。今は信頼できる人に任せてあるから、心配ない。」
「酷い出血だ。病院に行った方がいい。」
俺はそう言ったが、
「イヤ、今はいい。それより、休ませてくれ。眠りたいんだ。」
と、銀司はそう言った。
俺は布団を敷いてやった。
銀司は倒れ込むようにそこに横になると
「2時間…2時間だけ眠らせてくれ。2時間経ったら、頼介の所に帰るから…。」
と、それだけ言って、すぐに眠りに落ちていった。
俺は眠った銀司の左腕のタオルを外した。
思ったよりも深い傷だった。
応急的な手当てしかできないが、とにかく消毒して包帯を巻いた。
これは頼介にやられたのか?
頼介は時折、興奮するとは言っていたが、銀司すら傷付けるような暴れ方をするのか?
頼介を全面的に銀司に任せた事を、初めて後悔した。
しばらくして、将太が帰ってきた。
部屋で寝ている銀司の姿を見て、驚いたようだが、俺は人差し指を口元に持っていき、声を出すなと合図した。
将太は物音を立てないように注意しながら、部屋の中に入ってきた。
「なんでGINJIさんが、こんな所に?」
囁くような声で、将太は訊いてきた。
「余程、疲れていたらしい。頼介は別の人間が看ているというから、今は寝かせてやろう。」
結局、2時間経っても銀司は目覚めなかった。
だが、俺は敢えて起こさなかった。
ただ、左腕の傷は心配だったから、医者を呼んだ。
医者は傷口を5針ほど縫合し、抗生物質を処方して、帰って行った。
その間も、銀司は眠ったままだった。
その時、銀司のスマホが鳴った。
発信者は、‘佐久間’となっている。
「将太、誰だかわかるか?」
放置するのも気になって、将太に訊いてみた。
「頼介のマネージャーさん。もしかすると、今、頼介を看ているのって、佐久間さんかも。」
「じゃあ、お前が出てやれ。急用だとマズイ。」
そう言われて、戸惑いながら将太は電話に出た。
その佐久間って人も、銀司の怪我が気になっていたようだ。
俺は将太から電話を代わって、状況を説明した。
頼介の方は、目が覚めて銀司が居ない事でパニックになりかけたそうだが、今は何とか落ち着いて、大人しくしているという。
銀司が怪我した事については、頼介は気付いていないようなので、佐久間さんもまだ言っていないらしい。
俺もまだ伝えないでいてほしいと頼んだ。
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頼介の事は心配だが、今の銀司に任せるわけにはいかない。
少なくとも、充分に休養を取らせないと、頼介の所には帰せない。
俺と将太は、死人のような顔で眠る銀司を、ただ見つめていた。
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