俺のオヤジはビジュアル系です。

ひよく

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GINJI

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蓮介の部屋に辿り着くと、灯りはついていた。
寝てはいないようだ。
俺はノックもせず、部屋の扉を開けた。

部屋は六畳一間。
ほとんど家具もないような部屋で、アイツはボンヤリと座り込んでいた。

「銀司?どうしたんだ?」
間の抜けた声と視線が返って来た。
それが、あまりにも頼介に似ていて、一瞬、怒る気が失せたが、そういう問題じゃない。

「お前、頼介の病院に行ったんだろう。」
「え?あぁ。なんで、お前が知ってるんだ?」
「お前を追いかけて、頼介が走り出したんだ。まだ動いてはいけない身体で。おかげで、傷が開いて、大変だったんだ。」

俺はそう蓮介に告げた。
蓮介は、驚いたような顔をしていたが、すぐに視線は落とされた。
「アイツ、何考えてやがるんだ…。そんな身体で走るだなんて。」

頼介を責めるような蓮介の言い方に、俺は一気に頭に血が上った。
「みんな、お前のせいだろうが!」
俺は蓮介に掴みかかった。
だが、蓮介は簡単に俺の手をすり抜け、反対に俺は押さえつけられた。
そう言えば、コイツ、喧嘩は滅茶苦茶に強かったな。

「そうだ!何もかも俺のせいだ!わかっている!だから、会えるわけはないんだ!」

そう言って、奴は馬鹿みたいに強い力で、俺を壁際に押さえつけた。
俺も腕力は強い方だが、とてもじゃないが、適わない。
蓮介は俺の髪を後ろから掴んで、無理やり頭を固定した。

その視線に、俺はゾクッとした。
いつもの間の抜けた視線じゃない。
これは歌っている時の頼介だ。
否、かつての、俺達の仲間だった頃の蓮介だ。

そして、噛みつくように激しく、口唇を奪われた。

え!?なんだ!?なんなんだ!?
よく事態が飲み込めないが…。

「何、考えているんだ!?蓮介!」
俺は必死に奴の口唇から逃れて、抗議の声を挙げた。
「この状況で、考える事なんて、一つに決まっているだろう。」
蓮介は暗い声で、囁く。

首筋を舐められる。
ゾクッとして、俺は声にならない悲鳴を挙げた。
情けない事に、足が震えて、立っていられない。
すり落ちそうになる俺の身体を、蓮介が支えた。

それから先は、もう抵抗する気力も萎え、俺は蓮介のされるがままになった。

翌朝になって、俺は蓮介の部屋で目が覚めた。
粗末な毛布が1枚かけられている。

いつの間に眠ったのか?
思い出そうとしてみたが、そうじゃない。
行為の激しさに失神したんだ。
それに気付いて、俺は頭を抱えた。

既に蓮介の姿はなかった。
テーブルには「昨夜はすまなかった。仕事に行ってくる」という走り書きが残されていた。

「‘すまなかった’じゃねえだろう…。」
俺は深く息をついた。
こんなオッサンに、なんて事しやがる。
おかげで身体はガタガタで、マトモに歩く事さえ出来ない。

それにしても、喉がカラカラだ。
俺はアチコチ悲鳴を挙げる身体を引きずって、冷蔵庫を開けた。

………。

酒しかない。
あの野郎、どんな生活していやがるんだ。

仕方なく、俺は蛇口をひねり、水道水で喉を潤した。

アイツ、本当に何を考えているんだ?
だが、思い返してみて、ぞっとした。
これは、俺が頼介に対して、してみたい行為じゃないか…。

自分の浅ましさを見せつけられたような気がして、俺は壁に強く拳をぶつけた。
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