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第1章
その空に憧れる-3
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「千尋先輩のことだから、明日にはまた別の彼女ができていそうですよね」
知的で真面目そうな見た目によらず、彼女がいない時期がほとんどなく。常に切れ目なく彼女がいるタイプだった。
「そういうお前は、生まれてから一度も彼氏がいた試しがないんだったな?」
あっさり切り返され、への字口になる。
「私のことは放っておいてください」
柏木先輩の前で何も経験がないとバラされるなんて、恥ずかしすぎる。
当の柏木先輩は気にする様子はなく、空の絵の続きを描き始めていた。
「お前、手に持ってるの何?」
目ざとく私の手の中にあるプレゼントを指差し、千尋先輩が聞いてくる。
「な、何でもないです」
「まさか男からホワイトデーのお返し、もらったとか?」
一瞬だけ柏木先輩の方へ視線を流し、意地悪く笑う。
「どうせ義理だろ、本気にするなよ」
「わかってます、私のこと好きな人なんて、いるわけないですもんね」
喧嘩になりそうな勢いを、穏やかな声が遮る。
「――ほんと、二人は仲が良いよね」
振り向けば、柏木先輩がまた筆を止め私たちを静観していた。
「こういうのは、仲が悪いというのでは……?」
私が首を傾けると、先輩は小さく微笑んだ。どこか寂しそうなその笑顔に、胸がちくりと痛む。
「千尋といるときの白坂さんって、自然体だなと思って。素でじゃれ合っている感じがして、楽しそう」
言われてみれば、柏木先輩といるときは緊張してしまうから、うまく自分を出せないけど。千尋先輩とは兄妹のような感覚で、普通に喧嘩までできてしまう。
「馬鹿言うな。こいつとは、じゃれ合ってるわけじゃないからな」
辛辣な千尋先輩の言葉に私は肩をすくめ、プレゼントを鞄にしまうために、そっとその場を離れた。
知的で真面目そうな見た目によらず、彼女がいない時期がほとんどなく。常に切れ目なく彼女がいるタイプだった。
「そういうお前は、生まれてから一度も彼氏がいた試しがないんだったな?」
あっさり切り返され、への字口になる。
「私のことは放っておいてください」
柏木先輩の前で何も経験がないとバラされるなんて、恥ずかしすぎる。
当の柏木先輩は気にする様子はなく、空の絵の続きを描き始めていた。
「お前、手に持ってるの何?」
目ざとく私の手の中にあるプレゼントを指差し、千尋先輩が聞いてくる。
「な、何でもないです」
「まさか男からホワイトデーのお返し、もらったとか?」
一瞬だけ柏木先輩の方へ視線を流し、意地悪く笑う。
「どうせ義理だろ、本気にするなよ」
「わかってます、私のこと好きな人なんて、いるわけないですもんね」
喧嘩になりそうな勢いを、穏やかな声が遮る。
「――ほんと、二人は仲が良いよね」
振り向けば、柏木先輩がまた筆を止め私たちを静観していた。
「こういうのは、仲が悪いというのでは……?」
私が首を傾けると、先輩は小さく微笑んだ。どこか寂しそうなその笑顔に、胸がちくりと痛む。
「千尋といるときの白坂さんって、自然体だなと思って。素でじゃれ合っている感じがして、楽しそう」
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「馬鹿言うな。こいつとは、じゃれ合ってるわけじゃないからな」
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