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第3章
隣の席-5
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千尋先輩は相変わらず、意地が悪すぎる。
まるで私の気持ちをわざと蓮先輩にばらそうとしているみたいだ。
本人に気づかれるのも時間の問題かもしれない。
内心ヒヤヒヤしながらも、昼前には目的地の動物園に到着することができた。
*
丘の上にある動物園は、正門からずっと階段や坂を登っていく形だった。
足場があまり良くないので、体力がないと結構きつい。
「晴れてて良かったね、白坂さん」
「うん。平日だし、そこまで混んでなくて見やすいね」
チケットを買ったあと、私と椎名さんはパンフレットの地図を見ながら真っ先に階段を上がり、楽しみにしていたホッキョクグマ館を目指す。
キャラに似合わず可愛いもの好きの千尋先輩は、蓮先輩と一緒に、まずはアザラシ館を目指している様子。
アザラシの赤ちゃんを撮るためか、手にはカメラを用意していた。
私たちが先にたどり着いたのはアザラシ館だったので、ホッキョクグマの方は後から回ることにした。
未琴は真鳥と話があるのか、後方で会話しながらゆっくりと進んでいる。
並んで歩いている二人は、楽しそうというより、なぜだか深刻な表情を浮かべていた。
二人は本当に、どういう関係なのだろう。
やっぱりただの友人同士には、とても見えない。
今日は特に親密な雰囲気を出していて。未琴と真鳥、二人だけの秘密があってもおかしくない、そんな気がした。
「白坂さん、こっち」
ぼうっとしていた私の肩を、椎名さんが軽く押して案内してくれる。
アザラシ館は建物の中と外、どちらからでも観察できるようになっていて。特に人だかりができていたのは、白い柵に囲まれたアザラシの住処。
「赤ちゃん、あの群れの中にいそう」
椎名さんは檻の奥に寝そべるアザラシたちを指差す。
「この台に登ったら、よく見えるんじゃない?」
背の高い椎名さんは、私の手を引いて台の上にあがらせてくれる。
やっと彼女と同じくらいの目線になり、アザラシ達の様子がよく観察できるようになった。
「わ。あれが赤ちゃんかな?」
一匹だけ違う色で、遠目からでも柔らかな印象。
体の大きなアザラシに混ざり、日向ぼっこをして目を閉じている。
「可愛い……。気持ち良さそう」
私たちから少し離れたところでは、一心不乱にアザラシを撮影する千尋先輩がいた。
その隣には、さらさらとスケッチをする蓮先輩の姿。
私も思い出したように、バッグからスケッチブックを取り出す。
「へえ……。白坂さんて絵が好きなんだね」
いつの間にか椎名さんが私の後ろに回っていて、スケッチブックを覗き込んでいた。
「うん。すごく得意なわけじゃないんだけど。描いてると落ち着くんだよね」
私にとっては、ストレス解消に近いものがある。気持ちを落ち着けられる、大切な趣味だ。
「好きなもの、夢中になれるものがあるっていいよね」
「椎名さんは、何が好き?」
「私はバレーとか弓道かな。中学のときはバスケやってて。今は弓道部」
「弓道……。すごいね。椎名さんの部活してるところ、見てみたい」
姿勢が良くてスラッとしてるし、格好いいだろうなと容易に想像できる。
椎名さんみたいにスポーツが得意な人が羨ましい。
それだけで、自分に自信が持てる。
小さな頃から何も得意なものがなく、自己肯定感の低かった私とは大違いだ。
まるで私の気持ちをわざと蓮先輩にばらそうとしているみたいだ。
本人に気づかれるのも時間の問題かもしれない。
内心ヒヤヒヤしながらも、昼前には目的地の動物園に到着することができた。
*
丘の上にある動物園は、正門からずっと階段や坂を登っていく形だった。
足場があまり良くないので、体力がないと結構きつい。
「晴れてて良かったね、白坂さん」
「うん。平日だし、そこまで混んでなくて見やすいね」
チケットを買ったあと、私と椎名さんはパンフレットの地図を見ながら真っ先に階段を上がり、楽しみにしていたホッキョクグマ館を目指す。
キャラに似合わず可愛いもの好きの千尋先輩は、蓮先輩と一緒に、まずはアザラシ館を目指している様子。
アザラシの赤ちゃんを撮るためか、手にはカメラを用意していた。
私たちが先にたどり着いたのはアザラシ館だったので、ホッキョクグマの方は後から回ることにした。
未琴は真鳥と話があるのか、後方で会話しながらゆっくりと進んでいる。
並んで歩いている二人は、楽しそうというより、なぜだか深刻な表情を浮かべていた。
二人は本当に、どういう関係なのだろう。
やっぱりただの友人同士には、とても見えない。
今日は特に親密な雰囲気を出していて。未琴と真鳥、二人だけの秘密があってもおかしくない、そんな気がした。
「白坂さん、こっち」
ぼうっとしていた私の肩を、椎名さんが軽く押して案内してくれる。
アザラシ館は建物の中と外、どちらからでも観察できるようになっていて。特に人だかりができていたのは、白い柵に囲まれたアザラシの住処。
「赤ちゃん、あの群れの中にいそう」
椎名さんは檻の奥に寝そべるアザラシたちを指差す。
「この台に登ったら、よく見えるんじゃない?」
背の高い椎名さんは、私の手を引いて台の上にあがらせてくれる。
やっと彼女と同じくらいの目線になり、アザラシ達の様子がよく観察できるようになった。
「わ。あれが赤ちゃんかな?」
一匹だけ違う色で、遠目からでも柔らかな印象。
体の大きなアザラシに混ざり、日向ぼっこをして目を閉じている。
「可愛い……。気持ち良さそう」
私たちから少し離れたところでは、一心不乱にアザラシを撮影する千尋先輩がいた。
その隣には、さらさらとスケッチをする蓮先輩の姿。
私も思い出したように、バッグからスケッチブックを取り出す。
「へえ……。白坂さんて絵が好きなんだね」
いつの間にか椎名さんが私の後ろに回っていて、スケッチブックを覗き込んでいた。
「うん。すごく得意なわけじゃないんだけど。描いてると落ち着くんだよね」
私にとっては、ストレス解消に近いものがある。気持ちを落ち着けられる、大切な趣味だ。
「好きなもの、夢中になれるものがあるっていいよね」
「椎名さんは、何が好き?」
「私はバレーとか弓道かな。中学のときはバスケやってて。今は弓道部」
「弓道……。すごいね。椎名さんの部活してるところ、見てみたい」
姿勢が良くてスラッとしてるし、格好いいだろうなと容易に想像できる。
椎名さんみたいにスポーツが得意な人が羨ましい。
それだけで、自分に自信が持てる。
小さな頃から何も得意なものがなく、自己肯定感の低かった私とは大違いだ。
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