3度目に、君を好きになったとき

なつぎりあお

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第8章

永遠に消えない青-side蓮-1

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 彼女を忘れるどころか、日に日に気持ちが強くなっていった。
 友人の前では、会話を楽しんでいる振りをして。嘘の笑顔を作っている。
 部活に出る意欲もなく、背中に重石を乗せた気分で廊下を歩いていたときだった。


「どうしよう、真鳥!」

 結衣と仲のいい永野未琴が、慌てた様子で廊下を走り、真鳥へ何かを報告していた。


「結衣が、少しずつ思い出しかけているかもしれないの」
「……ああ、やっぱり? 俺もそんな気がしてた。この力は完璧じゃないってことだな」


 真鳥は自分の手のひらを見つめながら返答している。
 力とは、一体何のことだろう。


「真鳥。念のためにもう一度、あの子の記憶を消してきてよ」


 ――記憶を、消す?

 非現実的な話だが、それが本当の話なら、結衣は真鳥に記憶を操作されていることになる。
 何かが、繋がった気がした。


「今、沢本と校舎の外にいるはずだから」
「……わかったよ」

 渋々といった様子で真鳥がうなずき、二人は昇降口の方へ消えていった。


 思い返せば、不可思議な点はいくつもあった。

 中学時代、誕生日に焼いてくれたチーズケーキ。
 彼女は僕と一緒に食べたことすら忘れていた。

 僕が本当は、甘い物がそれほど得意ではないことも。
 卒業前の告白をなかったことにされていたことも。
 あの空の絵の約束さえも……。

 自分に興味がないから、好きではないから、単純に忘れているだけなのかと思っていた。

 もしそれらが、真鳥朔哉の仕業なのだとしたら。
 どうして彼は、そして永野未琴は、結衣の記憶を奪うようなことをしたのだろう。
 結衣の様子について、永野未琴におかしな変化はないかと尋ねたとき、全く異常なしだと答えたはずだ。


『最近、白坂さんは……何かを忘れたりとか、そういうことが多くなっていない?』
『え? 健忘症とかそういうことですか? 全然、ありませんよ。いつもと変わらず、普通です』

 あれは、嘘をついて隠していたということになる。


『先輩の絵が好きです』

 結衣のあの言葉は、昔も今も言ってくれていたから。
 絵を好きだという記憶だけは残っているらしく。

 真鳥たちの真意がつかめない。

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