建築学科日誌

パウレタ

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建築か?アートか?

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「私はちょっと評価はできないかな」
ウエサカ先生はカザマさんの作品を見ながら言った。

 ぼくの大学は、卒業設計というものを制作して論文がわりに発表することで卒業できる。今は発表会の後に教官陣と学生が設計作品について議論を重ねるポスターセッションが行われていた。

 ぼくの設計作品はカザマさんのとなりに展示していたこともあり、二人のやりとりをずっと見ていた。

 通常であると、ある敷地を設定して、そこに場所や時代背景などをふまえながら建築を設計する。 

 でもカザマさんの作品は違った。世界中の広場が敷地という想定で、そこにテロ撲滅を訴えるオブジェをレイアウトし仮設的な空間出現させる提案だった。

 建築というかアートの領域にも踏み込んでいる。

 ぼくは自分との提案とはまったく異なっていておもしろいなあ、なんて思いながら彼の作品を見ていたのだが、建築設計の実務に長年携わってきたウエサカ先生の見解は違ったわけだ。

 でもぼくの大学の建築学科にはカザマさんの作品に対して面白いと評価する先生もいた。特任教授のキジマ先生だ。彼はカザマさんへ助け船を出すようなコメントをしていた。キジマ先生は建築設計の実務も行う方だが、アーティストとチームを組んでプロジェクトを行ったり、またあるときには庭師と組んだりしながら、組んだ相手の提案を尊重して作品を仕上げるアプローチをとっている人だ。面白ければそんなのどうでもよくて、新しい建築の領域をひろげようとする人なのだ。

 キジマ先生の発言を聞いてもウエサカ先生の意見は変わらない。
「まあ、じゃあ、そうだね、百歩譲って作品であるとしましょうか。それで美大のアート系の同じような卒業制作の作品とくらべてみましょうか。そうしたら、あきらかにこちらの作品は劣ってると私は思いますよ」
普段は寛容な態度で作品を評価するウエサカ先生だが、こういうところは頑固だ。

「そうですかねえ」
カザマさんは首を傾げながら先生の言葉に返す。

 ウエサカ先生は

「たとえば料理学校の卒業試験でさあ、ぼくらがそうだな、きみたちにフレンチを教えていたとしようよ。きみたちはこれまでずっとフレンチの勉強をしました。それで卒業試験で君がさあ、『先生、今回はあえて中華つくってみたんですけどどうでしょう?』って言われてもさあ。ぼくはそれを食べて評価を下すことなどできないわけだよ」

と言った。先生の耳は少し赤くなっていた。

 ウエサカ先生、ぼくはフレンチ風のエビチリがあったりするなら、彼女のそれも食べてみたいです。
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