俺が追放した役立たずスキルの無能女どもが一流冒険者になって次々と出戻りを希望してくるんだが……

立沢るうど

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第十七話……無能だった女どもが出戻りを希望してくるんだが……

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 次の日の朝、ママからは討伐には出るなと言われていたが、何となく落ち着かないので、とりあえずギルドに顔を出すことにした。
 すると、入口前で思いも寄らない顔を見つけた。

「バクス! 会いたかった……」
「イシス! お前、今までどこにいたんだよ! もしかして……」

 イシスが駆け寄ってきて、俺の両手を取り、顔を近づけてきた。

「ここでは言えない……。討伐に行こうよ。そこでなら言えるから。私の成長も見られるよ」
「コミュに続いてお前もか……。ちょっと事情があって、ママからは討伐に行かない方が良いって言われてるんだ」

「分かってる。コミュのスキルのことでしょ?」
「っ……! なぜそれを……。ママが話すわけはないから、コミュから聞いたのか?」

「違うよ。とにかく討伐に行こう! 大丈夫だからさ! こういう場合なら行っていいでしょ?」
「それはそうなんだが、なぜそのことも……。とりあえず、行っていいかどうかは、ママに聞いてみる。パーティーメンバー変更届を全然出してなくて、今も未提出だから、許可を得られないかもしれないんだ」

「分かった。すぐに戻ってくるとも言っておいて。コミュと面談して書類を作成し終わるまでには戻ってくるって」
「あ、ああ……」

 何と言うか……イシスがどこまで知っているのか気になるが、それ以上に、段取りやその時々のママの判断さえ把握しているような物言いで、非常に効率的に物事を進められそうな期待を覚えた。
 これもコミュと同じようにスキルアップした影響なのだろうか。

 その後、ママから許可を得て、俺達は洞窟F一番口に向かった。洞窟Eじゃないのは、変更届の未提出が続いているので、前回より下の洞窟しか行ってはいけないと言われたからだ。



「……。そろそろ教えてくれないか? これまでのことを。とは言え、ある程度の想像は付いている」
「うん。コミュがいたパーティーに私もいたんだよ。時期が丁度かぶらなかったんだけど、コミュのスキルアップについてはそこで聞いた。
 あのあと、私がママに相談した時に、『世界を見てみたい。例えばセントラルとか』って言ったら、『もし行くなら、セントラルを通らずに、それより南に行ってみなさい。セントラルには絶対行っちゃダメ。もし行ったら、私があなたを殺す』って言われたから、その通りにした」

「イシスは天丼や二番煎じになる運命なのか……。ほとんどコミュと同じじゃないか。ママから言われたことも」
「こればかりは、しょうがないよ。だって……バクスは想像が付いてるでしょ?」

「……。おそらく、ママはこれを読んでいた。と言うより、ママが計画した作戦だろうな。なぜそのパーティーの存在を知っていたかだが、ママのスキルに関係することは想像に難くない」
「その通り。ということで、ほとんど省略するとして……私のスキルの本質が『把握』であることが判明したってわけ。
 バクス、一度だけ出入口でモンスターを討伐してくれない? そしたら、私のスキルを披露できるから」

 イシスの言葉が終わったところで、俺達は丁度一番口に着き、監視官以外は誰もいなかったので、そのまま討伐パーティーになった。

 そして、すぐにモンスターが出てきたので、俺がそれらを全て片付けると、イシスが俺の横に立った。

「次に出てくるのは三分後、『ターゲッティングラビット』が六体。向かって左二体がバクスの頭部目掛けて跳んでくる。真ん中二体の左側が右脚、右側が左脚。残る二体は後ろに回って、頭部を狙った二体をバクスが斬った後の、その空中の流れた残骸を隠れ蓑に、また頭部を狙ってくる」
「っ……! まさか、予測できるのか⁉️ 現状を『把握』した上で、未来さえ『把握』できると……。しかも、本当に最初の、ほぼ無関係な情報だけで……。だとしたら、とんでもないことだ……」

「私がモンスターの相手をしてもいいんだけど、仮に想定外の何かが起きた時に対処できないかもしれないから、安全性をより考慮してってことで。バクスも私の言ったことは完全に信用せずに、そのつもりで」
「分かった」

 そして、三分後。イシスが言った通り、『ターゲッティングラビット』が洞窟から出てくるや否や、やはりイシスが言った通りに、俺に襲いかかってきた。もちろん、難なく討伐したものの、俺は立ち尽くしていた。

「し、信じられん……。これなら、当然モンスターレベルとは無関係だし、幅広く応用できる……」
「うん。ハッキリ言うよ。今の私なら、洞窟内を全て把握できる。つまり、一瞬でマップの作成が完了する。『洞窟に入らずに』ね」

「…………。は、ははははっ……」
「…………」

 イシスの表情は、至って真面目だった。いつもの冗談ではないということだ。
 それなら……その分、『期限』を遅らせることができるか……。しかし、それでは……。

「っ……!」
「んっ……」

 考えがまとまらず、俺が俯いていると、イシスが俺に突然抱き付き、キスをしてきた。
 まるで、今は何も考えるなと言われたように……。

 それからしばらくして、イシスは俺に抱き付いたまま、その口を離した。

「『誰よりも前へ』。本当に良いパーティー名だよ。私はその本当の意味を、バクスから離れるまで理解できていなかった。『誰よりも前へ』進むためには、立ち止まってもいい、後ろを向いてもいい、来た道を戻ることもいい。
 でも、迷っているのに、本来意図した道ではないのに、そのまま突き進むのは『誰よりも前へ』ではない。そして、時間稼ぎで、そこに留まり続けるのも……。
 それは転身でも勇気でもなく、単にバカで、無謀で、命を賭けたギャンブルなだけ。最終的には、遭難して凍死したり、飢えて死ぬだけだからね。もちろん、たくさん確認して、総合的に判断した上で、その道を進んだり、留まったりするのは良いことだけどさ」

「…………」
「バクスが仮にそうした場合、この先どうなるか教えてあげようか?」

「……。いや……不要だ。なぜなら、俺は……『そんな道』を進まないからだ。だが、これだけは教えてほしい。俺は……俺達は……二ヶ月後、心から笑っているか?」
「限りなく遠回しに言ってるみたいだけど、その問いには答えられない。答えたら、今の道を進む意味が、半分失われるから。険しい山を登って、ようやく見られる景色を、麓で体験させるようなものだから。疲労感や達成感だけ得られても、真の感動は得られない。過程も大事だけど、結果も大事ってこと。
 でも、それは命がある前提で言えることなのは私も理解できる。
 『この先、二分の一の確率で登頂に失敗した上、不幸になります』と言われて登る人は、さっき言った通りの人。
 『不幸な結果にはなりません。ただ、それ以外では途中で何が起きるか分かりません』と言われたら登るし、誰でも知りたいことだよね。
 でも、それはバクスも理解しているはず。つまり、その質問をしたということは、バクスにとっては、『それ』が『自分の死』に直結すると考えているってことでいい?」

「…………。俺が俺でなくなってしまう……んだと思う。ママの言葉じゃないが、俺の根底が大きく揺らいでしまうような……。だから怖かったんだ……。前にも後ろにも、一歩さえ踏み出すことが。そして、期限を切られたら、自動的にその道が動いて……」
「自分のペースじゃなく、勝手に過程を飛ばされることが怖いんだよね。知ってる過程は飛ばせるけど」

「そうなのかもしれない……。仕事では当たり前のことだというのは分かってる。『いつまでに、このクオリティで仕上げてくれ』と先方に言われて、自分では納得の行かないクオリティで納品したことがあると陶磁器屋が言っていた。もちろん、先方も合意して検品した上で。そういうのが嫌だから冒険者になった人がいるとも聞いた。
 今回の件が、それに当てはまるかは分からない。いずれにしても、やればいいだけ。それだけなんだが……」
「当てはまらないね。その例で言うなら、先方の期待以上のクオリティでバクスは納品できるよ。でも、それを与えられた道具や設備でやりたくない。これまで大事に使ってきた、思いが込められた道具で、作り上げたいんじゃないのかな。
 そして納品後、その道具を撫でながら、『ありがとう、お前達。これからもよろしくな』って言いたいんじゃない? その道具は、手伝ってくれた仕事仲間と置き換えてもいいよ」

「…………。その通りだ……。俺は今まで何を迷っていたんだ……? 道に迷っていたわけじゃないんだ……。俺の『覚悟』に迷いがあっただけなんだ……。俺が彼女に言ったことじゃないか。『心から仲間だと思える奴らと同じ目的を達成して、感動を分かち合ってこその冒険だ』と。それなら、道はハッキリ見える。そして、進める!」
「さっきの質問、答えられはしないけど、こういう言い方ならできる。絶対にみんなで笑い合おうよ!」

「ありがとう、イシス。お前がいてくれて本当に良かった……。それに、今まで見えなかった可能性が見えてきた。早速、ギルドに戻りたい」
「どういたしまして。私も、バクスの役に立てることがこんなに嬉しいなんて思わなかったよ。まぁ、またすぐに誰かが役に立つかもしれないけどね」

 俺達は強く抱き締め合ってから、洞窟Fを後にした。
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