さよならアイドル~グッバイ、マイハート~

立沢るうど

文字の大きさ
2 / 16

第二話……「…………」

しおりを挟む
「…………」

 次の日、ホームルームが終わり、放課後になると、天川くんは私を数秒ほど見つめてきた。また一緒に帰りたいのかな。
 しかし、こんなに人が残っている中で一緒に帰ってしまうと、私達が陰キャにもかかわらず、まるで付き合っているかのような噂が、あっという間に広がってしまう。

 ここは一つ、試してみよう。
 私は黙って立ち上がると、そのまま下校するようにバッグを持って、天川くんより先に教室を出た。
 実際に下校するのではない。四階の図書室に向かおうとしたのだ。
 私は振り返ることもなく階段を登り、図書室に入ると、一番奥の席に座った。

 その数秒後、天川くんが向かいの席に座った。やっぱり付いて来たか。

「…………」

 そして、私達は無言で勉強を始めた。
 何となくだけど、家で勉強するより捗る気がする。
 どうせ友達もいないし、期末テストに向けて、ここで毎日勉強でもしようかな。

 中間テストは終わったばっかりで、四百人中、百位で微妙だったし、次は本気を出して、十位以内を目標に……
って、アイドルになるなら、勉強はそんなにしなくてもいいんだよなぁ……。
 知能派アイドルは、あまり好まれないし。やっぱり、愛嬌こそ最強だからね。

 私は男性アイドルだけじゃなく、女性アイドルにも詳しいのだ。研究のために色々調べたということでもある。
 面接オーディションにさえ進めれば、私の愛嬌をアピールできるのになぁ。そしたら、その場で、『君は合格決定! 即契約締結! もちろん無期限契約ね!』……ってならないかなぁ。

 そんなことを合間に考えながら勉強していると、早くも図書室を閉める時間になってしまった。
 早すぎる!

 私が勉強道具を片付け始めると、天川くんも続いて片付け始めた。やっぱりそうなるよね。
 そして、昨日と同じく、私達は一緒に帰った。もちろん、駅前で別れるまで無言だった。



「気の迷いで、図書室まで付き合うかなぁ。完全にガチ恋だよ」

 昨日と同様に、このことをお姉ちゃんに話すと、天川くんの気持ちを勝手に代弁してきた。

「珍しがってるだけじゃない? だって、話しかけてもこないんだよ。『おもしれー男』どころか、第三者から見たら、『キモこえー男』になっちゃってるよ」

「あ、そういう言い方をしたってことは、ここねは別に天川くんを不気味だとは思ってないんだ。それって、まんざらでもないってことだ」

「不思議な人ではあるけど、怖くはないかな。すぐに時間が過ぎるからっていうのもある。そういう意味では、一緒に帰ることを断る理由がないんだよね。アイドルとしては問題だけど、手を繋いでるわけでもないし、勝手に付いて来る変質者ってことにすればいいから」

「うわぁ……、天川くんが可哀想。ある時、ストーカーに変貌して刺されちゃうかもよ。対応には気を付けないと」

「お姉ちゃんはどうしてたの? モテまくりだったし、今でもそうでしょ?」

「『誰とも付き合う気はない。妹一筋』って公言してたから、大丈夫だったよ。少しでも気を持たせちゃうとダメだから」

「じゃあ、私は手遅れじゃん。いや、でもまだ天川くんが私のことを好きと決まったわけじゃないから分からないか。それに、このまま無言でいれば、私に飽きるかもしれないから、とりあえず、このままにしてみる」

「ここねがそう言うならいいよ。でも、何かあったらすぐに私に相談してね」
「うん、ありがとう、お姉ちゃん」

「じゃあ、そのお礼として、今日も一緒に気持ち良くなろうか」
「お姉ちゃん、それは詐欺って言うんだよ」
「ここねだって、いつも私におっぱい触りたいって言って、いきなり下半身を触るくせに」
「それはサプライズだから!」

 そして、いつも通り私達はお風呂に入ってから、眠りについた。

 それから二週間。私と天川くんは、一緒に帰り続けたが、ついに天川くんから、『それじゃあ、バイバイ』以外の言葉を『聞くことになる』のだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

黒騎士団の娼婦

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...