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第三話……「楽しみにしてるね」
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「一緒に観に行かない?」
「え……うん……」
いつものように、図書室が閉まる時間になって、帰り支度をしていると、天川くんから一枚の小さいチラシを見せられ、誘われるがままに、私はまたも何も考えずに返事をしてしまった。
そのチラシに書かれていた内容は、土曜日午後二時開演の『愛しのアイアイ』という舞台で、二駅隣の小劇場で行われるものだった。
私は、これまで演劇を観たことがなく、本当に楽しめるのだろうかと不安になった。
…………。って、いやいや、なんで冷静にチラシと心情を説明してるの、私!
デートじゃん! 観劇デートじゃん!
服とかどうしよう……。髪型は……。香水は……お姉ちゃんのを使うとして……。
「…………」
色々な考えが私の頭をよぎっていると、天川くんが私にスマホを黙って見せてきた。
ああ、連絡先の交換ね。待ち合わせとか急な用事ができた時に必要だからね。
『電車で一緒に行かない? 土曜午前十一時半に駅前の改札待ち合わせ。普通に制服で。現地に着いてから周辺の店を探して昼食』
連絡先を交換し終えると、天川くんは早速メッセージを送ってきた。
流石に、そこでも無言だったら引くけど、そんなことはなかったので安心した。
その文章は、普段の天川くんの人柄が表れているようだった。
『〇〇ない?』って口癖なのかな。
そして、普段通りの制服指定とは、とても助かる。全く気を遣うことはないという天川くんの優しさだ。このことだけでも、彼に対する私の評価は、上に突き抜けそうだ。
『分かった。楽しみにしてるね』
直接ではないにしろ、天川くんと初めてまともに会話したような気がして、私は少し感動した。
気付いた時には、それが天川くんへのメッセージにも表れてしまっていた。
『楽しみ』か……。それが私の本心なのかは分からなかった。
「天川くんかぁ。私も会ってみたいな」
「だ……ダメだよ! そしたら、絶対お姉ちゃんのこと好きになっちゃうし」
お姉ちゃんを制止するように、私は思わず大きな声を上げた。
「ふふふっ、それに何の問題があるのかな? それって、ここねが天川くんのこと好きになってるってことじゃないの?」
「ち、違うよ! お姉ちゃんのこと好きになっても絶対に報われないから、天川くんが不幸にならないようにってこと!」
「優しいね、ここねは」
お姉ちゃんの口癖を聞くと、いつもの日常を感じることができて安心感を覚える。
でも、私自身は本当に優しいんだろうかといつも疑問に思ってしまうジレンマ。
ただの事なかれ主義だったり、ただの自己満足だったり、ただの誤魔化しだったり……。
優しさとは程遠い感情と行動の結果なのではないだろうかと自問自答をしてしまう。
「あ、また考え事してる。そんなに深く考えなくていいのに。『優しさ』は『結果』だよ。それでいいんだよ」
「うん……。ありがとう、お姉ちゃん」
「じゃあ、お風呂でお礼もらっちゃおうかな」
「あのさぁ……。まぁ、いいけど……」
お姉ちゃんの甘えを簡単に受け入れた私を改めて見つめ直すと、自分でも天川くんとのデートが気になっていて、浮足立っていたのが分かる。
私は、早く土曜日が来てほしい、逆に土曜日が来ないでほしい、この気持ちを抱くこと自体が楽しいから、と遠足を楽しみにしている子どものように、感情を昂らせながら、お風呂に、そしてベッドに入った。
もちろん、次の日は寝不足になった。
「え……うん……」
いつものように、図書室が閉まる時間になって、帰り支度をしていると、天川くんから一枚の小さいチラシを見せられ、誘われるがままに、私はまたも何も考えずに返事をしてしまった。
そのチラシに書かれていた内容は、土曜日午後二時開演の『愛しのアイアイ』という舞台で、二駅隣の小劇場で行われるものだった。
私は、これまで演劇を観たことがなく、本当に楽しめるのだろうかと不安になった。
…………。って、いやいや、なんで冷静にチラシと心情を説明してるの、私!
デートじゃん! 観劇デートじゃん!
服とかどうしよう……。髪型は……。香水は……お姉ちゃんのを使うとして……。
「…………」
色々な考えが私の頭をよぎっていると、天川くんが私にスマホを黙って見せてきた。
ああ、連絡先の交換ね。待ち合わせとか急な用事ができた時に必要だからね。
『電車で一緒に行かない? 土曜午前十一時半に駅前の改札待ち合わせ。普通に制服で。現地に着いてから周辺の店を探して昼食』
連絡先を交換し終えると、天川くんは早速メッセージを送ってきた。
流石に、そこでも無言だったら引くけど、そんなことはなかったので安心した。
その文章は、普段の天川くんの人柄が表れているようだった。
『〇〇ない?』って口癖なのかな。
そして、普段通りの制服指定とは、とても助かる。全く気を遣うことはないという天川くんの優しさだ。このことだけでも、彼に対する私の評価は、上に突き抜けそうだ。
『分かった。楽しみにしてるね』
直接ではないにしろ、天川くんと初めてまともに会話したような気がして、私は少し感動した。
気付いた時には、それが天川くんへのメッセージにも表れてしまっていた。
『楽しみ』か……。それが私の本心なのかは分からなかった。
「天川くんかぁ。私も会ってみたいな」
「だ……ダメだよ! そしたら、絶対お姉ちゃんのこと好きになっちゃうし」
お姉ちゃんを制止するように、私は思わず大きな声を上げた。
「ふふふっ、それに何の問題があるのかな? それって、ここねが天川くんのこと好きになってるってことじゃないの?」
「ち、違うよ! お姉ちゃんのこと好きになっても絶対に報われないから、天川くんが不幸にならないようにってこと!」
「優しいね、ここねは」
お姉ちゃんの口癖を聞くと、いつもの日常を感じることができて安心感を覚える。
でも、私自身は本当に優しいんだろうかといつも疑問に思ってしまうジレンマ。
ただの事なかれ主義だったり、ただの自己満足だったり、ただの誤魔化しだったり……。
優しさとは程遠い感情と行動の結果なのではないだろうかと自問自答をしてしまう。
「あ、また考え事してる。そんなに深く考えなくていいのに。『優しさ』は『結果』だよ。それでいいんだよ」
「うん……。ありがとう、お姉ちゃん」
「じゃあ、お風呂でお礼もらっちゃおうかな」
「あのさぁ……。まぁ、いいけど……」
お姉ちゃんの甘えを簡単に受け入れた私を改めて見つめ直すと、自分でも天川くんとのデートが気になっていて、浮足立っていたのが分かる。
私は、早く土曜日が来てほしい、逆に土曜日が来ないでほしい、この気持ちを抱くこと自体が楽しいから、と遠足を楽しみにしている子どものように、感情を昂らせながら、お風呂に、そしてベッドに入った。
もちろん、次の日は寝不足になった。
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