異世界<おせっかい>人情ラプソディ~いや、『おせっかいスキル』で無双って何⁉️~

立沢るうど

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第五十八話……証拠不十分で不起訴!

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「は、はい。三回です。入省二年目の私のような者にも声をかけてくださり、最初は光栄に思っていたのですが、そもそも私が入省したのは、陛下の御前で失礼ながら、我が国をどん底に叩き落とし、現在も踏み付けている王族を、この目で直接、至近距離で見てみたいと思ったからであり、そのことをあとで思い出して、やはり我に返り、王族がどのような悪事を働いているか調査しようと考えました。
 そして、その悪事の一部だけですが、行方不明の第三王子を除く全殿下が関与していることが分かった頃、まさにビル・クライツ防衛事務次官が更迭、異例の左遷の時期に、フォーリエ殿下にお声をかけられました。これが二回目です。
 その時は、次官が現場を混乱させ、お粗末な政策案を中央政府に提出して激怒されたのだから、そんな辞令が下っても仕方がないと思っていたのですが、よく考えてみると、私が入省して、最もすごいと思った人が次官で、その次にすごいのではないかと思っていたのが、当時のサルディア財務主査でした。
 この二人はいつも一緒にいて、議論を交わしているはず。そんなお粗末なことがあるのだろうか、いや、ないと我に返ったことを記憶しています。
 しかし、それと同時に、中央政府と王族への不満が最高潮に達してしまいました。
 なぜなら、『事務次官の更迭および左遷は不当である』という申し立て書を私が作成し、すぐに中央政府に提出したところ、前国王のご命令を受けた政府から、『処刑されるか、左遷されるか選べ。ただし、このことは機密情報とし、左遷は自らが志願したことにせよ』と迫られ、志願させられたからです。
 中央政府に恨みを抱いても、王族の顔色ばかり伺っているにすぎず、その殿下方の責任は前国王の責任なのにこの仕打ちは酷いではないか、と考えるようになりました。計画を立てたのは、この時です。
 ただ、計画と言っても、証拠を残すわけには行かないので、全て頭の中で立てた計画です。
 最大のチャンスが来るのをずっと待っていたのですが、そう簡単には訪れず、月日は流れて行きました。
 そんな中でつい先日、あの騒動の一週間ほど前に、フォーリエ殿下にお声をかけられました。それが三回目。
 このまま待っていても仕方がないので、自分から仕掛けなければダメだ、と考えるようになったところで、スキル所持者が集められているとの話を耳にしました。
 彼らを何とか利用できないかと考えていると、さらにシルバードラゴンが洞窟Aから出てきたとの話を耳にします。
 もしかしたら、混乱の隙を突くチャンスが来るのではないかと、まだ様子を伺っていると、偽勇者が現れたとの話。
 さらに城内で、勇者パーティー然としたマリッサ殿下を目撃したとの話を聞き、確実に何かが起こると予感しました。
 そこで、あの騒動が起き、実行に移したという経緯です。
 手に入れた毒は、まだ持っていますが、仮に見つかった時は、仕入れ調査用および研究用と言うつもりでした」
「どんな声をかけられたかは覚えていないんだな?」

「はい。改めて思い出そうとしても……やはり思い出せません……。こんなことは、あまりないのですが。
 特に行動が変化するキッカケになった言葉であれば尚更……」
「どうして、それがスキルを使われた影響だという考えに至らないんだ?」

「え⁉️ スキルが私に使われていた……? た、確かにそう考えると、そうかもしれません……。
 も、申し訳ありません。私の頭が不出来であるばっかりに……」
「いや、単にスキルの効果を確認しただけだ。コーディーの頭の良し悪しは関係ない。そこに考えが至らないようにするスキルでもある。サーズ王もそうだった。むしろ、頭は良い方だよ。
 スキルを受けても、一週間で我に返ることができるし、調査能力も高い。状況把握からの予測も適切。計画の証拠も自白以外ない。一つの質問で、知りたいことを全部話してもらった。
 ただ、一つ気になるのは、計画を立てた時は、我に返ってないんだよな。その前にビルの信用が戻ったからなのかどうなのか……」
「詳細な文書を頭に描いていたからとか? そういうのと結び付いちゃうと離れられない。頭の片隅に追いやれない、みたいな。
 何がどう強く結び付くのかは、その時の囁きとか運にもよるから、彼女は何度も対象に会いに来るんじゃないの? それとも、単なる時間の延長?」
「運と言われればそれまでだが、少なくとも、フォーリエが自分を含めて堕落した王族の殺害命令をする理由がない。何か別のものと結び付いた可能性の方が高いと思う」

「……。それがスキルの影響なのかは不明ですが、マリッサ殿下がおっしゃったように、私は陛下が国王に相応しいと考えていましたから、その思いと結び付くと、計画の遂行が優先されるのではないでしょうか」
「確かにそうだな。フォーリエ王女が何度も会いに来るのは、みかが最後に言ったように、時間の延長が目的と本人は考えている。
 そう考えると、コーディーに何を言ったかは、かなり絞られてくる。おそらく三回とも、『フォーリエ王女、並びに正体が第三王子であるサルディアを絶賛し、その振る舞いを参考にしなさい』だと思う。一般兵には大体こういう簡易的な命令なんじゃないかな。
 でも、言った本人は覚えていないんだよな。暇つぶしの範疇だから。
 コーディーが話したことがないのに、組織が異なるサルディアをすごいと思い、さらに第三王子だと知っていたのも、その命令が理由。
 前者を参考にすると堕落し、後者を参考にすると行動的になる。コーディーの場合は基本的に後者で、もしかすると前者の影響もあって、計画を中々実行に移せなかったのかもしれない。
 それが人によるのか運なのかは、俺もフォーリエ王女も分からないが、いずれにしても、絶賛と参考は派閥形成の足掛かりになる」
「まぁ、ロマリを昇進させて、称賛を浴びさせるには、サルディアさんの評価も上げるのが手っ取り早いからね。
 早い内に、下手にロマリを絶賛させると、ボロが出るのも早いと。
 参考はあれだよ。女子が一緒にトイレ行くみたいな感覚でしょ。バカだよねぇ、あれ。まぁ、私も渋々付き合ってたけど」

「あ、あの……つまり、どういうことでしょうか?」
「どうだ、みか?」
「とっくに、『友人』だよ。土下座した辺りで」
「ふぅ……。案外、世話が焼けるなぁ。こういうのは」

「えーと……。つまり……?」
「そもそも、シラを切り続ければ立件できなかったはずのことを、正直に話してくれたんだ。
 俺はその時に君を信用したよ。それでも厳しく言って、本当にすまなかった!
 でも、自分が死ねばそれでいいなんて、ビルみたいな行動は参考にするんじゃないぞ!」
「犯人追い詰めとか自白強要みたいな雰囲気だったけど、あくまで雰囲気だけだったからね。許してもらえるでしょ」
「コーディー・フェン、王家殺害計画立案および準備等における国家転覆罪容疑は、証拠不十分で不起訴とする!
 なお、中央政府への申し立て書提出を根拠とした辞令は取り消し。近く、改めて辞令を言い渡すので、現時点では『宰相付き』の辞令とする!
 また、先の辞令で減額した給与についても、その期間分補償する」

「……。へ、陛下……! この命、尽きるまでお使いください!」
「コーディー、もう少し聞きたいこと、と言うかそのまま聞いていてほしいことがある。
 コーディーが毒を手に入れたルートは、第一王子が兼ねてから仕入れているルートと同じで、セントラルからのルートだが、商品によって取り扱っている仲介業者が微妙に異なる。
 それ自体は不思議なことでは全くないが、あえて複数回に分けて仕入れて、その度にカタログを見せてもらっていたところ、少しずつシェアが変わってきていることにコーディーは気が付いた。
 そして、業者と仲良くなり、さりげない聞き取り調査をした結果、シェア拡大中にもかかわらず、その業者の従業員数が他の業者に比べて圧倒的に少ないことが分かった。
 どれだけ効率良く仕入れて、効率良く仕事しても、そんな数では普通回らないはず。特に仕入れが困難だ。
 ここで、一つの仮説が思い浮かぶ。もちろん、コーディーの仮説だ。
 そのセントラルの業者は、毒系モンスターから毒を大量に仕入れている。しかも、モンスターが積極的に協力している。
 その場合、モンスターとの連携について、どの国よりも先を行っていると考えられる。さらに、セントラルの性質から言って、その力を誇示しないのはおかしい。
 ということは、死を恐れるモンスターとの間で密約が結ばれているか、あるいはモンスターが主導していると考えられる。
 いずれにしても、モンスターと完全にコミュニケーションできていることになる。
 つまりコーディーは、その仮説を踏まえた上で、迅速に防衛戦略を練り直す必要があるとして、今回のことがバレなければ、それを提案しようと考えていた。自らの贖罪と懺悔として……」

「で……殿下の類稀なるスキルを目の当たりにし、正直戸惑っておりますが、まさにおっしゃる通りでございます」
「セントラルがモンスターに完全支配されていることも想定しておかないといけないよな……」
「協力関係なら、プレアの夢に近づく……とも言えないんだよね。明らかに、セントラルを中心に世界が悪い方向に進んでるから」
「例のごとく、勇者管理組合視点で私も少しよろしいでしょうか。モンスターと完全にコミュニケーションできるのは、指定重要機密スキルを超えた『指定最重要機密スキル』のはずで、この所持者は、判明した時点で世界中から真っ先に命を狙われる対象になります。なぜなら、世界を根底から即座に覆してしまう恐れがあるからです。揺るがすレベルを越えているということですね。
 もちろん、私はその所持者を知りませんし、セントラルが放置するわけもありません。
 放置するとしたら、最高評議会およびそこに準ずる王族の場合に限りますが、それも私は聞いたことがありません。
 そもそも、それらの方達が接触するのは、実験台になったモンスターぐらいです。
 つまり、現時点ではモンスターだけで隠れるように営業活動をしている可能性が高いのではないかと推察します。
 ただその場合、確実に言えることが一つあります。人間に変身できるモンスターがいる。つまり、そのような特性を持つモンスターか、超高レベルモンスターが最低一体は存在することになります。
 前者は当然未発見モンスター、後者はノウズ地方の国境半封鎖、すなわち一方通行の理由が、その存在がノウズ地方の洞窟からやって来ることを恐れたから、という経緯がありますが、ノウズ地方から送り込まれたか、勝手に来たのかは不明ですね。
 もちろん、国防の観点から、最悪の事態を想定した方が良いと考えますが、あくまで参考情報ということで」
「ありがとう、セレナ。モンスターと協力すれば、容易に採取できるであろう貴重な鉱石の数々を、セントラルが自慢しないことも考えると、かなり限定的ではあるが、それがいつ拡大するかは、我々には分からない。
 いずれにしても、考慮する必要があるな……。
 よし、コーディー。ビル宰相に今話した全てを伝えてくれ。ただし、明日までは、かなり忙しいから、明後日以降だな。私からは、会った時にサラッとだけ伝えておく」

「はっ! 承知しました!」
「じゃあ、やっと本題に入れるな」
「マジで、やっとだよ……」
「では、コーディー。明日予定の公開処刑における処刑方法の附則として、これを読んだ上で、みかの質問に答えてくれ」

 それから、コーディーさんは渡された紙を一、二分ほどかけてじっくり読んだ。
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