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一章:どうやら俺は「巻き込まれ体質」のようで…
「当たり前だッ!全力で止めたわッ!」
しおりを挟むーー…校内にあるプール。
ゲシッ。
「いって。」
ダラ~ァとプールサイドを座り込んでいた雪人を、後ろから来た刀夜が裸足で尾てい骨の上あたりを蹴った。
…といってもゴツく程度の威力なので、刀夜の足先に付着していたゲル状の吸水ポリマーが、雪人に移動したぐらいの最小被害で済んでいる。
…というかこの時点で二人とも、体中あちこちゲルだらけだ。
あの爆笑の後、みっちり岩木先生からお説教をくらった。
そして「プール内の吸水ポリマーを二人で綺麗に片付けきってから、一週間の自宅謹慎開始だッ!」とのお達しが出た。
「たくッ!誰のせいでこうなっていると思ってんだよッ。休んでないでチャッチャッと働けッ、ユキッ!」
こめかみにピシッと怒りマークを点灯させた刀夜は、そう言うと持っていた吸水ポリマーまみれになっているバケツを、雪人に向けてズイッとかざした。
雪人は「ファ~~~ァ。」と大きなアクビをかますと、「へい。へい。」とやる気の無さげな返事と共にバケツを受け取り立ち上がる。
プール清掃を始めて三日目。
吸水ポリマーは排水溝が詰まるため水で流すわけにはいかず、ある程度は人力でカキ出さなければいけない。それを二人だけでやっているのだ、かなりの時間と労力をかかる。
まあそれでも吸水ポリマーをブっこむ前のプールの水は、夏前の清掃時とあってそれほど入ってはなかった。
そしてこの二人、外見は細身に見えても体力にはそれなりに自信があるので、どうやら今日中には片がつきそうだ。
「………ユキが初めからヤル気を出してくれれば、本当はもっと早く終ったと思うんだが…。」
思わず愚痴ってしまう刀夜。
「まあまあ。そう言うなよ、刀夜クンっ。」
そう言いながら、雪人が寄りかかるように後ろから肩に腕を回してくる。
「「まあまあ」じゃねぇよッ!お前、あのとき吸水ポリマーの粉のことを「プール清掃用の洗剤だ」って言ったじゃねぇーかッ!」
「だって、本当のことを言ったら止めただろ?」
「当たり前だッ!全力で止めたわッ!!」
あっけらかんと言う雪人に、怒鳴る刀夜。
すると今度は雪人が口を尖らせスネ気味に…。
「だって不公平じゃね?!喧嘩フッかけてきた三年の野郎たちにはお咎め無しで、俺らだけ罰としてプール清掃だなんてッ。」
…と愚痴った。
「いや…。それでもかなり岩木先生には、温情をかけてもらった方だと思うぞ。」
刀夜は溜め息混じりにそう言う。
そう。このプール騒動の前には前編があるのだ…。
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