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一章:どうやら俺は「巻き込まれ体質」のようで…
「お前ら二人、仲良く一週間の自宅謹慎なっ♪」
しおりを挟むーー…月星高等学校。校長室。
「お前ら二人、仲良く一週間の自宅謹慎なっ♪」
大きなデスクの席に座る校長の横で、二人の担任である岩木先生がニコやかに告げた。
…と言っても、教師というよりヤクザに近い凶悪なその顔面が笑うと更に怖い。
それを聞いた二人のうち、くせ毛の黒髪の岡田刀夜が「えーーーッ!」と不満の声を上げた。
「「えー」じゃねぇだろッ! お前たちが『やらかしたこと』を、せっかくプール掃除程度で済ませてやろうとしたのに、それをあんな『ろくでもないこと』しやがってッ!!」
今度は、その顔に似合った鬼の形相で怒鳴り散らす岩木先生。
刀夜は思わずビクッと亀のように首をすくめた。
岩木先生が言う『ろくでもないこと』とは………プール内の水に吸水ポリマーを大量にブチこんだことを言っている。
吸水ポリマーとは、紙オムツなどに入っているモノだ。
性質はその名の通り、水分を吸収し強固する。案の定プールの水は、プルプルのスライムのようなゼリー状に固まった。
だが、どうしてそんなに吸水ポリマーがあったのか?
それは、学校が防災用の簡易トイレ(糞尿を凝固する)に使用するために備蓄していたモノだった。
まあ、どう考えても自宅謹慎になって当然の内容である。
「でも、俺は…。」
恐る恐る首を伸ばしながら刀夜は弁明をしようとするも、途中で言葉に詰まる。そして、自分の左横にいる悪友の横顔をチラリと見た。
そこには整った顔立ちに、ボブまで伸ばしたラベンダーブラウンの髪を、女子のようにまとめた男子高校生が立っている。
怒られている当事者にもかかわらず、その悪友はまったくの素知らぬ顔をしていた。
(この~~ぉ!(怒) ユキのヤツ~~~ッ★ 人を『巻き込んで』おいてッ 、その顔はなんなんだよッ!!)
「岡田ッ!聞いているのかッ!? お前、生徒会の書記だろッ!他の生徒の模範にならなくちゃいけないヤツが何をやっているんだッ。もっと責任感を持てッ!」
岩木先生の大声に、またもや首をすくめて「すみませんッ!」と頭を下げる刀夜。下げながらも涙目でユキこと…山田 雪人を睨むが、やっぱりまったく気づく様子がない。
…いや、よく見れば、雪人は『何か』に気を取られているようだ。
(…?)
訝しげな顔をする刀夜。すると…。
「…プッ!」
いきなり雪人が吹き出した。そして…。
「ギャハハハハハハハハハハハッッ!!」
…と、大声で笑い出す。
一瞬、雪人以外の三人は目が点になった。
「も…っ、もうっ、ダメ…wwwッ! 校長のハゲ頭…wwっっ、光ってwwwwwwッ!!」
雪人は肩を震わせ、腹を抱えながら右手で座っている校長を指差した。
刀夜は顔を上げながら、雪人の指の先を点線で繋がっているように追う。
そこで雪人が笑っている意味が解った。
校長が座っている席の真後ろには窓があり、薄いカーテンが引いてあるのだが、その力ーテンと力ーテンの隙間から日差しが入り、それがちょうど校長のツルとした登頂部に当たって、まるで仏像の後光のようになっているのだ。
刀夜は怒られて気づかなかったが、気づいたが最後…。
「ブッ!…フッwwwww!!」
思いっきり吹いてしまった。
元々穏和な校長は訳がわからずに、しきりに首を傾げているが…………その隣に立っていた岩木先生は…。
「お前らッッ、いい加減にしろッッ!!」
雷鳴のような怒鳴り声をあげた。
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