ソウルウォーク ★魔都

神嘗 歪

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一章:どうやら俺は「巻き込まれ体質」のようで…

「ここは穏便に話し合いで…。」

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雪人も、なんとなくこうなった原因の察しがついたようで、目の前の三年生に向かってニタァと歪ませ…。

「はっ!…そんな付き合っているヤツがいるのに軽々目移りする女とか、言い寄られてもマジ願い下げだし。つーぅか、アンタたちの仲もその程度ってことだろ?」

…と鼻で笑う。

(おいぃぃぃッ!馬鹿ユキッ!!これ以上、火にガソリンをブチ込むようなこと言うなッ!!そんなことしたら…ッッ。)

刀夜が嫌な予感に三年生のほうに、ゆっくりと顔を向けた。こういうときの嫌な予感はよく当たる。

そこには怒りに燃え、不動明王のような恐ろしい顔の三年生がいた。

「ツッ…………ぶッ……コ…ロすッ!」

感情が高ぶり過ぎているのか三年生の唇はワナワナ震えている。そこから発する言葉も片言になってしまっていた。

だが大きなガタイから発する敵意は、はっきりと雪人を狙っている。

(…ヤバイッ!)

刀夜がそう思った瞬間ッ 、三年生の右拳が雪人の整った顔目掛けて飛んできたッ。


           …ガスッ!


重く鈍い音が体育館裏に響く。

けれど雪人は、微動だにすることなく立っていた。

代わりに…。

「……せ、先輩。暴力はイケませんよ、暴力は。」

刀夜が頭の位置まで持ち上げたマイ鞄の横から、顔をヒョコと覗かせて愛想笑いをしてみせた。

どうやら刀夜は二人の間に割って入って、三年生の強力な拳を鞄で受け止めたようだ。

「ど、けッ!」

止められたことに驚く三年生だったが、今度は左拳がカーブを描きながら刀夜の下顎あたりを狙ってくる。

が…。

「うわぁっ!?」

びっくりした刀夜はヨロけるように体勢が崩し、その手前を紙一重で拳が空を切る。

「チッ!」

苛立ちを孕んだ舌打ち。次は右拳で脇腹に一発入れようとするも……やはり刀夜が、後ろに倒れそうになったことで空砲に終わった。

「だから、暴力はダメですって。ここは穏便に話し合いで…。」

「ウルセェッ!黙れッ!」

いつの間にか三年生のターゲットは雪人から刀夜に代わっている。拳は胸に腹にまた顔面にと振るうが、風に揺れる紐のように避けられてしまう。

「…~~~~~~ッ!」

苛立ちが募った拳は、振るう回数が増えれば増えるほど大振りとなり、精度が落ちていく。それが更に三年生を苛立たせた。

そしてその膨張した苛立ちは、他の周りにいた三年生たちにも感染していく。

「コイツッ、ちょこまかと逃げやがってッ!クソがッ!」

「捕まえろッ!」

囲うように、一斉に他の四人も刀夜に襲いかかってきたッ。

「…ッッ!」

あまりの多勢に逃げられなくなった刀夜は、覚悟を決めて身構えるッ。
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