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一章:どうやら俺は「巻き込まれ体質」のようで…
「刀夜先輩だーぁ。」
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「刀夜先輩だーぁ。」
声をあげた生徒が、続けて刀夜の名をあげる。
「先輩」と付けたということは、その子は一年生。そして、甲高い声からして女子。
次の瞬間。練習中によそ見をしたその子の頭に、相手の面打ちがスパンッ!と入った。
「あいた~ぁ。」
「ゥフ…ッ!」
不意を打たれたそれを目の当たりにした刀夜は、笑ってはいけないと思いながらも苦笑する。
すると、その面打ちを受けた子の声を聞き付けた生徒たちが一斉に刀夜の方を向いた。
「えっ?刀夜が来てんのっ?」
「本当だっ!岡田先輩だぁっ!」
半数以上の生徒が、練習そっちのけで刀夜に向かって駆け寄って来る。
「岡田先輩っ!お久しぶりですっ!」
「……うん…久しぶり。」
「刀夜。もしかして、戻ってきたのかっ?」
「……あっ…いや。岩木先生に用があって…。」
次々と話しかけてくる生徒たちに、刀夜は答えに戸惑っていた。
この雰囲気からして刀夜は、部活内では後輩先輩関係無く好かれていたのが解る。
その中から一人、面の防具を外した女子が刀夜の前に歩み寄ってきた。
「……刀夜副部長。部活に戻ってこないんですか?」
懇願を秘めた問い。この声は、さっき刀夜を見つけて第一声をあげた子と同じだ。
刀夜はゆっくりと視線をやや下に傾ける。そこには小柄だが、大きく勝ち気な目。青みかかった黒の肩上ボブの髪型をした女子が、ジッと見上げていた。
「………もう俺は副部長じゃないよ。真竹。」
刀夜は困った顔で微笑する。
周りの部員たちも、刀夜の言葉に落胆の表情を浮かべた。
だが真竹と呼ばれた女の子…真竹 緑香は、「でも…ッ!」と食い下がろうとする。
が…。
「お前たちッ、何やっているッ!練習に戻れッ!」
道場の奥から鋭い声が飛んできたッ。
見れば刀夜のところに来なかった数人が、こちらに向かって睨んでいる。
その中の一人。一番長身で防具を付けたままの男子が、さっきの声の主のようだ。
強制的な声に、刀夜の周りにいた部員たちが慌てて元の位置に駆け足で戻る。
「……佐々木主将。」
その声の主である人物の名を呟いた緑香だけは、佐々木主将…三年生の佐々木 智哉と刀夜を交互に見返すだけで戻ろうとしなかった。
刀夜は優しく微笑みながら「戻った方がいいよ。」と緑香を諭した。言われた緑香は、しょうがなくトボトボと戻っていく。
刀夜は緑香から視線を佐々木主将に向き直すと、深々と頭を下げた。
「佐々木主将、お騒がせしてすみませんでした。」
すると面を被った佐々木主将は、刀夜からフイッと顔を背ける。
「『部外者』が、許可無く道場に入ってきては困るッ。」
強めの口調。表情は面に覆われて見えないが、険しい顔つきをしているのだと想像できる。
刀夜は頭を掻きながら苦笑いで、もう一度「すみません。」と謝った。けれどその後は、佐々木主将から何の返事も返ってはこない。
「………。」
佐々木主将とは、初めからこんな険悪な仲というわけではない。反対に凄く良くしてもらっていた。
今度の全国大会には佐々木主将と刀夜が副将で、優勝を狙おうと誓いあった。
でもそれを、退部という形で一方的に破棄したのは………刀夜のほうだ。
佐々木主将にとって、刀夜のことを副部長として…副将として…信頼していたぶん、裏切られたという思いがあるのだろ…。佐々木主将の周りにいた部員たちも、たぶん主将と同じ気持ちなのだと思う。
(…………やっぱり俺は、ここに来るべきではなかったかな。)
うつむく刀夜。
そんな刀夜の背後に、大きな人影が現れて…。
声をあげた生徒が、続けて刀夜の名をあげる。
「先輩」と付けたということは、その子は一年生。そして、甲高い声からして女子。
次の瞬間。練習中によそ見をしたその子の頭に、相手の面打ちがスパンッ!と入った。
「あいた~ぁ。」
「ゥフ…ッ!」
不意を打たれたそれを目の当たりにした刀夜は、笑ってはいけないと思いながらも苦笑する。
すると、その面打ちを受けた子の声を聞き付けた生徒たちが一斉に刀夜の方を向いた。
「えっ?刀夜が来てんのっ?」
「本当だっ!岡田先輩だぁっ!」
半数以上の生徒が、練習そっちのけで刀夜に向かって駆け寄って来る。
「岡田先輩っ!お久しぶりですっ!」
「……うん…久しぶり。」
「刀夜。もしかして、戻ってきたのかっ?」
「……あっ…いや。岩木先生に用があって…。」
次々と話しかけてくる生徒たちに、刀夜は答えに戸惑っていた。
この雰囲気からして刀夜は、部活内では後輩先輩関係無く好かれていたのが解る。
その中から一人、面の防具を外した女子が刀夜の前に歩み寄ってきた。
「……刀夜副部長。部活に戻ってこないんですか?」
懇願を秘めた問い。この声は、さっき刀夜を見つけて第一声をあげた子と同じだ。
刀夜はゆっくりと視線をやや下に傾ける。そこには小柄だが、大きく勝ち気な目。青みかかった黒の肩上ボブの髪型をした女子が、ジッと見上げていた。
「………もう俺は副部長じゃないよ。真竹。」
刀夜は困った顔で微笑する。
周りの部員たちも、刀夜の言葉に落胆の表情を浮かべた。
だが真竹と呼ばれた女の子…真竹 緑香は、「でも…ッ!」と食い下がろうとする。
が…。
「お前たちッ、何やっているッ!練習に戻れッ!」
道場の奥から鋭い声が飛んできたッ。
見れば刀夜のところに来なかった数人が、こちらに向かって睨んでいる。
その中の一人。一番長身で防具を付けたままの男子が、さっきの声の主のようだ。
強制的な声に、刀夜の周りにいた部員たちが慌てて元の位置に駆け足で戻る。
「……佐々木主将。」
その声の主である人物の名を呟いた緑香だけは、佐々木主将…三年生の佐々木 智哉と刀夜を交互に見返すだけで戻ろうとしなかった。
刀夜は優しく微笑みながら「戻った方がいいよ。」と緑香を諭した。言われた緑香は、しょうがなくトボトボと戻っていく。
刀夜は緑香から視線を佐々木主将に向き直すと、深々と頭を下げた。
「佐々木主将、お騒がせしてすみませんでした。」
すると面を被った佐々木主将は、刀夜からフイッと顔を背ける。
「『部外者』が、許可無く道場に入ってきては困るッ。」
強めの口調。表情は面に覆われて見えないが、険しい顔つきをしているのだと想像できる。
刀夜は頭を掻きながら苦笑いで、もう一度「すみません。」と謝った。けれどその後は、佐々木主将から何の返事も返ってはこない。
「………。」
佐々木主将とは、初めからこんな険悪な仲というわけではない。反対に凄く良くしてもらっていた。
今度の全国大会には佐々木主将と刀夜が副将で、優勝を狙おうと誓いあった。
でもそれを、退部という形で一方的に破棄したのは………刀夜のほうだ。
佐々木主将にとって、刀夜のことを副部長として…副将として…信頼していたぶん、裏切られたという思いがあるのだろ…。佐々木主将の周りにいた部員たちも、たぶん主将と同じ気持ちなのだと思う。
(…………やっぱり俺は、ここに来るべきではなかったかな。)
うつむく刀夜。
そんな刀夜の背後に、大きな人影が現れて…。
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