ソウルウォーク ★魔都

神嘗 歪

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二章:チートな 創造主 と 雪人たちのゲーム前の予習

「コンニチワ。刀夜サマ。」

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二人は、緑化のために作られた煉瓦調の花壇の縁に腰を下ろす。すると雪人が刀夜の頭の先から足の先までシゲシゲと見た。

「なっ、なんだよ?」

意味が分からず、疑問符を浮かばす刀夜。

「いや、なんか今日の刀夜の服装。ショボイ殺し屋みたいに黒ずくめだなーぁ…と思ってさぁ。」

「誰のせいで、こんな格好をしたと思ってんだ!」と心の中で拳を震わすも、刀夜はフランクフルトを持っていない手で自分のスマホの画面を雪人にかざしながら口を尖らす。

「それよりッ、ユキッ!お前、ゲーム内での俺のアバター名、勝手に本名の「刀夜」でセッティングしただろッ。」

「ああ。俺も雪人って入力した。」

「…じゃないッ!なにッ、女子の「お揃いだねーぇ」みたしなノリで言ってんのッ! ゲームなんだからさ、自分のアバター名の命名で悩むのも、楽しみの一つでしょうがッ!」

「何で? 「刀夜」、カッコイイからいいだろ?そのままで。」

焼き鳥を食べ終えた雪人は、次に肉まんを頬張りながらキョトンと答える。

かざしたスマホのその画面には、ゲーム進行やチュートリアルをしてくれるNPC、可愛らしい狛犬の二匹が、画面外側にいるであろうプレイヤーに向かって「コンニチワ。刀夜サマ。」と挨拶してくれている。

向かって右側の、首に朱いしめ縄を付けて、天真爛漫に大きく口を開いて笑っているのが阿ーちゃん。向かって左側の、首に蒼いしめ縄を付けて、口を結んだ状態で静かに微笑んでいるのが吽ーちゃんだ。

昨日の夜。家に帰宅した刀夜は、雪人に無理矢理始めさせられたゲームアプリなれど「明日、ユキに会う前に少しはやってみるか」と、ワクワクしながらアプリを開いてみたら………こうなっていた。

御丁寧に雪人はあの短時間で、アバターの力スタマイズまで刀夜本人そっくりに作ってくれやがっている。

こういうのは自分がやってこそ、そのゲームのアバターに感情移入するというのもだ。それを横取りされてしまったようで、知った刀夜は自分の部屋で悔しさに悶絶した。

プラス、これは位置ゲーなので、初回では部屋にいては何もできないことに気づき、更に地団駄を踏んだ。



そんな件があって、噛みつきそうな顔で雪人を睨む刀夜。だが反対に雪人は、ニヤ~ァと笑い返した。

「なんだかんだ言って、ノリノリじゃないですか~ぁっ。」

図星をつかれ、ウッと身を引く刀夜。

「まあ、やると決めたからにはなっ。それに……。」

一旦雪人から視線を外して伏せ目がちになった刀夜の脳内に、昨日の部屋での出来事の続きが回想される…。
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