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二章:チートな 創造主 と 雪人たちのゲーム前の予習
「俺は大学生っ。俺は大学生ッ。俺は大学生ッ!俺は大学生ッッ!」
しおりを挟む――…昨日と同じ駅前。
(俺は大学生っ。俺は大学生ッ。俺は大学生ッ!俺は大学生ッッ!)
スマホを握りしめながら、心の中で早口で呪文のように唱える刀夜。
待ち合わせだというのに刀夜のいる場所は、駅前でも死角になりそうな端のほう。なるべく人目を避けるように、駅の建物壁に正面を向け、額を擦り付けるように寄りかかっていた。
今は平日の十時半。高校生の刀夜が、こんなところにいるのは可笑しな時間だ。だから今日の服装も、持っている私服のなかで一番大人に見えそうな全身黒を基調としたコーデにし、「この時間にココにいても可笑しくない大学生だ」と、自分にいい聞かせている。
だがそのソワソワした挙動不審な態度が、余計周囲から変な目で見られていることを刀夜は気づいていない。
昨日ココで雪人と別れた後、自分たちが『自宅』謹慎になっていることを思い出した刀夜は、予定変更するように雪人にメールした。
…が、無視された。
なら待ち合わせ場所に来なければいいのに、刀夜の性格上それもできない。
(メールガン無視のうえ遅刻とか、ありえないだろっ!ユキのヤツめっ!)
そう思いながらチラリと駅の出入口あたりを見た。
「ッ?!」
……お巡りさんがいる。訝しげに刀夜のほうを見ている。
完全に職質秒読み段階だ。
すると…。
「あっ、いたいた。おーい!刀夜!」
昨日、雪人が乗り込んだバス停……からではなく、まったく反対方向の駅出入口横の隣接するコンビニから、買ったばかりであろうアメリカンドックをかじりながら雪人が手を振る。
服装はカーキ色のオーバーサイズのパーカーに、濃紺のジーンズ。右肩には黒いリュックを引っ掛けている。なにも考えていない、いつも通りの格好だ。
そして雪人は、平然とお巡りさんの横を通りすぎながら。
「…~~~~~ッ!!」
(やめろ~ッ!目立つな~~ッ!)
お巡りさんは、呼ぶ雪人と呼ばれている刀夜を交互に見る。刀夜は出来る限りの作り笑いをするも、内心は冷や汗ドバドバだ。
もしここで自分たちが高校生だとバレたら、自宅謹慎どころではないだろう。
でも……不意にお巡りさんの視線が、二人から外れた。
「…?」
どうやら身につけていた無線から連絡が入ったようで、肩につけたマイクに向かって何か喋っている。
少しするとそのお巡りさんは、駅の中に早足で消えていった。
「…はっ、は~~~ぁっっっ。」
脱力とともに、安堵の息を吐き散らす刀夜。そこへ、不思議そうな顔の雪人が歩み寄ってくる。
見ればアメリカンドックを食べ終え、次に焼き鳥をパクついていた。
「…~~~~~~ッッ! 遅刻しているヤツが、何でコンビニから出てくるんだよッ!!」
怒髪する刀夜。
「なに怒ってんだ? ちゃんと、お前の分も買ってきてあるぞ。」
そう言うと雪人はコンビニ袋からフランクフルトを取り出し、刀夜に向かって差し出す。その袋の中には、まだまだ色々入っているようだ。
(………もしかしてコレって、遅刻の『詫び』のつもりか?)
複雑に顔を歪ませる刀夜。
コンビニのホットスナックのなかで、フランクフルトが大好きだと知ってのうえのこのチョイス。怒るのを諦めた刀夜は、とりあえずそのフランクフルトを受け取った。
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